ギャラクシー賞月間賞:
NHKスペシャル「ある文民警察官の死〜カンボジアPKO 23年目の告白〜」

8月13日放送
21:00〜21:49
日本放送協会

 23年前、世界平和の実現に尽くしたいという思いでカンボジアのPKO(国連平和維持活動)に参加した日本人警察官が銃撃され亡くなった。戦闘が停止されていたはずの現場で一体何が起きていたのか、なぜ犠牲者が出てしまったのか。これまで語られることのなかった事件の全貌をつまびらかにしたドキュメンタリーとして、多くの委員から高く評価された。

 殉職した警察官の同僚や上司たちは、仲間の命を守ることができなかった無念さをずっと抱え続けてきた。生き残った隊員たちが今回初めてカメラの前で自らの体験を生々しく語っている。彼らは、活動地域として指定された村に着いたとき、通信手段はおろか電気さえまともにない状況に愕然としたという。さらにポル・ポト派が武装解除を拒否し、停戦協定はすでに有名無実化していたなかで、ある隊員は「自らの身の安全を守るために、ひそかに自動小銃を独自に購入していた」と、今回初めて明らかにした。番組ではこうした証言に加えて、隊員たちが綴った日記や手記、現地で撮影された未公開映像、襲撃された状況を克明に再現したCGなど、説得力ある素材を巧みに重ね合わせながら、派遣先の極度に緊張した状況や隊員たちのとまどい、苦悩を如実に描き出している。

 一方、PKO参加を国策として進めてきた当時の政府関係者へのインタビューも対比的に紹介されている。「世界平和のために日本も人的貢献が必要だった」と語る元外務省幹部や、「あくまで停戦合意は成立しており派遣の前提は崩れていなかった」と当時を振り返る元官房長官、治安情報を秘密指定で外務省に送っていた元カンボジア大使は「事態の深刻さが必要以上に大きく伝わると国益を損なうと考えていた」ことを明らかにしている。

 戦後日本の安全保障政策が大きく転換され、現在は「駆けつけ警護」などの新たな任務も求められている。23年前に起きたPKOでの襲撃事件から私たちは何を学ぶべきなのか。日本の国際貢献のあり方を考えさせるタイムリーな秀作である。(小泉世津子)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。