とにかく楽しむためのVR!

とうとう発売が来週に迫ったPlayStation VR(PS VR)。Oculus RiftやHTC Viveに発売日では遅れをとったものの、PlayStationブランドに対するゲーム開発者の信頼は厚く、さらに他のヘッドセットより多彩なゲームへの期待や手の届きやすい値段もあり、もしかしたら真っ先にVRを普及させるかも知れないとも噂されています。

以下、米GizmodoのAlex Cranz記者によるPS VRのレビュー。見たところかなり気に入った様子。早く私たちも体験したいですね!


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グラップリング・ガンを自分のベルトに収めた時、PlayStation VRが単なる素晴らしいVRヘッドセットではないとハッキリ自覚しました。PS VRは、一般の人が買ってもいいと思える初めてのVRヘッドセットなのです。私はこれが素晴らしいゲーム体験になることはもちろん、TVを付けてからヘッドセットを装着し、ゲームを始めるまでのプロセスがとてもシンプルなことに感動しました。

PS VRは、最高のシステムであることに拘らない、ただただ楽しい体験がしたい人々のためのVRといってもいい。このVRはとにかく楽しいの一言に尽きます。技術者は、最高のVR体験のためには色々と壮大なアイデアが必要だと考えがちですが、ゲームとは結局、楽しければそれが全てなのです。

VRはテクノロジー業界の次なる一大トレンドになろうとしています。病院やリハビリテーションセンターは医療ツールに、ドローンレーサーはより正確なコントロールのためのモニターに、そしてお高くとまったアーケードには必ずひとつは大金を消費させるVRゲームがあります。Facebookに20億ドル(約2兆円)という途方もない金額で2014年に買収されたOculus Riftですが、彼らが作り出してくれた話題性のおかげで家庭用VRにも大きな革命が起ころうとしています。

志は高いものの、VRの魅力は伝わりにくいのが現状です。しかしPS VRによって、ソニーはVRを表舞台に立たせるだけの力があるデバイスとプラットフォームを作り上げたのです。使い方は簡単で、多くの人にとって購入しやすい金額な上に、没入感を出すのに十分な素晴らしい技術があり、何よりすごく楽しいゲームがすでにいくつもあるのです。



ある意味では、ソニーは既に勝利の方程式を確立しています。今年先に発売されたOculus RiftとHTC Viveはどちらも500ドル(約5万2000円)以上する上、動作には最低でも1,000ドル(約10万4千円)相当のPCとグラフィックボードを必要とします。一方、既に5000万人がPS4を所持しており、彼らは追加で400ドル(約4万2千円)を払うだけで、モニターを顔に貼り付けて戦車で敵戦線に突っ込んだり、悪夢のようなジェットコースターに乗ったり、バットマンになって歩きまわったりできます(カメラとコントローラーは別売りですが...)。

安くはありませんが、PS VRが楽しければ払うゲーマーは必ずいます。そして間違いなく言えるのは、PS VRは楽しいということです。PS VRは、最も洗練されたVRゲーム体験ではないかも知れませんが、VRにお金を使ってみてもいいかも知れないと思わせる初めてのVRと言えます。


セットアップ


HTC ViveやOculus Riftに比べ、PS VRのセットアップは非常に簡単です。説明書を一切読まなくても、実際に起動するまで5分かかりませんでした。電源ケーブル、HDMIケーブル、そしてUSBケーブルを外部プロセッサーユニットの後ろ側に接続し、ヘッドセットからのケーブルは表側に接続します。



システムを起動するには、ヘッドセットからのケーブル中ほどにあるドングルの電源ボタンを押します。Oculus RiftやHTC Viveでは、全ての電源を落とす時にソフトウェアが暴走することが稀にあるのですが、PS VRではそういったことは起こりません。ドングルには他にもヘッドホンの出力端子、音量ボタン、ミュートボタンがついています。TVから音を聴くこともできるし、ヘッドセットにはマイクが備わっています。

PS VRはセットアップはシンプルですが、必要なケーブルが多いため、見た目には大きくて不格好です。もしあなたが、ケーブルを徹底的に隠したミニマルなホームシアターをお持ちなら、PS VRには不満かもしれません。ヘッドセットのケバケバしい白色もイライラするかもしれませんね。印象としては、「未来のクールなテクノロジー」と「赤ちゃん用初めてのVR」の中間といった感じです。

ソニーはコントローラーに使っているプラスチックと同じものを全体に使い、巨大な額当てとヘッドバンドをその中に収めました。なので、折りたたむこともできないし、狭い場所に押し込むこともできず、あるいは友達の家に持って行きたくても気軽にバッグに入れることもできません。未来のゲームを楽しむためには、PS VRのための場所をしっかり確保する必要があるということです。


