「破壊者」を無視する余裕など日本にはない―フィナンシャル・タイムズ (1)
(フィナンシャル・タイムズ 2006年12月20日初出 翻訳gooニュース) アジア担当コラムニスト、ガイ・ド・ジョンキエール
ライブドアの堀江貴文前社長が派手で華やかなネット起業家として栄華を極めていた当時、堀江流の大胆不敵な企業買収劇や株の仕手戦は、国民からやんやの喝采を浴びると同時に、日本経済界のエスタブリッシュメントに恐怖と嫌悪感を巻き起こしていた。そして今、堀江前社長は懲役刑を逃れるために戦っている。自分がこれほど転落したのは、エスタブリッシュメントが自分に復讐(ふくしゅう)しようとしているから——。堀江前社長は、フィナンシャル・タイムズのインタビューにそう話した。
まあ、本人はそう言うだろう。そう言うしかないだろう。ライブドアはボロボロになり、新しい日本の資本主義の旗手を(勝手に)買って出ていた堀江前社長の評判も地に落ちた。証券取引法違反の偽計取引と風説の流布の疑いで起訴されている堀江被告の裁判は、間もなく判決が言い渡される。もし有罪となれば、最長5年の懲役刑もあり得る(訳注・東京地検は12月22日、懲役4年を求刑)。
堀江被告は完全に評判を落としているし、自分が転落した原因をなんでもかんでも社会の仕組みのせいにしようとする言動は、明らかに身勝手だ。しかし、彼の言うことにも、一理はある。堀江被告が法に違反したと糾弾されるずっと前から、日本経済界のエリートたちは彼を鼻つまみ者扱いした。財界エリートたちにしてみれば、日本社会における既得権益と権力の構図に挑戦してきた堀江被告のその不遜な図々しさこそが、彼の最大の罪だったのだ。堀江被告の挑戦は、生意気というだけでは済まされなかった。社会の仕組みや体制そのものを変えようとしていたからだ。
しかし既存の権力構造の大掃除こそ、まさに今の日本が必要としているものだ。10年も続いた不景気のせいで、情け容赦ない経済改革を無理矢理やらされた日本だが、古い因習に未だにしがみつこうとする過去へのこだわりが根強く残っている。系列企業同士による株式持ち合いは減ったかもしれない。東京証券取引所では、外国人投資家の株売買が全体の1/4を占めるようになったかもしれない。ルール重視の証券市場管理が徹底されることによって、コネや縁故重視の部族的なつながりは力を失いつつあるかもしれない。しかし日本の守旧勢力はそういうコネや縁故を重視する隠然たる仲間意識・身内意識が大好きで、自分たちのやり方をめったなことでは変えようとしない。
たとえば経団連。強力な影響力を持つ日本経済団体連合会のトップは御手洗冨士夫会長だが、御手洗氏はかねてから、日本子会社をもつ外国企業が、自社株を使って日本企業を買収する三角合併の解禁には、ひたすら反対し続けている。外国企業による三角合併で、逆に救済される日本企業もたくさんあるにもかかわらずだ。とはいえ御手洗氏は、生き残りに必死な斜陽産業の時代遅れな代弁者などではない。御手洗氏は日本有数の成功企業、キヤノンの会長であって、経済財政諮問会議の議員。「進歩的」で「リベラル」な経済人として、安倍晋三首相に様々な助言をする立場にあるのだ。
同じようなたぐいの保守性は、政府内部にも見てとれる。尾身幸次財務相は、紙の上の経済取り引きは日本社会のためにならないとして嫌っている。日本の競争力の中核を長く担ってきた製造業にこそ、今後も力を入れ続けるべきだというのだ。ほう、そうですかね。 (2へ続く)
ライブドアの堀江貴文前社長が派手で華やかなネット起業家として栄華を極めていた当時、堀江流の大胆不敵な企業買収劇や株の仕手戦は、国民からやんやの喝采を浴びると同時に、日本経済界のエスタブリッシュメントに恐怖と嫌悪感を巻き起こしていた。そして今、堀江前社長は懲役刑を逃れるために戦っている。自分がこれほど転落したのは、エスタブリッシュメントが自分に復讐(ふくしゅう)しようとしているから——。堀江前社長は、フィナンシャル・タイムズのインタビューにそう話した。
まあ、本人はそう言うだろう。そう言うしかないだろう。ライブドアはボロボロになり、新しい日本の資本主義の旗手を(勝手に)買って出ていた堀江前社長の評判も地に落ちた。証券取引法違反の偽計取引と風説の流布の疑いで起訴されている堀江被告の裁判は、間もなく判決が言い渡される。もし有罪となれば、最長5年の懲役刑もあり得る(訳注・東京地検は12月22日、懲役4年を求刑)。
堀江被告は完全に評判を落としているし、自分が転落した原因をなんでもかんでも社会の仕組みのせいにしようとする言動は、明らかに身勝手だ。しかし、彼の言うことにも、一理はある。堀江被告が法に違反したと糾弾されるずっと前から、日本経済界のエリートたちは彼を鼻つまみ者扱いした。財界エリートたちにしてみれば、日本社会における既得権益と権力の構図に挑戦してきた堀江被告のその不遜な図々しさこそが、彼の最大の罪だったのだ。堀江被告の挑戦は、生意気というだけでは済まされなかった。社会の仕組みや体制そのものを変えようとしていたからだ。
しかし既存の権力構造の大掃除こそ、まさに今の日本が必要としているものだ。10年も続いた不景気のせいで、情け容赦ない経済改革を無理矢理やらされた日本だが、古い因習に未だにしがみつこうとする過去へのこだわりが根強く残っている。系列企業同士による株式持ち合いは減ったかもしれない。東京証券取引所では、外国人投資家の株売買が全体の1/4を占めるようになったかもしれない。ルール重視の証券市場管理が徹底されることによって、コネや縁故重視の部族的なつながりは力を失いつつあるかもしれない。しかし日本の守旧勢力はそういうコネや縁故を重視する隠然たる仲間意識・身内意識が大好きで、自分たちのやり方をめったなことでは変えようとしない。
たとえば経団連。強力な影響力を持つ日本経済団体連合会のトップは御手洗冨士夫会長だが、御手洗氏はかねてから、日本子会社をもつ外国企業が、自社株を使って日本企業を買収する三角合併の解禁には、ひたすら反対し続けている。外国企業による三角合併で、逆に救済される日本企業もたくさんあるにもかかわらずだ。とはいえ御手洗氏は、生き残りに必死な斜陽産業の時代遅れな代弁者などではない。御手洗氏は日本有数の成功企業、キヤノンの会長であって、経済財政諮問会議の議員。「進歩的」で「リベラル」な経済人として、安倍晋三首相に様々な助言をする立場にあるのだ。
同じようなたぐいの保守性は、政府内部にも見てとれる。尾身幸次財務相は、紙の上の経済取り引きは日本社会のためにならないとして嫌っている。日本の競争力の中核を長く担ってきた製造業にこそ、今後も力を入れ続けるべきだというのだ。ほう、そうですかね。 (2へ続く)
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