ドイツと日本 軍事力回復を目指す―フィナンシャル・タイムズ (1)
(フィナンシャル・タイムズ 2006年11月15日初出 翻訳gooニュース) スティーブン・フィドラー
第2次世界大戦の敗北から60年以上たって、日本とドイツは遂に、戦後引きずり続けてきた足かせを外そうとしているようだ。ここ数週間ほど東京とベルリンから聞こえてくる両国指導者の発言は、自分たちの経済力に匹敵する軍事力の開発を目指しつつあるらしいという、シグナルにほかならなかった。
日本では新しい総理大臣が、目前に立ちはだかる脅威に直面していた。つまり北朝鮮が、核兵器を爆破させる能力を公式に実証したのだ。先月の核実験によって日本では、核兵器を保有すべきかの議論が浮上した。また、フィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで安倍晋三首相は、日本の軍事力増強を制限する憲法条文の改正を任期中に目指すと発言した。
一方のドイツでは、アンゲラ・メルケル首相率いる内閣が、ドイツ軍の国際的役割を拡大する政府白書を閣議決定。軍の海外派遣に関する12年ぶりとなる政府白書は、テロ拡大や大量破壊兵器の拡散などドイツを取り巻く安全保障情勢の激変について「ドイツ直近の環境だけでなく、国際社会全体の安全保障に影響している」と指摘。実効的な軍隊の存在は「ドイツが置かれている環境に大して、積極的に働きかけていこうというわれわれの安全保障政策に不可欠なものだ」としている。
こうした展開は、軍事国家としての両国の伝統が20世紀にどれほどの破壊をもたらしたかを思うと、戸惑いを呼ぶものではある。しかし中国などの周辺国は日本の動向を注視するはずだが、ドイツの周辺国はドイツの軍事力増強を歓迎するはずだ。米国も同様だ。米国は、日独両国が世界の治安維持について相応の負担を請け負っていないことが不満で、もっと大きな安全保障上の役割を担うよう両国に求め続けているからだ。
両国の変化はどちらも、軍国化が一気に高まる予兆などではない。両国の変化は、1992年にカンボジアで国連の平和維持活動に参加し、戦後初めて部隊を海外派遣して以来、徐々に積み重ねてきた変化を反映したものだ。
しかし日独両国政府の最近の動きは、両国で戦後何年もタブー視されてきた(あるいは実現不可能だった)国家利益についての議論を、国民が受け入れるようになったという、その世論の変化を示している。
両国が歴史的に同じような経過をたどってきたことは紛れもない事実だ。日独は共に、米国が作った(あるいは米国の圧倒的な影響下で作った)憲法をもつ。そして米国はどちらの場合も、両国の軍国主義的な伝統に終止符を打つ憲法や基本法を押し付けておきながら、以来ずっと、軍事力を増強するよう両国に揺さぶりをかけ続けているのだ。
日本でもドイツでも、反戦・反軍事の伝統は単なる法律や憲法条文の問題にとどまらない。国民の多くが、第2次世界大戦の教訓を深く真剣に受け止めているのだ。そして米国とは対照的に、日本人もドイツ人も、国際紛争の解決手段として軍事力が果たして有効かどうか、かなり疑わしく思っている。
しかし両国では最近、きわめて重要な世代交代がついに実現した。これは冷戦終結をきっかけとする戦略の変化に匹敵するほど、大きな分岐点となる。つまり9月に就任した安倍首相と、11月で就任1年を記念するメルケル首相は共に、日独初の戦後生まれ首相なのだ。
しかし日本とドイツでは、共通点よりも違いの方が多い。ドイツは欧州連合(EU)に北大西洋条約機構(NATO)という、多国間同盟の網の中にしっかりと組み込まれている。周辺は友好国に囲まれ、あからさまな敵国はいない。その一方で、日本の周辺には敵対国や、日本を警戒する国ばかり。唯一の支えは米国との二国間同盟のみだ。(2へ続く)
第2次世界大戦の敗北から60年以上たって、日本とドイツは遂に、戦後引きずり続けてきた足かせを外そうとしているようだ。ここ数週間ほど東京とベルリンから聞こえてくる両国指導者の発言は、自分たちの経済力に匹敵する軍事力の開発を目指しつつあるらしいという、シグナルにほかならなかった。
日本では新しい総理大臣が、目前に立ちはだかる脅威に直面していた。つまり北朝鮮が、核兵器を爆破させる能力を公式に実証したのだ。先月の核実験によって日本では、核兵器を保有すべきかの議論が浮上した。また、フィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで安倍晋三首相は、日本の軍事力増強を制限する憲法条文の改正を任期中に目指すと発言した。
一方のドイツでは、アンゲラ・メルケル首相率いる内閣が、ドイツ軍の国際的役割を拡大する政府白書を閣議決定。軍の海外派遣に関する12年ぶりとなる政府白書は、テロ拡大や大量破壊兵器の拡散などドイツを取り巻く安全保障情勢の激変について「ドイツ直近の環境だけでなく、国際社会全体の安全保障に影響している」と指摘。実効的な軍隊の存在は「ドイツが置かれている環境に大して、積極的に働きかけていこうというわれわれの安全保障政策に不可欠なものだ」としている。
こうした展開は、軍事国家としての両国の伝統が20世紀にどれほどの破壊をもたらしたかを思うと、戸惑いを呼ぶものではある。しかし中国などの周辺国は日本の動向を注視するはずだが、ドイツの周辺国はドイツの軍事力増強を歓迎するはずだ。米国も同様だ。米国は、日独両国が世界の治安維持について相応の負担を請け負っていないことが不満で、もっと大きな安全保障上の役割を担うよう両国に求め続けているからだ。
両国の変化はどちらも、軍国化が一気に高まる予兆などではない。両国の変化は、1992年にカンボジアで国連の平和維持活動に参加し、戦後初めて部隊を海外派遣して以来、徐々に積み重ねてきた変化を反映したものだ。
しかし日独両国政府の最近の動きは、両国で戦後何年もタブー視されてきた(あるいは実現不可能だった)国家利益についての議論を、国民が受け入れるようになったという、その世論の変化を示している。
両国が歴史的に同じような経過をたどってきたことは紛れもない事実だ。日独は共に、米国が作った(あるいは米国の圧倒的な影響下で作った)憲法をもつ。そして米国はどちらの場合も、両国の軍国主義的な伝統に終止符を打つ憲法や基本法を押し付けておきながら、以来ずっと、軍事力を増強するよう両国に揺さぶりをかけ続けているのだ。
日本でもドイツでも、反戦・反軍事の伝統は単なる法律や憲法条文の問題にとどまらない。国民の多くが、第2次世界大戦の教訓を深く真剣に受け止めているのだ。そして米国とは対照的に、日本人もドイツ人も、国際紛争の解決手段として軍事力が果たして有効かどうか、かなり疑わしく思っている。
しかし両国では最近、きわめて重要な世代交代がついに実現した。これは冷戦終結をきっかけとする戦略の変化に匹敵するほど、大きな分岐点となる。つまり9月に就任した安倍首相と、11月で就任1年を記念するメルケル首相は共に、日独初の戦後生まれ首相なのだ。
しかし日本とドイツでは、共通点よりも違いの方が多い。ドイツは欧州連合(EU)に北大西洋条約機構(NATO)という、多国間同盟の網の中にしっかりと組み込まれている。周辺は友好国に囲まれ、あからさまな敵国はいない。その一方で、日本の周辺には敵対国や、日本を警戒する国ばかり。唯一の支えは米国との二国間同盟のみだ。(2へ続く)
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