日本の平凡な男が再建を目指す 野田首相インタビュー

フィナンシャル・タイムズ2011年11月1日(火)12:30
(フィナンシャル・タイムズ 2011年10月30日初出 翻訳gooニュース) ミュア・ディッキー東京支局長

[訳注・記事中の野田首相の発言は、英語から日本語に翻訳したものです]

日本の野田佳彦首相は確かに、有言実行の人だ。

野田氏はただでさえ保有資産が1774万円と歴代首相として最も少なく、就任時に一番貧乏な総理大臣だったのだが、支出削減の手腕を評判通りに発揮し、公務員給与の削減に支持を取り付けるため、まずは自らの給与3割カットを打ち出したのだ。

これは、財政健全化への回帰を重視する野田氏の決意のほどを浮き彫りにするものと言える。5年間で6人目となる日本の首相に先月就任するまで財務相だった野田氏にとって、日本の財政安定化は最優先課題なのだ。

しかし、世界第3位の経済大国が直面する諸問題について歩を進めるには、首相のこうしたアピールだけでは足りない。それは最近の政権トップ交代からしても明らかだ。

短命政権に終わった前任者たちの轍を踏まないようにするには、どうしたらいいのか。インタビューでこう尋ねると、弁護士出身でがっちりした体つきの野田首相はそれに直接答える代わりに、内紛続きの与党・民主党と、敵対心むき出しの野党各党が、なぜ国益のために協力しなくてはならないかを語った。

「日本は危機に直面している。私たちは3月11日の東日本大震災から再建しなくてはならない。できるだけ早い解決を必要とする原発事故もある。そして世界経済が波のように直撃してくるかもしれない中で、日本経済の復活を実現しなくてはならない」

これらの目標に反対する人はほとんどいないが、実際にどうやって取り組むかについて日本には合意らしいものがまったくない。それが問題だ。

たとえば3月11日の津波からの再建復興はどうか。野田氏は、一時的な増税で償還する特別な復興債を、再建の財源にしたいと考えている。

しかし民主党内では多くが、たとえ一時的なものでも増税に反対しているし、参議院で法案を可決させるには野党の支持も必要だ。

2010年代半ばまでに消費税率を現在の5%から倍に引き上げるという首相の計画は、さらに支持を得にくいだろう。未来の財政危機を回避するには消費税増税は不可欠だと野田氏は考えているのだが。

フランスで今週開かれるG20首脳会合における日本の最優先課題は、日本が自国の財政基盤強化に注力していくつもりだと各国に説明し、安心してもらうことだと首相は話す。

地域貿易協定について、米豪や他のアジア太平洋各国との協議に日本も近く参加するだろうという期待の中で、首相にとっては市場開放をめぐる戦いも始まっている。

環太平洋経済連携協定(TPP)参加は日本の非効率な農業に壊滅的な被害をもたらすというのが、反対派の意見だ。民主党幹部はこのほど、交渉参加は党の分裂をもたらすと警告したほどだ。

それでも野田氏は、交渉に参加するか否か早急に決めたいと言い、日本の農業が力をつけるまで貿易自由化は待たなくてはならないという言い分にはあまり聞く耳を持たない姿勢を示している。

「高次元の経済統合と農業復活が共存できるかどうかが問題なのではない。日本が貿易立国である以上、共存するしかない」と野田氏は言う。

TPP交渉を開始すればそれこそ、今の首相はどんなややこしい問題にも挑戦するつもりだと世間に示すことになる。

もうひとつ難しい分野は、福島第一原発の事故によってボロボロになった日本のエネルギー政策だ。日本にある原子炉のほとんどはいま休止中で、新しい安全性テストの後に果たして何基が再稼動できるのか、今はまだ分かりようもないと野田氏は言う。

原発の再稼動はそれだけでも問題山積だが、野田氏は建設中の原子炉完成に前向きなだけに、原発反対派の反発はますます高まるはずだ。

「9割方完成しているものもあり、地元の理解が得られるかどうかによって、ケースバイケースで判断していかなくてはならない」と首相は話す。

それでも野田氏の控えめなスタイルによって、政治の世界の緊張感はある程度は和らぐかもしれない。野田氏が党代表選で自分の平凡な外見をネタに、自らを金魚に囲まれたドジョウになぞらえたとき、日本では多くの好評を得たのだ。

就任から2カ月近くたっても、野田氏の自嘲的なユーモアは健在だ。インタビュー後に写真を何枚も撮るカメラマンに向かって、首相はこう言った。「何枚とってもこの顔は同じですよ」。


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(翻訳・加藤祐子)

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