肝心なのは経済なんだよ、安倍さん──フィナンシャル・タイムズ社説
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(フィナンシャル・タイムズ 2007年2月2日初出 翻訳gooニュース)
あれこれ議論沸騰中だが、外国企業が自社株式を使って日本国内の会社を買収できるようになったとしても、敵対的買収の大波が次から次へと外国から日本に押し寄せるとは思えない。にもかかわらず、外国企業による「三角合併」解禁(訳注・今年5月予定)をめぐる戦いは、安倍晋三政権の試金石となりつつある。これをどうするかで、安倍政権が経済改革に本気で取り組む意志があるのか、そして日本という国がグローバル化を本当に受け入れるつもりがあるのかが、試されているのだ。
企業経営者の集まりである日本経団連は、外資による三角合併は日本産業界の活力を失わせると激しく反対している。経団連の反対運動を特に強く後押ししているのは、世界的な鉄鋼業界再編の流れの中にのみこまれそうな日本の鉄鋼業界の要請と、日本の優れた技術力が外国企業の手に渡ってしまうのではないかという懸念だ。
経団連の苦情はばかげている。たとえ三角合併が解禁されても、外国から敵対的買収を成功させるのはほとんど不可能なままだ。きっちり固められた企業系列のつながりが緩んでいくに伴い、日本企業は次々とポイズンピルをはじめとする様々な買収防衛策を導入している。そのおかげで、日本国内から仕掛けられる数少ない敵対的買収も失敗に終わってきた。しかも新法が施行されたとしても、株式譲渡益の課税などは外国企業にとって不利なままだと、外国企業は不満を口にする。
この戦いは、日本の経済界に根強く脈々と流れる保護主義体質をあからさまにさらけだしている。日本の経済界はいまだに、グローバリゼーションは一方通行のものだと考えているらしいのだ。外部の者には門戸を閉ざし、その傍らで自分たちの国内市場支配をさらに強化するため、国内の既存業者同士のぬくぬくとした連携関係をさらに突き進めていこうという考えだ。最近では企業合併の審査基準が緩和されることになっただけに、日本国内の不健全な市場集中がさらに助長されるのは必至だ。
この動きがこのまま続けば、被害を受けるのは日本の消費者だし、競争から庇護されることで企業の力は強まるよりもむしろ弱体化するだろう。そして結局のところ、すでに心もとない日本の生産性はさらに悪化し、国民所得は失われる。急速な高齢化による様々な問題に日本社会が四苦八苦している、まさにその時にだ。こうしたリスクを回避するには安倍首相が、保護主義の圧力団体に真っ向から立ち向かい、必要不可欠な構造改革を貫徹しなくてはならない。
しかし残念なことに、首相のこれまでの実績を見ると、望み薄のようだ。三角合併解禁を後押ししようという姿勢はあくまで形式的なものに過ぎず、そればかりか、経済に対してなんら戦略的なビジョンをもたず、あまつさえは経済そのものにたいして関心がなさそうなのだ。日本の景気回復がまだ実質賃金の上昇につながっていない、まさにその点が、首相の支持率激減の最大原因だということを思えば尚のこと、経済に対する首相の無関心は驚くべきものだ。
自分の政治家としての命運をよみがえらせ、日本の繁栄を磐石なものにするためには、安倍首相はものごとの優先順位をきちんと把握しなくてはならない。まずお勧めしたい第一歩は、1992年の米大統領選を制したビル・クリントン陣営の選挙スローガンを拝借することだ。あのときクリントン氏はこう掲げて勝利した。「肝心なのは経済なんだよ、バカモノ (It’s the economy, stupid)」と。
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