2015年6月、E3にて突如出展されたカプコンのVRホラー『KITCHEN』。技術デモでありながらあまりの恐ろしさに大きな反響を呼びました。ベールに包まれたままの今作が、10月13日に「PlayStation VR」と同時に発売されることがついに決定。『バイオハザード7 レジデントイービル』へと繋がってゆく今作の魅力や発売の経緯、そして気になる本編について、プロデューサーを務めたジェームズ・バンス氏にお話を伺ってきました。

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――よろしくお願いします。まずは自己紹介からお願いします。

ジェームズ・バンス氏(以下バンス):カプコンで『バイオハザード7』のプロデューサーを務めていますバンスと申します。『KITCHEN』ではメインプロデューサーを務めさせていただきました。


――『KITCHEN』が販売されることになった経緯についてお聞かせください。

バンス氏:『KITCHEN』はPS VRと同じ10月13日に発売で、ジャンルは「サバイバルホラー」ではなく「ホラー」となります。臨死体験が体験できるというVRならではの作品となっていると思います。今作は2015年のE3でこっそりと出しましたが、予想以上の反響をいただき、部分対応を検討していた『バイオハザード7』の全てをVRで体験きるように方針を変更する契機になりました。本編との時間関係は明らかにしていませんが、『ビギニングアワー』とお話が繋がっているかもしれません。「東京ゲームショウ2016」でのVRでの体験は、私たちの想像以上にご好評をいただいたのですが、会場に来てもVRを体験できない方が多くなってしまいました。PSVRを購入される方限定にはなりますが、『KITCHEN』を通して『バイオハザード7』のVRの体験はこういうものだと感じてもらいたくてリリースの運びとなりました。

――国内での『KITCHEN』の販売形態について。無料配布でなく販売になった理由はなぜでしょうか。

バンス氏:本作は、北米ではPS VRを購入すると付属しているディスクの中に収録されています。海外では無料なのに、なぜ国内は有料であるのか少し説明させてください。『KITCHEN』はCERO:Z(18才以上対象)というレーティング区分です。Z区分タイトルは、よりしっかりした年齢認証を行う、と言った観点からクレジットカードの利用が必須となっており、無料体験版としての配布ができません。D区分へ表現を変更すると言う選択もありましたが、プレイ体験が大きく変わってしまう為、今回は少額(93円+消費税)ではありますが有料配信とさせていただきました。

――『KITCHEN』はSteam VRなどPCや他機種での展開はないのでしょうか。

バンス氏:PS VRでの技術デモですので、それはありません。

――「ビギニングアワー」のVR対応はないのでしょうか。

バンス氏:ノーコメントです(笑)。本編もフルVRに対応していますので、技術的には可能であるとだけしか今は言えませんね。


――『KITCHEN』の登場キャラクターのモデルはカプコンの社員だと聞いていますが。

バンス氏:クリエイターとして表に出てきている人ではなく、ローカライズ担当のスタッフが登場してます。ネットなどではVRに対応させるために『バイオハザード7』を一人称視点にしたのではないかというコメントも見かけるのですが、それは事実ではありません。現代のゲームファンがどのようなゲーム性でホラー体験をするのが一番怖いかを考えた結果、一人称視点という形になったのです。それがたまたまVRと相性が良かったので順序が逆ですね。また、REエンジンはフルHDの60fpsに対応できており、VR対応が可能なポテンシャルを持っていたという事もあります。ちょうど家庭用のVRも注目が高まってきていた時期でもあり『バイオハザード7』の開発途中で検証として『KITCHEN』を作り、その反響を受けて本編でもVR対応することが決まりました。

――先日アップデートした『ビギニングアワー』について。鍵や弾丸などさらなる謎が増えていましたが、今後もアップデートがあるということでしょうか。

バンス氏:なんとも言えません(笑)。『バイオハザード』にとって欠かせない要素として「ホラー体験」「探索」「アイテムの管理」そして「戦闘」がありますが、現在の『ビギニングアワー』は主に「ホラー体験」を提供するためのものなのです。今後は他の要素もみなさんに体験していただけるかもしれませんね。

――『ビギニングアワー』が発表された際、これまでの『バイオハザード』シリーズとは大きく雰囲気が違っていたため、世界観を一新したリブート作なのではないかという声が上がっています。『バイオハザード7』は、「1」から「6」までと繋がった世界であると考えても問題ないのでしょうか。

