危機にはスーパーヒーローがいれば 「ディックマンと炎の銀行」――フィナンシャル・タイムズ
(フィナンシャル・タイムズ 2008年11月21日初出 翻訳gooニュース) FTアジア編集長デビッド・ピリング
「資本は貨幣だ、資本は商品だ」。カール・マルクスとかいう堅っ苦しい作家が、「資本論」とかいう本でこう書いてるんだって。「資本とは、自らの価値を高めるという神秘的な能力を獲得した。資本は生きた子供を産み落とす。子供でなくても、少なくとも金の卵を産み落として、自己増殖するのだ」とか。
このマルクスとかいうおっさんのことはよく知らないんだけど(だって「Facebook」にアカウントが見つからないから)、おっさんもテレビはもっとちゃんと観た方がいいね。だって父さんのFTを読んでボクなりに理解したんだけど、それによると資本っていうのは、自分で自分の価値を「はい終了〜!」にしちゃう神秘的な能力を獲得したみたいだから。資本ってのが何かをポットンって産み落としてるとしたらさ、それは「卵」なんかじゃないね。もっとピッタリなヤバイ言い方はいくらでもあると思うよ。
とは言ってもボクは「資本論」そのものを読んだわけじゃないよ。こないだ父親と一緒に東京に行ったときに見つけたんだけど、もうすぐ発売されるっていうコミックを日本の子が見せてくれてさ(ちなみに日本ではコミックじゃなくて「マンガ」って言うんだ)。日本人ってさ、みんなマンガに夢中なんだよ。日本の総理大臣でさえ、電話帳みたいに分厚いマンガの本を何冊も読んでるっていうんだから。
なんにしても、このマンガ「資本論」が出たら、東京では行列ができるだろうね。だってあの人たちは、セリフが「ふきだし」に入ってれば何でも読むんだから。おまけにあの人たちはそもそも最初から、資本主義がそんなに好きってわけでもなかったし。ボクの友だちに言わせると、日本人っていうのはモノづくりが大好きなんだって。車とかiPodとか漆塗りの食器とかそんなやつ。でも金から金を作るってのは、あんまり気にくわないんだって。でもそもそも資本主義っていうのは、金から金を作り出すための仕組みだと思うんだけど。っていうか少なくとも本当は、そのはずだったんだけどね。
日本人はホントにマンガのキャラクターが好きなんだよ。アトムとか、カリスマ・マンとか(訳注・「カリスマ・マン」は、母国では冴えないオタク男が来日したとたんカッコ良く変身してしまう金髪男=カリスマ・マンを描いたマンガ。在日欧米人に人気を博した)。
でもこのマルクス・マンガの出版社は、ちょっと外しちゃったと思うな。資本主義をネタにするなら、もっと面白いキャラが色々いるのに。それくらいボクでも知ってる。
たとえば「タープマン」とか。「不良資産救済プログラム(TARP)」とかいうセーフティネットがタープマンの武器だ。タープマンは銀行マン出身の政府役人で、ウォール街のあちこちで摩天楼と摩天楼の間に巨大な「タープ=防水シート」をかけて回って大活躍。古くからの仲間が摩天楼の窓から飛び降りても、タープマンがいるから大丈夫ってわけ。ただ問題もあって、タープマンは肝心の「タープ」をしょっちゅう動かしちゃうんだ。だから結局、飛び降りた銀行マンたちは歩道に頭をぶつけちゃうんだよ。
それから「バブルマン」ってのもいる。連邦準備制度理事会(FRB)のトップだった人で、みんな最初のころは「なんて頭のいい人だ!」って感心してたんだよ。だってこの「バブルマン」が金利をほとんどゼロにしてくれたおかげで、みんなガッポガッポもうけてたんだから。でも急に最悪な展開になって、バブルマンが「私は間違ってたかもしれない」って演説したとたん、みんな手のひら返して「バブルマンひどい!」って大嫌いになっちゃったんだよ。
じゃなかったら、「ディックマン」っていうのもいるね。あだながディック。本名リチャード。彼はある意味で一種のアンチヒーローで、巨大なメガ銀行のトップだったんだよ。でもディック(=間抜け)だから、自分の銀行は絶対に売らないって突っぱねた。おかげで彼の銀行は火車になって炎上しちゃったってわけ。
