小沢一郎氏に聞く 総選挙と日本の変化 ――フィナンシャル・タイムズ
(フィナンシャル・タイムズ 2008年6月1日初出 翻訳gooニュース) ライオネル・バーバーFT編集長、デビッド・ピリングFT東京支局長
民主党の小沢一郎代表は5月30日、都内でフィナンシャル・タイムズの単独取材に応じた。以下はインタビュー内容の概要(訳注・小沢氏の日本語は、FT英語記事からgooニュースが日本語に翻訳し直したものです。小沢氏本人の使った日本語表現ではありません)。
フィナンシャル・タイムズ(以下、FT):9月にまた党代表に出馬するつもりですか?
小沢一郎(以下、小沢):まだ分からない。(党内の)みなさんの考えに従います。代表選の日程さえまだ決めていない。
ほかの人たちがどう考えるかによります。私自身は必ずしも、党首になろうとか、自分が総理大臣になろうとか考えていない。ほかに誰か党のリーダーとなって選挙に勝てる人がいるなら、それは私でなくても構わない。
私の唯一の目標は、今の野党が与党になり、真の議会制民主主義が日本に根付くこと。それが私の唯一で究極の目的です。
もしも私が党首の状態で選挙になり、われわれが選挙に勝てば、私は総理大臣にならなくてはならない。しかしお話したように、実際に首相になるというそのこと自体に私はあまり心ひかれない。
FT:総選挙はいつになると思いますか?
小沢:年内でしょう、おそらく。
FT:延期される可能性は?
小沢:たとえ自民党が延期したとしても、得るものは何もない。自民党にとって事態は悪くなるばかりだ。
自民党はこれまで、総裁を次々と入れ替えることでなんとか権力を維持しようとしてきた。この人なら国民の人気が得られるだろうと思う人を次々とトップにして、まるで振り子のように右から左へと揺れている。
しかし今の政府はもう生命力を失っている。なので次の自民党総裁が誰になっても、現状を変えることができない。自民党を変えることもできないだろう。
FT:政界再編成ということがよく言われます。実際に起きると思いますか?
小沢:マスコミは今、そういう政界再編成のことをよく話しています。しかし私はそんな再編成はおきないと思う。もし仮にあったとしても、状況を大きく変化させるほどの影響力はもたないだろう。
野党が政権を握る。とするとつまり自民党は崩壊し、消滅する。そうなって初めて、再編が起きる。
自民党はとても日本的な特徴をもつ党です。自民党のような保守的な政党が全く不要だと言っているのではない。私が言っているのは、自民党はあまりに腐敗していて長年我が物にしてきた権力で汚れきっているので、解散させる必要があるということ。自民党をなくしてしまえば、新しい自民党を作れる新世代が見つかるだろう。
たとえ民主党が与党になったとしても、私たちは自己改革をしなくてはならない。私たちには変化が求められている。不要なものを変えて、強化すべきを強化しなくてはならない。私が考えている再編成とは、そういうものだ。そうなれば、真の議会制民主主義が出現するだろう。
FT:日本の政治は時代遅れなのでしょうか?
小沢:はい、遅れています。
この国の民主主義と言った場合、それはなにも欧米の民主主義と全く同じである必要はない。
しかし議会制民主主義においては、色々な政党が政権を担う余地があるべきだ。それによって健全な政策論議が交わされるべきだ。
日本がそこにたどり着くにはまだまだ遠い。
FT:自民党と同じように民主党も分裂していませんか?
小沢:そういう批判は聞いたことがある。けれどもある意味で当然のことです。10人集れば10人がそれぞれ違う考え方をしている。けれども民主党と自民党の間には、根本的な考え方の違いがある。つまるところ民主党の方が自分たちの立ち居地について首尾一貫している。
私はこのことを繰り返し繰り返し繰り返し説明してきたが、日本の記者たちには分からないようだ。理解力不足なのか、勉強不足なのか。根本的な違いがあるのだが、記者たちには分からないのだ。
自民党は、日本の伝統的な合意作りのやり方をもとになりたっていて、強力な官僚機構が後ろから支えている。それは間違っている。私が言っているのはそのことだ。それではやっていけない。だから色々な問題がこうやって噴出するのだ。必要なのは、市民による真の政治参加。そして政治家は日本国民をできるだけ忠実に代表しなくてはならない。日本の政治システムはそのために変わらなくてはならない。
FT:航空自衛隊機を中国に派遣するという提案について(実現しなかったものの)どう思いますか? 日中関係の状態をどう思いますか?
