「とにかくバットに当ててやろう」

 8日、ロッテとのCSファーストステージの初戦。ソフトバンクに勝利をもたらしたのは今宮健太のバットだった。

 同点で迎えた8回裏、無死満塁のチャンスを作ると7番・福田秀平は初球を捕邪飛。1死満塁と変わった場面で打席に入った今宮は、2ボール2ストライクからの6球目を振り抜くと、打球は前進守備の三遊間を抜けた。二塁走者・川島慶三の好走塁も手伝って、貴重な勝ち越しの2点タイムリー。今宮は「もう必死でした」と、その打席を振り返る。

「追い込まれて何とかバットに当てればいいだろう、と。最後の最後に一番甘い球が来て仕留められました。あそこで、まっすぐを前に飛ばそうと思っていたらダメだったと思います。とにかくバットに当ててやろうという気持ちだけ」

 シーズン終盤に右肘に違和感が生じた。原因は関節内遊離体、いわゆる“ねずみ”だ。千葉への遠征中だったチームを離れ、単身で福岡に戻って診察を受けた。その福岡で日本ハムの優勝の瞬間を迎えた。「優勝できなかった瞬間にチームにいれなかったのがショックだったし、シーズンの最後までいれなかったのが悔しかった」と今宮。つい1週間前も「オレ、CSに出れるんかな」と思ったという。

「(CS初戦から)使っていただいて、結果が出て良かったです。これで打ってなかったら戻った意味がないと思うので。監督・コーチが抹消せずに待ってくれたことにすごく感謝していますし、仕上げてくれたトレーナーさんにも感謝ですね」

 工藤監督は、登録抹消せずに待ったことを「彼は守備の要だから」と語ったが、この日はバットでも大きな仕事をやり遂げた。「今日は内川さんが流れを変えてくれた」と、一緒にお立ち台に上がった大分の先輩を持ち上げながらも「チームのみんなが一丸となって戦えたと思います」と、チームの勝利を心から喜んだ。

藤浦一都●文 text by Kazuto Fujiura