文=在英ジャーナリスト
小林恭子

 「差別をなくそう」。筆者もこれにはもちろん同意なのだが、どこまでを差別的発言・行動と見なして、何らかの対策を取るべきかの見極めが難しい時がある。

 最近、英国のあるテレビ番組の紹介が性差別として問題視され、放送局が一部を差し替える事件が起きた。


アイシングの色に視聴者からクレーム

 英BBCテレビは8月末からベイキングのスキルを競う超人気番組「ザ・グレート・ブリティッシュ・ベイク・オフ」の放送を開始した。ベイキングの腕に自信がある視聴者から選ばれた12人が毎週、パンやクッキー、ケーキなどの焼き菓子を作り、二人の料理専門家にジャッジしてもらう番組だ。最後まで手に汗握る競争が続き、勝ち抜いた一人が優勝者となる。

 放送前の宣伝として、BBCは出演者がアイシング用クリームを容器でかき回し、しゃもじを持ち上げる姿を撮影し、ソーシャルメディアなどを通じて拡散した。このなかで男性出演者が抱えている容器に入ったアイシングがブルー、女性がピンクだったことで視聴者からクレームが来た。男性だからブルー、女性だからピンクという設定が性差別的だというのだ。

 ツイッター上で批判が高まり、野党議員さえも「女性にはピンク、男性にはブルーと言うのは止めたほうがいいな」とツイート。BBCは間もなくしてアイシングの色だけを変えた写真を制作し、ツイートした。男性のアイシングは黄緑や緑、オレンジ色で、女性はピンクのほかに紫も入っていた。

 ここまで敏感になるなんて、行き過ぎだ! そんな声が日本では出るだろう。

 確かにそうなのだが、性によって社会における役柄が固定されてしまえば、その人の将来の可能性を縮めてしまうことにもつながる。ひいては職場での性差別(同じ職でも女性の給与が低いなど)にもつながりかねない……と敏感派は考えるわけである。

 そして、あからさまな差別的発言でも、実際に体験した人が声をあげなければ、多くの人に知られないこともある。