小沢:自然災害なので、(要請された上で)何をしてもかまわないと思う。しかしアフガニスタンやイラクで戦闘行為に関わるとなると、問題だ。
日中関係はきわめて重要だ。機会があるごとに私はこのことを繰り返している。中国の現状の背景にあるものが、地震という自然災害の形で噴出した。マグマは地面の中だけでなく,中国の政治の中にも埋まっている。
中国では、社会主義市場経済と呼ぶ。もちろん毛沢東時代の大躍進があり、文化大革命が続いて、そして改革開放政策が導入された。これは正しかった。中国共産党の独裁は諸刃の刃だった。
マグマは地面だけでなく、中国の社会全体をも揺らしていた。奇妙な偶然のように聞こえるかもしれないが、政治や社会の分野で噴き出したかもしれないものが、自然災害の形で表れたのだ。私にはそう思えてならない。
中国の共産党独裁は資本主義の市場経済と整合性がとれなくなってくる。党が変化しなければ、統治が続けられなくなる。私はいつもそのことを中国の指導層に言っている。しかしそれがどれだけ大変なことか、理解している。いったん権力を握ってしまうと、手放すのは実に難しい。日本でも同じことだ。
私たちは変わらずにいるためには、変わらなくてはならない。これが私のモットーです。
日中関係が大事だと、私は繰り返し強調してきた。政治家として、そして一個人として、両国関係のために努力してきた。(中国側も)それを理解しているので、私が言うことは温かく受けとめてもらえる。
FT:小沢総理大臣の下、日本は国際舞台でどう行動しますか?
小沢:まず経済と政治と社会の分野では、日本のあらゆることが根本的に変化しなくてはならない。そうでなくては、国際社会で日本が期待されている役割を果たすことができない。
国際社会で役割を担えるだけ日本が成熟するという前提で、私は常に「 共生」 あるいは 「共存共栄」 が大事だと繰り返してきた。
この共生の思想を世界に広めることが、日本人にはできると思っている。仏教の教えにもとづいた、自然との共生、ほかの国々や人々との共生だ。
私はそういったテーマを追及していきたい。しかし私は年を取りすぎたので、これは夢で終わるのかもしれない。
FT:小泉元首相は最近なにをしているのでしょう? 小沢さんの前にたちはだかるのでしょうか?
小沢:小泉さんが何を考えているかは知らない。しかし彼は馬鹿ではないので。マスコミは小泉さんが首相返り咲きをねらっているなどと言うが、そういうことではないと思う。
フィナンシャル・タイムズの本サイトFT.comの英文記事はこちら(登録が必要な場合もあります)。
(翻訳 加藤祐子)
民主党の小沢一郎代表は5月30日、都内でフィナンシャル・タイムズの単独取材に応じた。以下はインタビュー内容の概要(訳注・小沢氏の日本語は、FT英語記事からgooニュースが日本語に翻訳し直したものです。小沢氏本人の使った日本語表現ではありません)。
フィナンシャル・タイムズ(以下、FT):9月にまた党代表に出馬するつもりですか?
小沢一郎(以下、小沢):まだ分からない。(党内の)みなさんの考えに従います。代表選の日程さえまだ決めていない。
ほかの人たちがどう考えるかによります。私自身は必ずしも、党首になろうとか、自分が総理大臣になろうとか考えていない。ほかに誰か党のリーダーとなって選挙に勝てる人がいるなら、それは私でなくても構わない。
私の唯一の目標は、今の野党が与党になり、真の議会制民主主義が日本に根付くこと。それが私の唯一で究極の目的です。
もしも私が党首の状態で選挙になり、われわれが選挙に勝てば、私は総理大臣にならなくてはならない。しかしお話したように、実際に首相になるというそのこと自体に私はあまり心ひかれない。
FT:総選挙はいつになると思いますか?
小沢:年内でしょう、おそらく。
FT:延期される可能性は?
小沢:たとえ自民党が延期したとしても、得るものは何もない。自民党にとって事態は悪くなるばかりだ。
自民党はこれまで、総裁を次々と入れ替えることでなんとか権力を維持しようとしてきた。この人なら国民の人気が得られるだろうと思う人を次々とトップにして、まるで振り子のように右から左へと揺れている。
しかし今の政府はもう生命力を失っている。なので次の自民党総裁が誰になっても、現状を変えることができない。自民党を変えることもできないだろう。
FT:政界再編成ということがよく言われます。実際に起きると思いますか?
