【FT】部下のさぼりネットは恐るるに足らず─フィナンシャル・タイムズ

フィナンシャル・タイムズ2006年9月30日(土)23:36
ルーシー・ケラウェイとは
FTのビジネス経営担当コラムニスト。10年前から続く毎週月曜のコラムで、ビジネス界の流行や流行語をからかったり、オフィス・ライフの悲喜こもごもをクロースアップしたりと、独自の視点でつづってきた。

FT入社から約20年にわたり、エネルギー担当、ブリュッセル特派員、ビジネスコラム「Lex」などを担当したほか、「FTと昼食を」シリーズで多くのビジネスリーダーや著名人を取材してきた。金融経済記者としての受賞も多い。著書に「Sense and Nonsense in the Office」「Martin Lukes: Who Moved My Blackberry」など。

1959年ロンドン生まれ。オックスフォード大学卒業(専攻は政治・哲学・経済)。時評雑誌「プロスペクト」の創刊者・編集長デビッド・グッドハート氏との間に子供4人。

英語プロフィールはこちら
(フィナンシャル・タイムズ 2006年9月24日初出 翻訳gooニュース) ルーシー・ケラウェイのコラム

本当にあった話を2つほど。お題はセックスとマネーと、そして宇宙の支配者たちが本当は職場で何をしているのか、について。職場で、誰も見てないと安心しているとき、彼らは(そして彼女らは)何をしているのか。

1つ目の話は、ロンドンのシティ(金融街)にある大銀行で働くデリバティブ・トレーダーのこと。40代半ばで、結婚はうまくいっていない。子供たちは、超有名校に行っている。彼はいわゆる勝ち組で、派手な生活を送っていて、しゃべる内容は文法などには問題ありでも、小気味良いジョーク連発。ちょっとワルっぽい感じで面白い男だ。

私が彼を知っているのは、私の女友達を通じて。彼女はほとんど毎日のように、午後になるとインターネットで彼と会話をしている。数ヵ月前に出会い系サイトで見つけて以来、しょっちゅうネットでやりとりしているそうだ。いずれ実際に会うことにするかもしれないし、会わないかもしれない。私の友人にしてみれば、向こうに奥さんがいるというのがネックなんだろう。とはいえ、このコラムで私が書きたいのはそのことじゃない。

2つ目は、シャツとエリート弁護士とジャーナリストについての三題噺(さんだいばなし)。

シャツは、細い赤ストライプの入ったパープル色。だいぶ前にアニエスbの店でその「人生」をスタートさせた。しばらくするとシャツは、慈善団体「オックスファム」運営のチャリティショップに寄付されて、やがてシティ勤務の女性弁護士に買われていった。でも彼女は一度も袖を通さないまま、シャツをイーベイで売ることにした。比較的最近のある水曜日の午後、あるジャーナリストがこのシャツを4ポンド(約900円)で落札。二人がメールで連絡をとりあったところ、まず弁護士の方が、メールの末尾にあるジャーナリストの名前に見覚えがあったので驚いて、シャツはただでお譲りしますと申し出た。ジャーナリストの方も、シャツをネットオークションにかけていたのが、シティの大銀行の法務部門責任者だと知って、同じくらい驚いたというわけだ。

2つの話の共通テーマは、組織のトップレベルでもさぼりネットが横行しているということ。しかも、仕事中にインターネットをウロウロしてさぼっていた当事者たちは、退屈な仕事に飽き飽きして終業時間まで適当に暇つぶしをしていたわけではない。激務に追われるワーカホリックな組織で、大事な仕事を任されている管理職なのだ。にもかかわらず、ひとりは午後になると私の友人をオンラインで口説いているし。ひとりは、おそらく巨額の給料をもらっているはずなのに、オックスファムの古着屋で激安で買いはしたけれども結局は着なかったシャツに払った金額を、イーベイで取り戻そうとしていた。

そしてジャーナリストにしても(はい、そうです。私のことです)、本当だったらコラムを書いているべき時間を使って、別にいりもしない安い古着シャツをあさってネットをウロウロしていたというわけだ。

人間の本質とはいったいどれほどどうしようもなく弱いものか……ということは、この際どうでもいい。それよりも、今やテクノロジーのおかげで、私たちは自分のそういう弱さや欲求を職場にいながらにして満たすことができるようになった。私にはそっちの方が面白い。

