「大統領、起きて下さい」 オバマ氏は口八丁で外交の地雷原を行く?

フィナンシャル・タイムズ2009年9月24日(木)12:04


(フィナンシャル・タイムズ 2009年9月23日初出 翻訳gooニュース) ロバート・シュリムスリー

フィナンシャル・タイムズの編集長が想像する、あったかもなかったかもしれないこんなやりとり。

――午前3時。ホワイトハウスで電話が鳴っている。

「大統領、お話が」

「いま何時だ」

「午前3時です」

「何があった?」

「みんなでニューヨーク・タイムズを見たところです。大統領、アフガニスタンの戦略変更を検討されているそうで」

「朝まで待てないのか? 午前3時の電話は自分がとるって、ヒラリーが言ってたじゃないか」

「大統領、これでは現地司令官を軽んじることになります。マクリスタル将軍は少なくとも兵2万人の増派を求めているのですから」

「マクリスタル将軍が兵士2万人の追加を求めていると言われているのは知ってる。でも今というこの時、この日に、追加の兵2万人はマクリスタル将軍を求めているだろうか。政策を点検するのは賢明だったと考える。時間をかけて選択肢を検討するのは」

「閣下、大統領就任にあたって、アフガニスタンをこそ、外交政策の主要課題にするとおっしゃったじゃないですか。はっきり申し上げますが、うまくいっていません」

「深刻な事態だって言うんだな。演説をした方がいいかもしれない」

「そうですね。演説で、新しい戦略アプローチを詳しく説明するわけですね」

「いや、それについてはもう少し色々な政策提言ペーパーを検討したいと思う。演説と言ったのは、もっと漠然とした内容で、アフガニスタンの善良なる良心に訴えかけようかと思うんだ。たとえば6年前までは、カブールのバーに女性が入っても客扱いしてもらえなかったのに、今となってはカルザイ大統領のおかげで、ヘルマンド州の羊さえ選挙で投票できるようになったじゃないか、とか。そういうことを。やあ、やっと目が覚めたぞ。ほかには?」

「ミサイル防衛システムを止めるという決定についてですが」

「そもそも存在しない脅威から我々を守ってくれなかったシステムのことだな」


「それはベルリン演説の一節ですか?」

「いや、デビッド・レターマンのトーク番組で使った台詞だ。最新情報はちゃんと追いかけてないとダメだぞ」

「わかりました。ミサイル防衛の配備を一方的に止めると宣言しただけで、ロシア側から何も交換条件を引き出していないという懸念があります。ロシアに、もっとやりたいようにやれと我々が青信号を出したと、そう受け止められかねないと。大統領、アメリカは誰かの言いなりにはなるほどお手軽ではないと、きちんと示す必要があります」

「『われわれはお手軽ではない』と議会演説してもいいぞ……。『我々は友好の手を差し伸べた。しかし世界は知っておくべきだ。その友好の掌はいつでも固い拳骨に形を変えることもあるのだと。友好の掌と怒りの拳は、同じ腕の両面の顔なのだから』って」

「それでうまくいくとは思えません」

「そうだな。同じ腕の同じ側だし。ラーム(エマニュエル首席補佐官)を呼んでくれるか。防衛政策演説に使える警句のオプションを頭出ししたペーパーが必要だって」


「いえ、そういうことではなく。演説をしてもうまくいくとは思えないのです。それよりも、何かを強く叩く必要があります」

「ああ。CNBCのインタビューの時みたいに。ハエをバシッとやったあれね。YouTubeで観た? すごかっただろ。完全にやっつけたからなあ」

「大統領、あなたが、簡単に言いなりになるチョロい奴だと思われ始めているのです。イスラエルのネタニヤフ首相は、あなたに入植政策を止めろと言われても無視しましたし。ロシアは何の見返りも払わないのに、あなたは一方的にミサイル防衛で譲歩しましたし。ましてや気候変動について中国にさえ、してやられている状態です」

「ちょっと待った。ネタニヤフとアッバスからは合意を引き出したぞ」


「そうなんですか?」

「ああ。一緒に写真を撮ると合意してくれた」

「ああ……」

「きっかけにはなるだろう。中東(ミドル・イースト)は、互いに関わり合っていく新時代を受け止めなくてはならない。僕は2人に言ったんだ。アッパー・ミドル・イーストもロウアー・ミドル・イーストもない。みんながミドルに集まるイーストしかないんだって」

(訳注・「アッパー・ミドル・イースト」云々は「中東上部も中東下部もない」とも訳せるが、マンハッタンの「アッパー・イースト」「ロウアー・イースト」など地区の呼び方にもひっかけている。そしてもちろん、オバマ氏の有名な「赤いアメリカも青いアメリカもない」演説にもひっかけている)

「おっしゃる意味がよく分からないのですが」

「僕もだ。さて次は地球温暖化について。我々は中国よりも前を進むぞ」

「そうなんですか?」

「胡主席は『大幅な削減』を約束した。『大幅』よりも大きいのは何だ? 『非常に大幅』? 『きわめて大きな』というのは『大幅』より大きいのかな?」

「よく分かりません」

「『相当に』はどうだろう?」

「『相当』はいいですね」

「よし。じゃあ、そうしよう。『相当に削減する』と約束するよ。なぜなら今このときに計画しなければ、明日になってからやらざるを得なくなるからだ」

「分かります。『今という激しい要請』をにおわせるわけですね」

「いや、むしろ、後でっていう激しい要請を考えてたんだが」

「イランに対しても、弱腰に見えてしまっています」

「イラン問題の会議が控えているし、そこで、イランのウラン濃縮問題を解決しようと思ってるよ」

「素晴らしいです。どうやるんですか?」

「やらせてやるんだよ」

「本当に?」

「まあ、たぶんね。というか、それについての政策提言ペーパーがもっとたくさん欲しいんだがなあ。なぜなら我々は、地球上の70パーセントが自らのウランを濃縮するような世界に生きているからだ。こうした不公平があるからこそ、そこに向かって今この時、この日に、この電話で、この構文で、我々はもうこれ以上目を閉ざしたり、背を向けるわけにはいかないのだ。我々はメガネをかけて、肩越しに後ろを覗き込まなくてはならない。そうすることによって我々は初めて、仇敵を抱きしめて新しい世界を築き上げることができるのだ」

「はい、分かりました。次にアラスカの…」

「ロシアにくれてやれ」

「そういう質問ではないのですが」

「あ、そう」

「朝食をお持ちしますか?」

「どういう選択肢があるのか、教えてくれないか」

 


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(翻訳・加藤祐子)

 

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