日本の軍艦、中国へ平和の旅――フィナンシャル・タイムズ
(フィナンシャル・タイムズ 2008年6月24日初出 翻訳gooニュース) 中国広東省湛江=トム・ミッチェル
中国沖で24日、日本艦の砲音が響き渡った。これまで60年以上にわたり、一度もなかったことだ。今回は戦争の砲撃ではなく、平和の礼砲。海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」が歴史的な訪中を果たし、21発の礼砲をとどろかせたのだ。
「たかなみ」型護衛艦の「さざなみ」は中国南部広東省の湛江港に入港する前に礼砲を響かせたが、遠隔地にあるこの港で行われた記念式典は、礼砲のほかはかなり地味なものだった。日本の自衛隊艦が中国を訪れるのは、第2次世界大戦終結以来、初めて。中国海軍艦が先導し、両艦の乗務員がそれぞれ甲板に整列して登舷礼をする中、さざなみは湛江港に入港した。
湛江港はそれ自体が大きな貨物港であり軍港だが、外国海軍が寄港を好む香港や上海、青島などの華やかな都会からはかなり離れている。
かつて敵対していた日中両国の軍事交流は、未だに非常にデリケートな問題だ。それゆえに中国の軍事施設に「さざなみ」がやってくるというその場に、岸壁側で立ち会うことが許されたのは、日中の記者だけ。そのほかの国や香港の記者たちは取材を許されなかった。
「さざなみ」訪中は、日中関係が改善しつつあるという一連の流れが改めて実体化したものだ。中国と日本の両政府は先ごろ、双方が権利を主張していた東シナ海の天然ガス田について、共同開発に合意したばかり。
中日関係史学会の高海寛氏は「これで日本と中国は防衛分野でも協力しあうという、新しいページを開くことができる。今までにないことだ。これで日本人は中国をよりよく理解できるようになるだろうし、中国の成長を脅威と受け止めなくてもよくなる」と話す。
東シナ海を挟んでこのところ確かに、デタント(緊張緩和)が進んでいた。しかしそれでも、日本艦の中国沖出現が、政治的にデリケートな問題となることに変わりはなかった。日本艦が訪中するなら、湛江のように都会から遠く離れた港に来てもらった方がコントロールしやすいということだろう。しかも湛江ならこれまでも、米国や欧州の海軍艦の寄港を受け入れてきた経験もある。
平和憲法を公式に擁する日本が持つのは海軍ではなく、海上自衛隊だ。そして「さざなみ」は四川大地震の被災者への救援物資を積んで中国にやってきた。
しかし中国には、1930年代から終戦まで続いた占領の苦々しい記憶にしがみついてる、しぶとく強硬な反日派が根強くいる。今回日本からやってきたのは海軍ではなく海上自衛隊だと言われても、そういう反日強硬派にとってそんな表現の違いなどどうでもいいことだ。
四川大地震の発生直後、航空自衛隊の輸送機で被災地に支援物資を緊急輸送するという提案も、多くの中国人の心の古傷を開いてしまったために却下となった。また同様に、日本と台湾が領有権を主張する尖閣諸島(台湾名・釣魚台)近海で、日本の海上保安庁巡視船の追突によって台湾の遊漁船が沈没したとされる事故も、旧来の憎しみを再燃させるきっかけになるかと懸念された。
中国で人気のポータルサイト「Tianya.cn」では今週、「また日本が勝って、欲しいものを手に入れた」という書き込みがあった。中国系サイトの反日的な書き込みを消して回る、政府検閲の厳しい監視をすり抜けて掲載されたものだ。「釣魚台の件はある意味でチャンスだったのに、中国政府は機を逃してしまった」と投稿者は書いている。
かつてフランス租借地の広州湾という名前だった湛江も第2次世界大戦中、日本軍国主義の被害を直接受けている。旧日本軍は1943年2月16日に広州湾に上陸し、4日後に占領したのだ。しかしそれでも現在の湛江市民は、今回の日本艦寄港をあまり気にしていなかった。
「こういう交流は前向きなものだ。私たちは、ただ頭を閉ざしていればいいというものではない」 地元に住むリ・グアングイさんは言う。「それに相手の技術力を見る、いい機会だ」
こと日本に関して、中国の歴史的な怨恨は常に表面のすぐ近くに潜んでいるものだ。しかしさしあたってての心配事というのは、、もっと日常的なものだった。
「戦争中、日本はとても残酷だった。しかしほとんどの日本人はいい人たちだ」というリさんは、1937年12月の南京大虐殺の模様を伝える南京大虐殺紀念館を2度訪れたという。しかしそれでも、「それよりも今はドル安の方が心配だ」とリさん。「そのせいで燃料代がこんなに高くなっているのだから」
追加取材 ベン・ブレイスウェイト(ロンドン)
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(翻訳・加藤祐子)
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