ファイヤーウォールだの、やばそうなサイトをアクセス禁止にする会社方針だの、そんなのはどうでもいい。社員のさぼりネットはどんな会社のどんなレベルでも、今や生活の一部となっている。米国で最近発表された調査によると、米国のオフィスワーカーの87%が職場でインターネットを私用に使っているし、約半分が、1日に何回も私用ネットをしているそうだ。後ろめたいと思うどころか、さぼりネットをしているほとんどは、それでも自分の生産性は全く悪影響を受けていないと話しているのだ。

まさかそんなわけはないでしょう? 何時間もネット上をうろうろしているなら、仕事の時間がそれだけ少なくなっているはずだ。

だとすると、インターネット以前の昔々、私たちは職場で何をしていたんだろう? 昔の方がまじめに働いていたとでも? 自分について振り返ってみれば、全くそんなことはなかった。私たちが1日にやる仕事の量というのはけっこう一定なのだ。そして管理職の仕事の一定量というのは、ほとんどの場合、とんでもないほど少ないのだ。私たちの仕事量を決める要素は、会社がどういう会社か、自分がどれだけ野心的か、そしてどれぐらいプレッシャーがかかっているか。

インターネット以前の私たちは単に、ネット以外の方法でさぼっていただけ。たとえば当時の私はけっこうしょっちゅう、最近ではもう誰もやらなくなってしまったことをやっていた。それはつまり、ランチをきちんととること。そしてランチタイムに、生産性の大敵=アルコールを摂取すること。

私が1980年代にシティで働いていたころ、職場の仲間と一緒にしょっちゅうそんなことをしていた。たっぷり2〜3時間かけてアルコールありの昼食をとっては、のろのろとオフィスに戻ると、残されたわずかな時間でいくつかミスをするだけして、それでのろのろと帰宅したものだ。

インターネット時代にすっかり姿を消してしまったものがもう一つ。意味のないおしゃべりだ。昔は職場で、延々と無意味におしゃべりができたものだ。でも今は、勤務時間中になんとか若干のおしゃべりタイムをつめこんだとしても、おしゃべりの相手が早く仕事に戻らなくてはならないんじゃないかと気が気でなくて、やたらと大急ぎでおしゃべりをまくしたてなくてはならない、そんな気にさせられている。

机に向っている時間は、前よりずっと長くなった。職場での1日は前後にうんと引き延ばされて、ランチをゆっくりとる時間もなければ、おしゃべりもほとんどない。となると私たちは代わりに何かをして時間を埋めなくてはならない訳で、だからそこに、さぼりネット、私用ネットが入る余地があるわけだ。

ほとんどの人はさぼり方がすごく下手だ。さぼっているのを見つかるのが怖くて、あと、いかにも清教徒的にきまじめな発想で、ネットを見ているのは根本的に何か悪いことだという意識がぬぐいがたくあるので、ほとんどの人は、仕事のフリができるようなものを見てさぼっている。ただし、仕事のフリをしてさぼっているので、見ていても特に楽しくはないし、仕事という意味ではもちろん生産的ではない。これといった意味もなくて冗長でつまらないブログを延々と読んだり書いたりしている人も多い。オンラインでだらだらとニュースをあさったり、その記事を書いた記者に長々とメールを書いたりしている人もいる。

1000ワードもある長大なメールを私に書いて送ってくる読者の皆さん、ぜひ留意していただきたい。そういうさぼり方は、とってももったいない、無駄なことです。同じさぼるのなら、そういう非生産的な時間は、もっと楽しいことに使うべきです。

上手にさぼるためのルールその1は、本当だったら自宅でやったはずの何かを職場でやることだ。だからたとえば、勤務時間中にスーパーで買い物をしたり、旅行の予約をしたりとかは、誰にとってもいいことのはずだ。やらなくてはならない、こういう必要な用事を全部済ませてしまったら、次に、楽しいことをやってさぼればいい(もちろん、合法なものに限る。ポルノや賭け事も除外)。イーベイに行ったり、オンラインでデートしたり、ほかに何でも好きなことをすればいい。

あなたを雇っている側は、私用ネットはけしからんと言うべきだけれども、実際には見て見ぬフリをしてくれるはずだ。ネットを使って大胆にさぼってやったという満足感があれば、だいたいの人は気分が明るくなると同時に、ちょっと後ろめたい思いがするはずだ。明るい気分でちょっと後ろめたい。つまり、まともな仕事にちゃんと取り組むには最適の、ちょうどいい心理状態になっているというわけだ。

フィナンシャル・タイムズの本サイトFT.comの英文記事はこちら(有料購読が必要な場合もあります)。

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