【FT】なぜ中東の炎は鎮火できないのか <前>

フィナンシャル・タイムズ2006年8月3日(木)21:34
レバノン対イスラエル

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(フィナンシャル・タイムズ 2006年7月27日初出 翻訳gooニュース) デビッド・ガードナー

 レバノンでの戦いには、絶望的なデジャビュ的感覚がつきまとっている。目の前で繰り広げられている戦いは、ある種の再放送ではないのかと。もうずっと昔から延々ひたすら続いてきた遺恨試合の、再々々々々々…マッチなのではないかと。その要素は確かに強い。しかしだからといって、今の状況がいかに異常なほど危うい状態にあるか、これまでと違ってどれだけ危険か、見過ごしてはならない。

 レバノンとイスラエルの対立は、今回の侵攻がなくても十分すぎるほどひどい状況だった。最悪だったのはイスラエルによる1982年の全面侵攻。このときはレバノンからパレスチナ解放機構(PLO)を追放することが目的だった。この侵攻を機に、西ベイルートは2ヵ月にわたり占拠され、約1万9000人が殺害された(このほかにベイルート郊外のパレスチナ難民キャンプ、サブラとシャティラでは多くのパレスチナ難民が虐殺された)。この侵攻によって最大の打撃を受けたのは実はPLOではなく、イスラエルの評判だった。そして1982年のこの侵攻がきっかけとなって、イスラエルの仇敵「ヒズボラ」誕生の土壌が作られたのだ。

 今回の侵攻にあたって、イスラエル軍参謀総長のダン・ハルツ中将は「レバノンの時計を20年前に逆戻りさせてみせる」と挑発的に豪語した。中将本人が意図した以上に、この発言はイスラエルの本音をさらけだしたのではないか。

 レバノンはこれまでに何度も、外国勢力の代理戦争に利用されてきた。シリアしかり、イスラエルしかり、サウジアラビア、リビア、イラン、ヨルダン、アメリカしかりだ。こうした諸外国がこれまで、レバノンの土地と宗派対立を利用して代理戦争を展開してきたのだ。しかしこれまでの戦いでは、戦火はレバノン領内にとどまっていた。

 今回は違う。中東の地政学的な文脈や状況が変わってしまったからだ。とりわけイラクのせいで、中東に地殻変動が起きてしまったからだ。今の紛争当事者たちは、世界最大のガソリンスタンドにいながら、マッチ遊びをしているようなものだ。

 イスラエルのレバノン攻撃が今後どうなるのか。1982年侵攻と同じくらい危険できまぐれなものになる危険がある──というだけでは済まされない。

 イスラエル軍が2000年にレバノンを撤退するまでの間、ヒズボラはイスラエル精鋭部隊に激しく抵抗したわけだが、今回はそれにも増して激しく抵抗している。だからこそ、イスラエルの攻撃が激化している──というだけでも済まされない。

 今回の衝突がこれまでと違うのは、レバノンでとどろく砲声のひとつひとつが全て、中東地域全体に響き、ひいては世界中に響き渡るからだ。目を凝らしてよく見てみると分かる。この戦いをレバノン領内のみに封じ込めるなど、できるわけがない。イスラエルがヒズボラを完全に崩壊させるまで、あるいはロケット砲がこれ以上届かないところへ追撃するまで、戦いはレバノンの外には絶対に拡大しない──などという展望は、妄想にすぎないのだ。

 最近まではイラクについても、似たような妄想があった。米国はイラク事業を成功させて、ラディカルで新しい「自由」のアジェンダ(テロに強硬姿勢で臨み、テロの原因にも強硬に取り組むという政策方針)を中東地域で追求する──はずだった。

 しかし今やイラクは国家として破綻してしまった。イスラム教シーア派とスンニ派の宗派対立で連日100人前後が殺される、闘鶏場のようなところになってしまった。そして、オサマ・ビンラディンが唱える全体主義的聖戦思想にとって、攻撃対象のやたらと多い、かっこうの最前線となってしまったのだ。

 

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