唯一の基軸通貨=ドルの時代はそろそろ最終ラップに――フィナンシャル・タイムズ

フィナンシャル・タイムズ2007年11月30日(金)02:04
(フィナンシャル・タイムズ 2007年11月25日初出  翻訳gooニュース) ウォルフガング・ムンヒャウ

グローバル化のこの時代における為替レートについて、非常に大きな影響力をもった理論がある。しかしそれが今や、水の泡と消えようとしている。

2003年に、経済学者マイケル・ドゥーリー、ダビッド・フォルカーツ=ランダウ、ピーター・ガーバーの3氏が提唱したものは、その後「ブレトン・ウッズ2」理論として知られるようになった。これは、新興工業国は輸出主導型成長を求めて、自国通貨を安めにドルに連動(ペグ)させ、ドル・ペグで得られた収益を米国に投資しがちだという、実際の動きにもとづいた理論。後発工業国にとって米国は、よりどころであると同時に、自国製品の頼みの市場というわけだ。

米国は2006年、国内総生産(GDP)の6%以上にもなる経常赤字を記録した。これは通常ならば、過剰とされる水準だ。しかし「ブレトン・ウッズ2」理論によると、これは望ましくかつ持続可能な状態ということになる。この理論は万人に支持されているわけではない——などと言ったら、それは控えめな表現にすぎる。今になってみれば、アメリカの経常赤字拡大というこの状態は、望ましいと思っても思わなくてもどちらにしても、おそらく持続不可能だからだ。

「ブレトン・ウッズ2」理論はダメだろうという裏づけになる統計データがひとつある(もちろん、決定的なものではないが)。それはつまり、国際的な資金フローだ。今年の夏いきなり、米国に資金が還流しなくなったようなのだ。米財務省のTIC(対米証券投資状況)統計によると、今年6月末以降、外国から米国への長期証券投資ががっくり落ち込んでいる。

これがどれだけ大きな問題か把握するために、数字を並べてみる。外国の対米証券投資と、米国の対外証券投資の差は、2005年では毎月平均700億ドル程度で、2006年にはもう少し増えていた。今年6月の時点でも、米国への証券投資の方が999億ドルも多かったのだが、7月になるとこれが急にプラス195億ドルに激減。8月にはマイナス706億ドルにまで落ち込み、9月にプラス264億ドルにまで回復した。

米国の経常赤字を2006年レベルで維持するには少なくとも2005年や2006年並みの証券投資差額が必要だということになると(数十億ドル程度の幅はあったとしても)、そういう視点から見ると、この急激な対米証券投資の減少は、大きな構造的シフトに見えてくる。

米国の資本黒字が減っているということは、つまり理論的には、経常赤字が減っているはずだ。しかしそれはつまり、「ブレトン・ウッズ2」システムが本来あるべき形で機能していないということになる。

「ブレトン・ウッズ2」は時には、巨大な資金洗浄カルテルに見えなくもない。君が僕の商品を買ってくれれば、代わりに僕は君に融資の形でその代金を返すよ——という仕組みと似ている。マクロ経済レベルで詐欺が行われていたわけで、どうりで信用市場が暴落すると同時に、この仕組みも破綻したわけだ。

とすると次は何がくるのか? 世界的な通貨レジームというのは、長期的サイクルでめぐってくるものだ。固定相場制と変動相場制はこれまでも、驚くほど規則的に、交互に入れ替わってきた。

ブレトン・ウッズ体制が終了した後、しばらくは変動相場制が続いた。欧州はその中で、為替相場メカニズムを経由して、通貨統合への長い道のりを歩み、その結果30年後には、自由に変動する単一通貨を実現した。ということは、ブレトン・ウッズ2の後には何が続くのだろう?

2つのシナリオが思いつく。1つは、ドルの世界的な独占状態はこれからドルとユーロの2本だてになるという展開だ。この転換がいつになるのか、タイミングを予測するのは不可能だ。各国が次第次第にドル・ペグから通貨バスケット制に乗り換えるに伴い、外貨準備のポートフォリオを同時に変更していくだろう。

各国がドル・ペグからの乗り換えを希望するのは、何よりも、インフレの輸入を恐れるからだ。ドル切り下げのおかげですでに中国や湾岸協力会議(GCC)の6カ国では、これが現実の問題となっている。最近では、たとえばアラブ首長国連邦などがドル・ペグを廃止しそうだという兆候が、複数の国で相次いでいる。

もちろん実際にそういう事態になれば、ドルは確実にさらに下落するし、それを機に次々とドル・ペグを止める国が出るかもしれない。「ブレトン・ウッズ2」がバラバラと無秩序に、ガタガタに崩れて行く状況を想像するのは、決して難しくない。

もう1つのシナリオ、少なくとも論理的に可能な展開は、地域的な為替レート・レジームの発生だ。これはたとえば、最初のブレトン・ウッズ体制の後に欧州で展開したことと同じだ。これまでも既に長いこと、アジア通貨統合が話題にされてはきたが、具体的な前進はほとんどない。

いずれにしても、ドルが世界唯一の基軸通貨だった時代は、そろそろ最終ラップに入りつつある。新時代がどうなるか、まだ良くは分かっていない。しかし「ブレトン・ウッズ3」にはならないだろうということくらいは、言ってもいいのかもしれない。


フィナンシャル・タイムズの本サイトFT.comの英文記事はこちら(登録が必要な場合もあります)。
(翻訳 加藤祐子)
  • ソーシャルブックマークに追加:
  • gooブックマークに追加
  • Yahoo!ブックマークに追加
  • はてなブックマークに追加
  • Buzzurlに追加
  • livedoorクリップに追加
  • FC2ブックマークに追加
  • newsingに追加
  • イザ!に追加
  • deliciousに追加

最新のフィナンシャル・タイムズ翻訳記事

この記事について ブログを書く

過去1時間で最も読まれた国際ニュース

ニュースキーワード


注目のトップニュース
民家3人殺傷、少女連れ18歳逃走
トヨタmonozukuriと日本人の誇り
プリウス「極限の燃費」落とし穴
婚約し帰省…凍結道で衝突死
多重債務の島民救った29歳弁護士
認知症80代女性、7000万持ち散歩
「元朝青龍関が車内で暴行」説明
99×99も簡単、インド式学校人気
注目の国際ニュース
マンデラ氏、拘置所での陽気秘話
ハイチ地震、スマトラ沖被害超え
乱獲でマグロ抜き握りも?仏
マチュピチュ遺跡、全面閉鎖に
ドバイの世界一ビル 再び故障
中国に米ロケット技術を漏洩30年
中国「高級人材争奪戦」の内幕
金総書記、半島非核化の原則強調
おすすめ情報サービス
OCNおすすめコンテンツ
OCN cashingカードローンがこんなにお得?
OCN journalOCNジャーナル
nhk ondemandNHKオンデマンド
OCN specialOCNスペシャル特集「昭和レトロ」
OCN会員向け情報コンテンツ
asahi.com朝日記事検索サービスasahi.com
sankei netview紙面そのまま産経 Net View
yomidas新聞各紙から情報ピックアップ
bunshokanヨミダス 文書館
OCNニュース関連コンテンツ
今週のトピックス
おすすめコンテンツ
gooのお知らせ
花粉症特集gooヘルスケア花粉症対策に役立つアドバイスや豆知識、今日の花粉飛散情報などをお届け
100万本のクローバー緑のgoo「緑のgoo」で広げる「100万本のクローバー」キャンペーン実施中
gooニュースサービス説明