ロムニー氏の深刻な判断ミス
(フィナンシャル・タイムズ 2012年9月12日初出 翻訳gooニュース) ワシントン=エドワード・ルース
政治家のイメージを決定してしまう瞬間というものがある。後からはもう変更できないほど強烈に。もしかするとあれが、ミット・ロムニーにとってのその瞬間だったのかもしれない。
アメリカの外交官が11日夜に襲われた。それに対して共和党の大統領候補は実にてきぱきと、とげとげしい断定調で反応した。そしてその姿は、なぜロムニー氏が真の意味での支持者を獲得できずにいるのか、端的に映し出していた。
12日朝にはヒラリー・クリントン国務長官が、クリス・スティーブンズ駐リビア大使のほか、アメリカ人3人の殺害を非難する、沈痛な声明を読み上げた。その30分後にはオバマ大統領も同じように声明を読み上げた。ふたりとも主に、スティーブンズ氏の悲劇的な死について語っていた。
この間にロムニー氏はあからさまに政治的なねらいの記者会見をねじ込み、オバマ政権の対応を「恥ずべきものだ」と批判。政権は「決してアメリカのやることについて、謝ってはならない」と述べた。ロムニー氏が口にした追悼の言葉は短く、義務的に言っているという印象だった。ロムニー氏の主張の根拠は、エジプトの反米抗議をオバマ氏がなだめようとしたという言い分で、内容的に無理があるものだった(実際に何があったのかというと、カイロの米大使館が大使館前の抗議行動を鎮静しようと独自にコメントを発したのであって、それはホワイトハウスの了承を得ていなかった)。
今回の大統領選はこれまでほとんど国内テーマのみで繰り広げられてきた。11日夜の出来事には、選挙戦に外交政策という別の切り口を投入したという以上の意味合いがある。2人の候補がもっと互角だったらそういう展開もあったかもしれないが、11日夜の出来事によって事態の流れは「国家指導者としての威厳が求められているのに選挙戦のことだけを考えたロムニー氏」という物語に変わってしまった。ロムニー氏自身によって。どうして彼はあんな反応をしたのか。この当惑は、そうはすぐに消えそうにない。
今回のロムニー発言を早くも、2008年9月のジョン・マケイン発言と比べている人たちもいる。共和党の大統領候補だったマケイン氏は金融危機の発生を受けて、選挙戦を一時中止しようと呼びかけた。「ノー・ドラマ・オバマ」が見せた沈着冷静ぶりに比べて、みっともないほど対照的で、マケイン氏の戦いは結局このあと立ち直れなかった。
12日のオバマ、ロムニー両候補の対比も、妙なほどこれとよく似ていた。大統領候補らしい会見場を急ぎ設定したにもかかわらず、ロムニー氏はかつてないほど、大統領らしく見えなかった。下手をすると選挙の行方はこのままロムニー氏の手からこぼれ落ちていってしまいそうだ。
何より疑問なのは、ロムニー氏の判断力だ。ロムニー陣営が最初にコメントを発したのは11日夜、カイロの大使館が襲撃された後だ。スティーブンズ大使の死が発表されたのは、その数時間後。ロムニー陣営はその際、コメントを軌道修正する代わりに記者会見を開いて最初の主張を強調し、自分たちを追い込んだ。オバマ氏は民意を読み違えているとロムニー氏は言おうとしたのだが、その批判はブーメランのように言った当人に戻っていった。
第2に、ロムニー氏は実にあっさり自分のそれまでの主張を捨ててしまう人だと、その姿勢があらわになった。世界大戦でも起きない限り、2012年の大統領選は経済の話題で独占され続ける。そして経済以外のあらゆるテーマで、オバマ氏の世論調査結果はロムニー氏を上回っている。国家安全保障についても同様だ。ロムニー氏をホワイトハウスへと導く唯一の道は、フロリダやオハイオ経由なのだ。エルサレム経由ではない。
第3にロムニー氏は、国民の間の空気を読み損ねた。もしかすると2012年は、安全保障上の危機が共和党候補でなく民主党候補に有利に働く、久々の大統領選となるかもしれない。米シカゴ外交問題評議会による最近の世論調査では、イラク戦争は戦う価値がない戦争だったと、アメリカ人の3分の2が答えている。しかしロムニー氏は、アメリカ国民がまたジョージ・W・ブッシュを選びたがっていると考えているようだ。2012年の気分がどんなものであるにせよ、ロムニー氏のその判断はかなりまずい。
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(翻訳・加藤祐子)
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