小沢:マスコミは今、そういう政界再編成のことをよく話しています。しかし私はそんな再編成はおきないと思う。もし仮にあったとしても、状況を大きく変化させるほどの影響力はもたないだろう。
野党が政権を握る。とするとつまり自民党は崩壊し、消滅する。そうなって初めて、再編が起きる。
自民党はとても日本的な特徴をもつ党です。自民党のような保守的な政党が全く不要だと言っているのではない。私が言っているのは、自民党はあまりに腐敗していて長年我が物にしてきた権力で汚れきっているので、解散させる必要があるということ。自民党をなくしてしまえば、新しい自民党を作れる新世代が見つかるだろう。
たとえ民主党が与党になったとしても、私たちは自己改革をしなくてはならない。私たちには変化が求められている。不要なものを変えて、強化すべきを強化しなくてはならない。私が考えている再編成とは、そういうものだ。そうなれば、真の議会制民主主義が出現するだろう。
FT:日本の政治は時代遅れなのでしょうか?
小沢:はい、遅れています。
この国の民主主義と言った場合、それはなにも欧米の民主主義と全く同じである必要はない。
しかし議会制民主主義においては、色々な政党が政権を担う余地があるべきだ。それによって健全な政策論議が交わされるべきだ。
日本がそこにたどり着くにはまだまだ遠い。
FT:自民党と同じように民主党も分裂していませんか?
小沢:そういう批判は聞いたことがある。けれどもある意味で当然のことです。10人集れば10人がそれぞれ違う考え方をしている。けれども民主党と自民党の間には、根本的な考え方の違いがある。つまるところ民主党の方が自分たちの立ち居地について首尾一貫している。
私はこのことを繰り返し繰り返し繰り返し説明してきたが、日本の記者たちには分からないようだ。理解力不足なのか、勉強不足なのか。根本的な違いがあるのだが、記者たちには分からないのだ。
自民党は、日本の伝統的な合意作りのやり方をもとになりたっていて、強力な官僚機構が後ろから支えている。それは間違っている。私が言っているのはそのことだ。それではやっていけない。だから色々な問題がこうやって噴出するのだ。必要なのは、市民による真の政治参加。そして政治家は日本国民をできるだけ忠実に代表しなくてはならない。日本の政治システムはそのために変わらなくてはならない。
FT:航空自衛隊機を中国に派遣するという提案について(実現しなかったものの)どう思いますか? 日中関係の状態をどう思いますか?
小沢:自然災害なので、(要請された上で)何をしてもかまわないと思う。しかしアフガニスタンやイラクで戦闘行為に関わるとなると、問題だ。
日中関係はきわめて重要だ。機会があるごとに私はこのことを繰り返している。中国の現状の背景にあるものが、地震という自然災害の形で噴出した。マグマは地面の中だけでなく,中国の政治の中にも埋まっている。
中国では、社会主義市場経済と呼ぶ。もちろん毛沢東時代の大躍進があり、文化大革命が続いて、そして改革開放政策が導入された。これは正しかった。中国共産党の独裁は諸刃の刃だった。
マグマは地面だけでなく、中国の社会全体をも揺らしていた。奇妙な偶然のように聞こえるかもしれないが、政治や社会の分野で噴き出したかもしれないものが、自然災害の形で表れたのだ。私にはそう思えてならない。
中国の共産党独裁は資本主義の市場経済と整合性がとれなくなってくる。党が変化しなければ、統治が続けられなくなる。私はいつもそのことを中国の指導層に言っている。しかしそれがどれだけ大変なことか、理解している。いったん権力を握ってしまうと、手放すのは実に難しい。日本でも同じことだ。
私たちは変わらずにいるためには、変わらなくてはならない。これが私のモットーです。
日中関係が大事だと、私は繰り返し強調してきた。政治家として、そして一個人として、両国関係のために努力してきた。(中国側も)それを理解しているので、私が言うことは温かく受けとめてもらえる。
FT:小沢総理大臣の下、日本は国際舞台でどう行動しますか?
小沢:まず経済と政治と社会の分野では、日本のあらゆることが根本的に変化しなくてはならない。そうでなくては、国際社会で日本が期待されている役割を果たすことができない。
国際社会で役割を担えるだけ日本が成熟するという前提で、私は常に「 共生」 あるいは 「共存共栄」 が大事だと繰り返してきた。
この共生の思想を世界に広めることが、日本人にはできると思っている。仏教の教えにもとづいた、自然との共生、ほかの国々や人々との共生だ。
私はそういったテーマを追及していきたい。しかし私は年を取りすぎたので、これは夢で終わるのかもしれない。
FT:小泉元首相は最近なにをしているのでしょう? 小沢さんの前にたちはだかるのでしょうか?
小沢:小泉さんが何を考えているかは知らない。しかし彼は馬鹿ではないので。マスコミは小泉さんが首相返り咲きをねらっているなどと言うが、そういうことではないと思う。
フィナンシャル・タイムズの本サイトFT.comの英文記事はこちら(登録が必要な場合もあります)。
(翻訳 加藤祐子)
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