バンス氏:そうです。時間軸としては「6」の後で、同じ世界観となっています。まだ『バイオ』らしい部分を深くお見せしてはいないのですが、本編をプレイしていただければ「確かにバイオハザードだ」と感じることができると自信を持って言えます。一人称視点への変更やこれまでとは異なる敵のキャラクター性など、一新された部分も数多くあります。

――ベーカー一家はガナードやB.O.Wと比べて非常に知性が高いようですが、これはどのような意図なのでしょうか。

バンス氏:今までのゾンビとの戦いも楽しいのですが、悪意を持った、人間らしい相手と対するのも新鮮で怖ろしくて面白いと思っています。東京ゲームショウ2016で行った『ランタン』のVR体験でも、クレイジーな家族と一緒に食事をさせられるという体験については非常に良い反応をいただいていますので、今後のインターアクションも期待できるかもしれませんよ。

――「ビギニングアワー」のロードアイコンは磁気テープがモチーフになっていますが、本編でもビデオテープなどが重要なアイテムとなるということですか。

バンス氏:『バイオハザード7』は、アナログチックな要素が登場する世界観にしています。私たちの生活にあるような現代的なものに囲まれていると安心感が生まれてしまうので、ゲームの環境の中はプレイヤーが知っている世界とはちょっと異なったものにしており、不安にさせるようにしています。70年代や80年代の雰囲気を入れているのはそのためです。『KITCHEN』では冷蔵庫やオーブンなども昔のもので統一されているんですよ。


――「グロテスクVer.」と通常版ではセーブデータの共用は可能なのでしょうか。

バンス氏:基本的に別のゲームとお考えください。ですので、セーブデータの共用はできません。

――初代『バイオハザード』はジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」三部作に非常に強く影響を受けていたように感じました。今作もインスピレーションを強く受けた作品はあるのでしょうか。

バンス氏:『バイオハザード7』には、たくさんのホラー映画のリスペクトを詰め込んでいます。ただ、様々なところから影響を受けながらも『バイオハザード』らしさを忘れないことは心がけています。最近ではインディーズ系のホラーゲームも多くある中で、『バイオハザード7』にしかない要素や従来のシリーズ作らしい要素もしっかりとあるので、十分に楽しんでいただけると思います。

――TGSでのVR版『ランタン』は日本語ボイスでしたが、シリーズのナンバリングタイトルで最初から日本語音声を実装しているのは初めてになるのでは。

バンス氏:日本語音声に対応していた『バイオハザード リベレーションズ』は、私たちにとっては『コードベロニカ』と同様にナンバリング作と同じ扱いなんです。『6』でもDLCとして日本語を入れており、いずれも好評でしたので今作にも入れようという話になりました。開発部内で入れるかどうかの検討はなく、最初から入れよう、と。タイトルの規模によってはどれだけの言語をローカライゼーションに対応させるか検討しますが、AAAタイトルは出来るだけ多くの言語に対応させるという方針が社内にはあります。今回はボイスが6言語、テキストは13言語に対応しており、初めてアラビア語のテキストにも対応しています。

――国内版でも好きな言語の吹き替えや字幕を選ぶことができるのでしょうか。

バンス氏:できます。そこは『バイオハザード リベレーションズ』と同じですね。


――『ランタン』のVRモードは隙間からのぞき込めるといった新しい楽しみ方ができましたが、本編でのコンバット要素ではVR独自の楽しみ方はあるのでしょうか。

バンス氏:基本的には、通常モードとVRモードのプレイ内容自体は一緒ですが、没入感が違うので印象は全く異なるでしょうね。VRで気持ち良く遊べるように様々な調整を行っています。

――オプションの項目はいくつか用意されるのでしょうか。

バンス氏:歩く速さや回転の速さ、見える範囲などが選択できます。研究を行った上で一番ベストであるとした基本設定はありますが、VRへの適応は人それぞれですので、オプションで選択できるようにしています。今作は、過去作に比べて距離感が近く感じると言われているのですが、VRで体験するとさらに距離感を近く感じることができます。それによって戦闘の怖さは変わってくるかもしれません。VRの検証で開発が始まった『KITCHEN』も、距離感を利用して刃物を突きつけられるという恐怖を演出しています。本編にもそのような要素はありますが、フルサイズのゲームですので、他にも多くの要素がありますよ。

――確かに、VRだとオブジェクトをさらに近くで見れますね。

バンス氏:フォトスキャンの技術を多く取り入れていますので、その繊細さを確認してもらえるのではないでしょうか。写実的でありながらもこのゲーム特有のホラー的なライティングの調整が行われているところにも注目してほしいです。

