最悪の銃乱射でも銃規制強化につながらない?――フィナンシャル・タイムズ
(フィナンシャル・タイムズ 2007年4月16日初出 翻訳gooニュース) ワシントン=ガイ・ディンモア
米国史上最悪とされる銃乱射事件がバージニア工科大学で発生した16日、米国の政治家はこぞって嘆きと追悼のコメントを発表した。しかし過去の事例を見る限り、政治家がどれだけ怒りのコメントを発したところで、銃規制の強化にはほとんどつながらない。
ブッシュ大統領も「衝撃を受けていた」。事件直後に報道官はそう発表した。しかし銃規制推進派が指摘するように、攻撃性の高い半自動小銃などを規制するため1994年に施行された連邦法は2004年に失効。ブッシュ政権はこの「攻撃用銃規制法」の復活に消極的だ。
「攻撃用銃が規制できなくなってしまった。非常に残念だ」 銃暴力防止のブレイディ・キャンペーン(訳注・レーガン大統領狙撃事件で撃たれて半身不随になったブレイディ元報道官の銃規制活動を引き継いだ団体)のスポークスマンはこうコメント。昨年秋に連邦上下両院で多数党となった民主党が、攻撃用銃規正法を復活させると期待はしているが「その動きはまだほとんど見えていない」という。
米国人が武器を所持する権利を保障しているのは、連邦憲法の修正第2条。この権利を擁護し続けているのが、全米ライフル協会(NRA)だ。ミズーリ州セントルイスで年次総会を終えたばかりのNRAは15日、公式サイトで、年次総会が盛況だったと報告。総会は「自由の祝典であると同時に(中略)自由を脅かす全ての敵に対して、銃をもつ全ての人が、断固たる決意を示す場だった」のだという。
NRAは先月、首都ワシントン特別区での銃規制は違憲だとする連邦高裁判決を、もろ手を挙げて歓迎したばかり。フィナンシャル・タイムズはバージニア工科大学の事件発生後に電話取材を試みたが、バージニアにあるNRA本部からの返答はまだない。
1999年4月20日にコロラド州コロンバインの高校で生徒2人が銃を乱射し、生徒12人と教師1を殺害したとき、やはり大統領選の渦中にあった米国は慄然とした。
当時のビル・クリントン大統領のもとで連邦議会は、複数の銃規制法案を成立させようとした。しかしそのたびに銃ロビーが法案をつぶしにかかった。銃ロビーはさらに、2000年にブッシュ氏がアル・ゴア氏の勝利したのは自分たちのおかげだと、自画自賛した(個別具体的な利権を後押しするロビー団体はこぞって、ブッシュ勝利は自分たちのおかげだと主張したものだ)。
犯歴者や未成年の銃購入を禁止する法律もあるにはある。「政府がなんとかするまでに、あと何人、死ななくてはならないんだ?」 クリントン氏がこう発言したこともある。
16日の乱射事件を受けて、銃規制の問題が2008年米大統領選において大きな論点になるのは必至だ。2000年大統領選の共和党候補は、NRAがもろ手を挙げて支持するジョージ・W・ブッシュ氏と(狩猟と釣りが趣味の)ディック・チェイニー氏だった。しかし来年に向けて出馬表明している共和党候補の顔ぶれについて、NRAはあまり歓迎していない。
NRAが誰よりも意識しているのは、世論調査で高支持率を維持する民主党のヒラリー・クリントン上院議員だ。クリントン議員は2000年、新規に売られる全ての拳銃に登録を義務づける全国制度の導入に賛成しているからだ。
クリントン議員は2000年にこう言った。「NRAが恐るべき政治団体だというのは承知している。しかし、銃を持つべきでない人々には銃を持たせない。そのために必要なことは何でもやろうと、そのために一致団結しようと、米国民にはその覚悟があるはずだと信じている」
民主党の大統領候補指名レースでクリントン議員に肉薄しているのは、イリノイ州選出のバラック・オバマ上院議員。オバマ議員も自伝の中で、米国の指導者たちは銃器製造業ロビーの圧力をはねのけ、(訳注・ギャング抗争など暴力事件の多い)都市中心部に銃が入り込まないようにしなくてはならないと書いている。
一方、共和党の大統領レースで先頭に立つルディ・ジュリアーニ前ニューヨーク市長は、国民が武器を所持する権利を政府が禁止すべきではないが、銃器の所有者は全員、事前に筆記試験に合格する必要があると主張している。
米銃所有者協会のスポークスマン、ジョン・ベレコ氏は、ジュリアーニ前市長のこうした姿勢を攻撃。特に、1990年代初頭にクリントン大統領が銃規制を重要政策課題として推進できたのは、ジュリアーニ氏の後押しがあったからだと批判している。民主党によるこの一連の銃規制はむしろ共和党有利に働き、おかげで共和党は1994年の米下院選挙では大勝し、過半数を取り返したのだとさえ言われている。
共和党の大統領レースに参加しているミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事は最近、銃規制をめぐって苦境に立たされた。自分は銃を持つ人たちの味方だと安心させ、銃ロビーの支持をとりつけようとしたとされる前知事は、以前は銃規制の強化を支持していたのだ。
バージニアの乱射事件に特に心を痛めているのは、コロラド州リトルトンの人たちだ。
「今どういう気持ちでいるか、想像できる」 30年近くにわたりコロンバイン高校の校長を務めてきたフランク・デアンジェリス氏はブルームバーグ・ニュースに対してこう話した。「コロンバインの事件で学んだものがあるはずだと期待していたが、そうじゃなかったと明らかになってしまった」
2004年現在の米司法省統計によると、過去10年間に起きた銃による殺人事件は年間1万件を超える。1993年の1万7000件に比べると、減少していることになる。
ホワイトハウスのダナ・ペリノ報道官は今回の事件後、昨年10月にペンシルベニア州で起きた乱射事件に言及。同州ニッケルマインズでアーミッシュ住民の子供たちが通う学校が男に襲われ、少女5人が殺害された事件の後、ブッシュ大統領は学校での発砲事件防止のための会議を共催したのだという。
「政策方針として大統領は、国民には武器所持の権利があるが、その一方で順法も必要だと考えている」と報道官は述べた。より強力な銃規正法が必要かどうか、報道陣に質問されると、報道官は「大統領の方針が変わることがあれば、お知らせします」と答えた。
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