それからほかに「フラッシュ・ゴードン」もいるよ。またの名をブラウン。ふだんはパッとしない地味な男で、「規制は悪だ、ロンドンには規制がないから最高だ」っていつも言ってた。でも例の金の卵が爆発してドエライことになったら、普段着のキルトを脱ぎ捨ててスーパーヒーローに大変身だ。「だから私は前からいつも言ってたじゃないですか。必ず大変なことになるって」って言いだして、問題解決できるのは自分だけってさ。すごいクールだよね。
でもボクの一番のお気に入りは「メイナードマン」なんだ。ジョン・メイナード・ケインズ。どのストーリーでも問題がおきると大事なところでサッと登場する(どのストーリーでも必ず問題がおきるのはお約束だし)。ヘリコプターとかそういうのに乗ってバババーッて登場して、空からみんなに金を降らせてくれるんだ。それがメイナードマン。だったらいいのにね。そうしたらみんな大喜びするのに。
フィナンシャル・タイムズの本サイトFT.comの英文記事はこちら(登録が必要な場合もあります)。
(翻訳・加藤祐子)
「資本は貨幣だ、資本は商品だ」。カール・マルクスとかいう堅っ苦しい作家が、「資本論」とかいう本でこう書いてるんだって。「資本とは、自らの価値を高めるという神秘的な能力を獲得した。資本は生きた子供を産み落とす。子供でなくても、少なくとも金の卵を産み落として、自己増殖するのだ」とか。
このマルクスとかいうおっさんのことはよく知らないんだけど(だって「Facebook」にアカウントが見つからないから)、おっさんもテレビはもっとちゃんと観た方がいいね。だって父さんのFTを読んでボクなりに理解したんだけど、それによると資本っていうのは、自分で自分の価値を「はい終了〜!」にしちゃう神秘的な能力を獲得したみたいだから。資本ってのが何かをポットンって産み落としてるとしたらさ、それは「卵」なんかじゃないね。もっとピッタリなヤバイ言い方はいくらでもあると思うよ。
とは言ってもボクは「資本論」そのものを読んだわけじゃないよ。こないだ父親と一緒に東京に行ったときに見つけたんだけど、もうすぐ発売されるっていうコミックを日本の子が見せてくれてさ(ちなみに日本ではコミックじゃなくて「マンガ」って言うんだ)。日本人ってさ、みんなマンガに夢中なんだよ。日本の総理大臣でさえ、電話帳みたいに分厚いマンガの本を何冊も読んでるっていうんだから。
なんにしても、このマンガ「資本論」が出たら、東京では行列ができるだろうね。だってあの人たちは、セリフが「ふきだし」に入ってれば何でも読むんだから。おまけにあの人たちはそもそも最初から、資本主義がそんなに好きってわけでもなかったし。ボクの友だちに言わせると、日本人っていうのはモノづくりが大好きなんだって。車とかiPodとか漆塗りの食器とかそんなやつ。でも金から金を作るってのは、あんまり気にくわないんだって。でもそもそも資本主義っていうのは、金から金を作り出すための仕組みだと思うんだけど。っていうか少なくとも本当は、そのはずだったんだけどね。
日本人はホントにマンガのキャラクターが好きなんだよ。アトムとか、カリスマ・マンとか(訳注・「カリスマ・マン」は、母国では冴えないオタク男が来日したとたんカッコ良く変身してしまう金髪男=カリスマ・マンを描いたマンガ。在日欧米人に人気を博した)。
でもこのマルクス・マンガの出版社は、ちょっと外しちゃったと思うな。資本主義をネタにするなら、もっと面白いキャラが色々いるのに。それくらいボクでも知ってる。
たとえば「タープマン」とか。「不良資産救済プログラム(TARP)」とかいうセーフティネットがタープマンの武器だ。タープマンは銀行マン出身の政府役人で、ウォール街のあちこちで摩天楼と摩天楼の間に巨大な「タープ=防水シート」をかけて回って大活躍。古くからの仲間が摩天楼の窓から飛び降りても、タープマンがいるから大丈夫ってわけ。ただ問題もあって、タープマンは肝心の「タープ」をしょっちゅう動かしちゃうんだ。だから結局、飛び降りた銀行マンたちは歩道に頭をぶつけちゃうんだよ。
