ちょっと前まで猫も杓子も3Dプリンターだったんですけどね…。

MakerBotは世界を変えるはずだったんです。デザイナーのオフィスや工場でしかできなかった3Dプリントを家庭(あるいはガレージ)で可能にするはずだったのです。しかし先日、難解なマーケティング言語やキラキラした映像の下に隠れていたのは、MakerBotの業務用商品にフォーカスした方向転換で、結果として誰もが実は分かっていた事実を認めました。誰も3Dプリンターを家に欲しがっていないということを。

CEOのJonathan Jaglom氏は今回のMakerBotのイベントを、ブランドの「総体的な再配置」であるとしました。このまわりくどいマーケティング語を翻訳すると、「MakerBotは家庭用やホビイスト用を諦め、オフィスや学校に専念します」ということです。MakerBotが本来持っていた、家庭に3Dプリンターを広める夢について米Gizmodoが質問すると、Jaglom氏は「コンシューマーのマーケットはそこまで来ていない」とアッサリ認めました。

ほんの数年前の、3Dプリンターが素晴らしい革命を起こしそうだった雰囲気が遥か遠い過去に感じます。次に買う家の大部分や、車ですら3Dプリントになりそうな勢いだったのに。エキサイティングなニュースは絶えることがなく、Kickstarterは新しいアイデアで溢れかえっていて、ガジェットに目がないギーク達の机には、ゲーム・オブ・スローンズのFUNKO POPの隣にPLA樹脂のおぞましい物体が鎮座していたものです。

しかしその後、家庭用3Dプリンターのマーケットは崩壊していまいます。原因は主に、低品質なプリント素材や苦痛な程に長くて複雑なプリント工程、そして極めつけに一般大衆の完全な無関心でした。この技術を最も熱心に提案していたMakerBotは、かつてはWiredに「次の産業革命を起こす重要な歯車」とまで称されましたが、今や幾度も人員削減を行う事態に陥っています。

また、MakerBotは最近CEOが何度も交代しており、それぞれ違ったビジネスプランはあったものの、結局は失敗に終わっています。2013年、会社の設立からたった5年後、CEOのBre Pettis氏が去りました。同時期にMakerBotは、業務用3Dプリントを専門とするStratasysに買収されています。Pettis氏にとって代わったJenny Lawton氏は、その後2015年に現在のCEO、Jonathan Jaglom氏と交代します。



列をなす、MakerBot Replicator Mini Plus


先日のMakerBotによる記者会見は大人しめで、現実的な視点を持つJaglom氏が就任して初めての、大きな商品発表会となりました。

彼の新たな方針は、親会社の方法論から多くを学んでいます。つまり、コンシューマーを捨てて業務用に徹するということです。プロに向けた2,000ドル(約20万2000円)の「MakerBot Replicator Plus」と、教育機関用の1,000ドル(約10万1000円)の「MakerBot Replicator Mini Plus」などの新商品は、低価格な3Dプリントに向けたスマートな一手です。これらはより静かで速く、MakerBotによればリデザインされたソフトのおかげで比較的プリントの手順もシンプルだそうです。

それでも、より高価な「Plus」でプリントを行うには3DデザインとCADファイルの扱いの基礎を理解している必要があり、「Mini Plus」の場合は、教育者によって作成されたリソースに頼らねば投資する意味がありません。MakerBotが諦めた夢にすがる一般ユーザーには、あまり希望は残されていません。個人で作ったプリントデータを共有する、MakerBotのThingiverseは覚えてますか? そういったサービスもどうやら過去の物になりつつあるようです。

MakerBotのエクスペリエンスデザインの主任であるMark Palmer氏は、MakerBotにそういった夢を作り出した責任が「多少ある」としましたが、同時に新しい方向性が技術を推し進めるのに必要なステップであると指摘しました。「これが未来。これが進歩していくための方向なんです」とPalmer氏。



Replicator Plus

Palmer氏は正しいのかもしれません。最初期の未熟で、一番エキサイティングだったコンピューターは家庭で使われていたわけではありません。オフィスや学校にあったのです。そこで荒い技術を磨き上げ、煩わしさが無くなったところで家庭に持ち込むのです。いつか、3Dプリンターも煩わしさがなくなる時が来るでしょう。その時こそ、MakerBotは我々の家庭に再度挑むのかもしれません。


images: MakerBot

source: Wired, 3Dprint.com
Alex Cranz - Gizmodo US[原文
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