原子力の時代終了ではなく、復活させるべき時 FT社説

フィナンシャル・タイムズ(翻訳gooニュース)2011年4月26日(火)18:06
(フィナンシャル・タイムズ 2011年4月24日初出 翻訳gooニュース)

今週はまたしても、原子力産業にとってはまた良くない1週間になる。日本の福島第一原発から放射性物質の漏洩が続いている上に、26日はウクライナのチェルノブイリ原発事故から25年。反原発活動家たちは勢いづいている。例えば週末には9人のノーベル平和賞受賞者が、世界中の人たちが「今より平和で安全な状態で暮らせる」よう、原発の段階的廃止を求める書簡を各国政府首脳に送っていた。

しかし現実的には、原子力のない世界は、原子力のある世界よりも安全なわけではない。世界中の電力の14%は原発で作られている。エネルギー市場にひどい不安定や電力不足を引き起こすリスクを伴わない形で、化石燃料や代替可能エネルギーでこの不足分を埋めるのは、当分は不可能だ。単純に言えば、われわれは多様なエネルギーな供給源を必要としていて、その中には原子力も含まれる。

こと安全性について原子力は否応なく、ほかのエネルギー源とは異なる基準で判断される。原子力の時代が広島で爆発的に始まって以来、人間は核分裂の破壊力を恐れ、音もなく静かに迫りくる放射線汚染を恐れてきた。

しかし、原子力の時代が始まってから原子力エネルギーで死亡ないしは負傷した人の数は、鉱石採掘から燃料精製、発電所による放射線汚染に至るまで、石炭や石油や天然ガスを燃やしたことによる死傷者数よりもケタ違いに少ないのだ。仮に、炭素燃料がもたらす気候変動による2次的影響(これは論争の的となっている)を無視したとしても、同様だ。

政治家は、原子力を恐れる国民感情を尊重しなくてはならない。チェルノブイリの放射性降下物による長期的な影響には、どこかおぞましいものがある。たとえば現場から2000キロ離れたイギリスの一部地域では今も、農家が羊を自由に移動させられない。そして悲しいことに、福島第一原発から数キロ圏内に住む人たちはこれから何年も、元通りの生活には戻れないかもしれないのだ。

ゆえに、世界各国の政府が福島の事故に対応して原発増設計画を一時停止し、既存の原子炉の安全性を再確認したのは正しかった。ただし、巨大地震に津波という特殊状況が北ヨーロッパで起きる可能性はほとんどないのに、ドイツが原発7基の一時停止を命じたのは、行き過ぎだった。

福島で起きた事態を顧みるに、原発施設の確認作業は形ばかりのジェスチャーではなく、中身のある本当の点検作業でなくてはならない。しかしだからといって、政治家がエネルギー政策にとって不可欠だが難しい決断をしなくて済むよう、いたずらに確認作業を長引かせてはならない。

不幸なことに、今の原子力発電のほとんどの設備は古いままだ。なぜかというと1979年のスリーマイル島事故に続いたチェルノブイリ事故のせいで、新規原子炉の承認と建設が何年も凍結されたからだ。世界の原発施設の相当数は、20世紀半ばの防衛産業で生まれた設計に基づき20年以上前に建設されたものだ。

アレバの欧州加圧水型炉(EPR)やウェスティングハウスの軽水炉AP1000など、現在の「第3世代」原子炉は、受動冷却システムなどの安全装置を備えた設計になっている。こうした装置があれば、津波の後に福島第一原発を破壊した深刻な温度上昇をほぼ確実に防げたはずだ。

しかしこうした設計は完璧からはほど遠く、将来に向けてもっと優れた原子炉(例えば、ウラン燃料ではなくトリウム燃料を使う原子炉や、地下深くで稼働する原子炉など)を開発するには、さらなる研究が必要だ。

そして言うまでもなく、原子炉の安全性以外にも対応しなくてはならない問題がある。放射性廃棄物の長期的な貯蔵や処分は、その最たるものだ。

チェルノブイリが過去四半世紀にわたり原子力技術の発展を凍結してきたと同じくらい効果的に、フクシマが今後の技術発展を凍結させるなら、それこそが世界に対してひどい遺産を残すことになる。


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(翻訳・加藤祐子)

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