それから「バブルマン」ってのもいる。連邦準備制度理事会(FRB)のトップだった人で、みんな最初のころは「なんて頭のいい人だ!」って感心してたんだよ。だってこの「バブルマン」が金利をほとんどゼロにしてくれたおかげで、みんなガッポガッポもうけてたんだから。でも急に最悪な展開になって、バブルマンが「私は間違ってたかもしれない」って演説したとたん、みんな手のひら返して「バブルマンひどい!」って大嫌いになっちゃったんだよ。
じゃなかったら、「ディックマン」っていうのもいるね。あだながディック。本名リチャード。彼はある意味で一種のアンチヒーローで、巨大なメガ銀行のトップだったんだよ。でもディック(=間抜け)だから、自分の銀行は絶対に売らないって突っぱねた。おかげで彼の銀行は火車になって炎上しちゃったってわけ。
それからほかに「フラッシュ・ゴードン」もいるよ。またの名をブラウン。ふだんはパッとしない地味な男で、「規制は悪だ、ロンドンには規制がないから最高だ」っていつも言ってた。でも例の金の卵が爆発してドエライことになったら、普段着のキルトを脱ぎ捨ててスーパーヒーローに大変身だ。「だから私は前からいつも言ってたじゃないですか。必ず大変なことになるって」って言いだして、問題解決できるのは自分だけってさ。すごいクールだよね。
でもボクの一番のお気に入りは「メイナードマン」なんだ。ジョン・メイナード・ケインズ。どのストーリーでも問題がおきると大事なところでサッと登場する(どのストーリーでも必ず問題がおきるのはお約束だし)。ヘリコプターとかそういうのに乗ってバババーッて登場して、空からみんなに金を降らせてくれるんだ。それがメイナードマン。だったらいいのにね。そうしたらみんな大喜びするのに。
フィナンシャル・タイムズの本サイトFT.comの英文記事はこちら(登録が必要な場合もあります)。
(翻訳・加藤祐子)
From the Financial Times © The Financial Times Limited [2012]. All Rights Reserved. Users may not copy, email, redistribute, modify, edit, abstract, archive or create derivative works of this article. NTT Resonant is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
最新のフィナンシャル・タイムズ翻訳記事
- 日本産業の再活性化、政治テーマとして重要度増す(フィナンシャル・タイムズ) 02月15日 10:15
- 放射能リスクについて合意なく 福島の事故であらわになる分断(フィナンシャル・タイムズ) 11月15日 11:50
- オリンパスの偽りは名誉を損ねた(フィナンシャル・タイムズ) 11月11日 12:00
- オリンパスのオリンポス級な壮大なる非論理 FT社説(フィナンシャル・タイムズ) 11月09日 10:30
- 日本の平凡な男が再建を目指す 野田首相インタビュー(フィナンシャル・タイムズ) 11月01日 12:30
- 「脱北者は3代にわたり処刑」北が指示…米報道(読売新聞) 2月14日 22:39
- 「偽物天国」に変化 中国消費者に本物志向(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版) 2月15日 10:00
- 金総書記を大元帥に=誕生日前に偶像化―北朝鮮(時事通信) 2月15日 10:03
- 「議員天国」イタリアのあきれた実態(ニューズウィーク日本版) 2月12日 14:01
- 総書記4人目の夫人・金オク氏らに金正日勲章(読売新聞) 2月15日 10:21
- 再選にらみ厳しい姿勢=米大統領、中国副主席に(時事通信) 2月15日 12:03
- 習・オバマ会談に抗議活動 余傑氏らチベット弾圧非難(朝日新聞) 2月15日 11:52
- オバマ大統領、習近平氏と会談 人権・貿易問題に言及(朝日新聞) 2月15日 11:08
- 総書記4人目の夫人・金オク氏らに金正日勲章(読売新聞) 2月15日 10:21
- 対話と意思疎通強化で合意=中国副主席、米国防長官と会談(時事通信) 2月15日 10:03

















