先行研究を再現しようとしたら、異なる結果が導かれた...。

これまでに発表された研究結果が本当に正しいか調べる再現実験というものがあります。これによって再現できなかった心理学の理論のひとつ、「表情フィードバック仮説」をご存知でしょうか?

筋肉を使って感情を誘導させる実験によって、笑顔をつくれば人は幸せを感じ、しかめっ面をすれば悲しくなる...という人間の心理状況を分析したこの仮説。手汗が出ることや心臓の鼓動が速まることは緊張や恐怖の結果ではなく原因だと考えた19世紀アメリカの心理学者ウィリアム・ジェームズにはじまり、1988年のドイツでの研究など、この考えを支持する研究はいくつも存在します。

ところが昨年、バージニア大学で行なわれた再現実験で100回にわたる検証によって明らかになったのは、3分の1の割合で表情フィードバック仮説が証明できなかったという事実でした。

さらにこの結果は、一度でなくその後も示されます。

学術誌Perspectives on Psychological Scienceで公開されたのは、アムステルダム大学と世界中の研究室による新たな再現実験の結果。しかも実験を提案したのは、ほかでもなく先ほど紹介した1988年の研究論文の筆頭著者である心理学者のFritz Strackさんです。

この実験で示されたのは、またもや表情フィードバック仮説を証明できないという結果でした。再現実験に携わった研究室のうち、9つは表情フィードバック仮説と同様の結果が得られ、その他8つの研究室ではエビデンスが取れなかったことが明らかにされました。

ところが、BPS Research Digestの記者Christian Jarrettさんは「この結果が意味するのは、表情フィードバック仮説が総じて誤りだというものではない。この仮説を支持する研究は数多くあって、表情筋に影響するとされるボトックス注射を受けた人物が被験者になったときにも証明されたことはあるのだから」と述べています。


再現実験(image: Quentin Gronau / Flickr)


さて、今回の再現実験についてひとつだけ明確な真実があるとすれば、それはこの結果をありのまま受け取るべきではないということかもしれません。

たとえば、トップ画像(左)のようにペンを口にくわえたままアニメを見ると、表情筋がつくられていることから通常よりも笑えるという仮説があります。ただ今回の実験で被験者は、先行研究で使用された30年前のアニメを観ることになり、これが現代の被験者にとって本当に笑える内容なのか...?と、実験の手法にも疑問が残っています。

さらに、タスクを正しく行なっているか調べるために被験者は録画されていたことで自意識が高まっていたり、被験者のなかにはすでに表情フィードバック仮説に関する知識を有する可能性のある心理学の生徒も含まれていたり...。

結局のところ、オリジナルの研究で構築された仮説が正しいのか、それとも再現実験でもとの研究が証明できなかったことが正しいのか...決定的な答えを得るにはまだ時間がかかりそうです。


Top image: Quentin Gronau / Flickr
source: Perspectives in Psychological Science via Improbable Research

Jennifer Ouellette - Gizmodo US [原文]
(Rina Fukazu)