2016年8月15日の記事を再掲載しています


「最高」は「天井」ではない。

Appleはもっとも新しいMacのOS、「macOS Sierra」のパブリックベータをリリースしました。「Apple Beta Software Program」で登録すれば、秋の正式リリースに先駆けて誰でも最新のmacOSを試すことができます。

一ヶ月ほどでしょうか。Sierraを試していますが、MacのOSは、相変わらず最高です(基本これが感想)。

いちばん気に入ったのはiCloud Driveとの連携強化。自動でデスクトップと書類フォルダがiCloudと同期されるのは予想外の快適さです。わざわざファイルを移動させることなく同期してくれる安心感がじわじわくる良さになっています。

ローカルにある古いファイルや必要なさそうなファイルを自動でiCloudにアップロードしてローカルからは削除、ストレージの空き容量を増やしてくれるOptimized Storageは、十分に空きのあるMacを使っているのであまり試せていません。でもうまく動けばかなり気の利いた機能に思えます。このためだけにiCloudのストレージプランに課金するのもいいんじゃないでしょうか。

コピーした内容をMacとiPhone/iPadで共有するUniversal Clipboardは、ペーストするときに必ず2,3秒待たされます。あとなぜかMac側でのペーストはうまく動きませんでした。このあたりは正式リリースまでに調整されそうですが、Universal Clipboardは僕が経験不足なのか、どんなときに使ったらいいのかあまり思いつきません…。

iOS 10のプレビューでも書きましたが、大きくアップデートされたiMessageとApple Musicはとてもいいです。日常での使い勝手と楽しさは大きく向上しています。

「写真」アプリ(Photo.app)の写真を自動でまとめて見せてくれる「メモリー」は、ふと写真を見返すときにちょっと助かるかな。Apple WatchによるMacの自動ロック解除は、僕が試しているパブリックベータ2(16A270f)にはまだ実装されていないようでした(設定が必要なら誰か教えてもらえるとうれしいです)。

さて、ここまでSierraの新機能に急ぎめでコメントしたのは、これを語らないといけないから。ついにMacにやってきたiPhoneでお馴染みの音声アシスタントSiri……ですが、そこに至るにはまず「macOS」と「iOS」の進化の歴史を振り返りましょう。


macOSとiOS


OS Xだけちょっとちがう


この「macOS」という名前は、本作Sierraから名付けられたMac OSの新しい名称です。Appleのほかのプラットフォームを見てみると「iOS」「watchOS」「tvOS」で、ここに「OS X」がくるのは字面の上では並びがよくありません。そこで、Appleは「OS X」を並びのいい「macOS」に改めたわけですが、これには字面だけではない、macOSとiOSとの深い関係性が浮かび上がってきます。



Macworld 2007にて、iPhoneにOS Xが採用されることを話すスティーブ・ジョブズ


順を追って進めましょう。まず話は2007年にまで遡ります。当時AppleのCEOだったスティーブ・ジョブズが初代のiPhoneを発表したとき、iPhoneのOSは「OS X」と呼ばれていました。ですがみなさん知ってのとおり、iPhoneで動くのはフルのMac OS Xではなく、コア部分をMac OS Xと共通とするサブセットだったわけです。生まれたてのiPhoneのOSは、いわばMac OS Xの子どもみたいなもので、Appleプラットフォームのメインは親のMac OSでした。

その後、iPhoneのOSはAppleに「iPhone OS」と呼ばれるようになり、2010年にリリースされた4つ目のバージョンを境に「iOS」へと名前を変え、独自に進化していきます。改めてiOS 4を振り返ると、今では当たり前になったマルチタスク対応や、iPhone 4のRetinaディスプレイ対応など、言いようによっては、MacでできていたことがiPhoneでもできるようになったり、(当時の)MacではできないことがiPhoneではできるようになったOSでした。そしてiOSには、watchOSとtvOSという子どももできていきます。

一方のMac OSは、iOS 4と同じ2010年にリリースされた「OS X Lion(10.7)」から、iPhone/iPadで得たものをMacに還元する「Back to the Mac」を掲げ、iOSで進化させてきた要素をMacに取り込みはじめます。インストールはiPhoneが生んだApp StoreのMac版「Mac App Store」からのダウンロード、iPhoneと同じようにひとつのアプリケーションを画面いっぱいに表示するフルスクリーン、iPhoneに合わせるように方向が上下逆転したスクロールなど、iOSから還元された要素がOS X Lionの特徴でした。「Mac OS X」から「OS X」に改名されたのもこの時期で、「OS XとiOSがひとつのOSに統合されるのでは?」なんて話がささやかれました。

それからのOS XはメジャーアップデートのたびにiOSの要素を追加していきます。そして、それがそのままOS Xの「売り」になっていきました。iMessage、Game Center、iBooks、Map、通知センター。2014年リリースの「OS X Mavericks」からは同じApple IDでログインしたMacとiOSを連携させるHand Offも実装しました。これは乱暴な言い方をすれば、近年のOS XはいかにiPhoneと連携できるかが最重要項目になっているOSで、Appleプラットフォームは完全にiOSがメインになっているということです。

そして、ついに「OS X」はiOSに合わせた名前に、「macOS」になったのです。

この現状を踏まえて考えると、今回の「OS X」から「macOS」への改名は、Appleが「うちのメインはiOSですよ」と言い終える、最後の一手だったように思います。この一手に添えられたのが「Siri for Mac」。iOSで育ち、FacebookやGoogleと人工知能で競っていくこれからのAppleで重要な立ち位置になる彼女がmacOSに「Back to the Mac」されることが象徴的です。


SiriとmacOSの進化はまだまだつづく



macOS Sierraでの彼女は、画面右上のツールバーとDockにいて、それぞれのアイコンをクリックするかショートカットキー(初期設定ではcmd+spaceの長押し)で起動します。これまでもiPhoneとiPadで彼女に聞いてきた天気や今後の予定、近くのレストラン情報などは上手に教えてくれます。

ですが、Appleのソフトウェア担当上級副社長のCraig FederighiがWWDC(世界開発者会議)のステージで見せたような、特定のファイルを探すことはあまり得意じゃないようです。とくに「昨日、佐々木くんからもらったファイルを見せて」みたいなとき、人の名前はうまく聞き取れないようでした。もしかしたら僕が日本語を話しているのがあまりよくないって可能性もありますが…。少なくとも編集部の帰国子女、スタナー松井に英語で試してもらったときも人の名前はやっぱりあんまり聞き取れていない印象でした。もしかしたら連絡先に名前が登録されていると聞き取れる…?



Siriはこれからも世界中のiPhoneとiPad、そしてMacで使われてどんどん学習し、より精度があがり、より便利な音声アシスタントになっていくはずです。Developer Preview版を試した米GizmodoのDavid Nieldも言ってますが、APIが公開されたことで、サードパーティーのアプリとも連携が進むとSierraでのSiri体験、ひいてはSierra自体の体験も変わっていくんだと思います。

いまの「OS X El Capitan」も最高のOS Xですが、新たな扉を開いてそれを超えてきそうな最新作「macOS Sierra」の実力はリリースのあと、少し経ってからが見頃になりそうです。ですが、iPhone/iPadといっしょに使うSierraとMacは現時点でも控えめに言って最高ですよ。


source: Apple, WWDC 2016 Keynote - YouTube

(suzuko)