――VRモードから通常のテレビへの切り替えは、ボタンひとつでできるものなのでしょうか。

バンス氏:そうですね。メニューから切り替えられるようになっています。

――『バイオハザード5』では対応していたPS Moveですが、今作での対応は予定されているのでしょうか。

バンス氏:予定はないです。VRでもコントローラーで遊んでいただく形となります。

――『バイオハザード7』のボリュームはどれくらいのプレイ時間を予想したものになっているのでしょう。

バンス氏:けっこうボリューミーです(笑)。『バイオハザード7』は「狭く深く」をキーワードにしていますので、少なくとも『バイオ6』のキャンペーンのようなアプローチではありません。一般的なAAAタイトルレベルの長さであると考えてもらえれば。

――繰り返し遊べるものでしょうか。

バンス氏:初プレイ時のクオリティを確保したいということが今作の情報が出にくい要因としてありますが、周回プレイへの工夫も十分に行っていますので楽しみにしていてください。


――『バイオハザード7』のパッケージのビジュアルが先日公開されましたが、これまでの、キャラクターを押し出したものとは異なっていました。あのビジュアルにはどういった狙いがあるのでしょうか。

バンス氏:今回は一人称視点になることによって、キャラクターに設定はあるもののプレイヤー自身が主人公となります。主人公キャラクターを見ながらのプレイだったのが、一人称視点になることでより一層恐怖を感じられるということもあります。歴代のシリーズのように、登場キャラクターをテーマにしたゲームデザインではないのです。あのパッケージデザインには、いろんなヒントが含まれていますよ。クリアしてからもう一度見ると、腑に落ちる部分が多いと思います。

――今回の敵はベーカー一家だけではない?

バンス氏:彼らが敵と決まったわけではありませんが(笑)。戦闘も重要な要素ですので、そのバラエティ性もきちんと用意しています。現段階での情報が全てではない、ということだけは強調したいですね。

――FPSが苦手なプレイヤーや過去の『バイオ』シリーズをプレイしていないプレイヤーでも遊びやすいような仕組みは用意されているのでしょうか。

バンス氏:現在のゲーマーはFPSに馴染みがあると思いますし、操作も一般的なFPSタイトルのものに沿っています。直感的に遊べるようになっていると思います。もちろん、シリーズ作未プレイでも楽しんで貰えると思います。

――難易度は海外版と国内版で違いはあるのでしょうか。

バンス氏:難易度の違いはないですね。


――発売後のDLCの計画については。

バンス氏:予定はあります。すでに予約特典として用意しているものもありますね。

――予約特典DLCの「Survival Pack: Shotgun Set」や「Survival Pack: Recovery Set」のような補助アイテムを、課金コンテンツとして販売する予定はあるのでしょうか。

バンス氏:補助アイテムでの課金要素は今作には一切ありません。

――開発は順調と伺いましたが、手応えはいかがでしょうか。

バンス氏:最終調整に入ったという段階です。今回開発されたREエンジンのメリットは、アセットベースのエンジンというところがありますので開発チームは納得できる恐怖とエンターテインメントを実現できるまで比較的に調整がしやすい開発環境です。『バイオハザード』の開発で難しいのは、続けていくうちに慣れてしまって、自分たちでは何が怖いのか判らなくなることなのですが、開発チームは常にそれを問いかけながら頻繁に調整を行いました。アセットに関しては、最終の一歩手前のものでも十分行けると思っていたのですが、現段階のものはそこから大きく向上していたのでビジュアルのクオリティに素直にびっくりしましたね。

――2017年1月26日に発売が控えていますが、ブラックフライデーといった欧米のホリデー期間を避けたのには何か理由があったのでしょうか。

バンス氏:特別に避けたわけではありません。まず「今年のE3で発表する」と言う事があり、そこからどのように体験版を展開するかや、開発状況を考慮したスケジュールです。過去の『バイオハザード』作品も年始に発売されて成功しているものが少なくないですしね。ブラックフライデーの面白いところは、確かに多くのプレイヤーが多くのゲームを購入するのですが、クリスマス休暇で一気に遊んでしまうのです。そうすると、クリスマスが終わる時にはすべてやり尽くしていて暇になってしまう。そういう面で、年始というのは実は狙い目なタイミングなのかもしれません。

――なるほど、発売が楽しみですね。本日はありがとうございました。