体験


もちろん、プレイ空間も必要です。私が一番プレイした「Battlezone」(戦車ゲーム)や「Until Dawn: Rush of Blood」(ホラージェットコースター)はソファーに座ってプレイしても問題ありません。しかし、「バットマン:アーカム VR」などのゲームは動き回るのに広い空間が必要です。バットマンのベルトから道具を取ろうとして枕に手をぶつけたり、ゲーム中のスイッチを押そうとして私の犬を押したことも一度ではありません。

動き回る必要があるゲームをプレイする場合、開始前にちゃんとシステムがリマインドしてくれます。これはより広いプレイエリアが必要になるHTC ViveやOculus Riftをセットアップするときと似ています。これら2つのほうが、PS VRよりもビジュアル面ではスムーズです。総体的なVR体験で言えば、HTC Viveがいまだにトップであり、Oculus Riftは限りなく近い2位になります。一方PS VRの映像は、ヘッドトラッキングとハンドトラッキングの手法が原因で、時にブレます。そのため、プレイの後にジェットコースターに乗りすぎたような感覚を覚えることもあります。


コントローラーのPlayStation Moveは多くのゲームで必須なのに、別売り…。


HTC Viveはふたつのベースステーションから発せられる複雑な赤外線パルスと、ヘッドセットとコントローラーから放たれる赤外線レーザーで動きをトラッキングします。Oculus Riftは「Constellation」とよばれるベースステーションがひとつと、赤外線レーザーの代わりに赤外線LEDでトラッキングを行ないます。

しかし、PS VRはヘッドセットと(別売りの)コントローラーから発せられる巨大なライトを使います。カメラが光を読み取って外部プロセッサーに信号を送り、複雑な計算によって物体のお互いの位置を割り出します。これによって、PS4のような低パワーのマシンでVRを可能にしているのです。

結局のところ、巨大な光の球は赤外線レーザーに対して精密さで劣ります。だからPS VRのモーショントラッキングは競合製品と比べてスムーズではないのです。



ヘッドセットの重さは約612gで、顔につける物としては比較的軽いものですが、それぞれ約454gと544gのOculus RiftやHTC Viveよりも重くなります。扱いやすくするため、巨大な額当てと分厚いプラスチックがゴーグルを収納しているのですが、それゆえ暖かい日に激しく動くゲームを遊ぶと、かなり汗をかきます。ヘッドセットは掃除しやすいのですが、友達と遊ぶ時は布を用意したほうがいいでしょう。

映像は2つの960x1080ディスプレイに表示されます。これは1080x1200の解像度を誇るHTC ViveとOculus Riftには見劣りし、自分がスクリーンを見ているんだと意識させられてしまいます。PS4の普通のメニューを見ている分にはそれでもいいのですが、ゲームが黒くフェードアウトしてもスクリーンの黒とその周囲の黒に大きな差があるのに気づき、没入感にも影響が出てしまいます。


ゲーム


しかし、ヘッドセットのハードウェアやトラッキングが競合製品に劣っていても、最後にはPS VRが勝つのです。なぜなら、今までのどんなVRシステムでも見たことがない、最高のゲームラインナップが揃っているからです。


ネタバレにならない唯一のスクリーンショットがこれでした。


多くの人にとってのハイライトは、Rocksteady StudiosのPS4限定ゲーム、「バットマン:アーカム VR」でしょう。プレイできるゲームの中で最も短いゲームのひとつなので、20ドル(*日本では、ダウンロード版が税込2,678円です)という値段は少し高いと感じるかも知れません。ストーリーを終わらせるのに1時間ちょっとですが、それはもう最高の時間を過ごせます。VRを使ったゲームで、どういうことができるのかを知るのに最も素晴らしい例ではないでしょうか。閉塞感に息がつまり、恐ろしくて、それでいて爽快です。

「Until Dawn: Rush of Blood」はAAAパブリッシャーによるホラーゲームです。バットマンほどデザインで冒険しているわけではありません。むしろ実にシンプルです。ジェットコースターで呪われた血みどろの公園を通り、その間襲ってくるゴーストを撃たなければなりません。プレイするのは簡単ではありませんでした。というのも、無害なイントロを見ただけで震え上がってしまい、兄弟やルームメイトの助けを借りてなんとかおよそ3分の1まではクリアしました。


私の兄弟はゴースト退治が得意です。


他にも大手の開発者がコンテンツを発表しており、「Star Wars Battlefront」や「バイオハザード7 レジデント イービル」もこの先登場します。また、ソニーはSFアドベンチャーの「Farpoint」でFPSジャンルを変えると謳っていますが、いつ発売されるのかは定かではありません。

とりあえずは「DRIVECLUB VR」や「Battlezone」などのドライビングゲームや、「Tumble VR」、「Super Hyper Cube」といったパズルゲーム、そしてリズムレーシングゲームの「THUMPER リズム・バイオレンスゲーム」などを楽しむといいでしょう。特にTHUMPERは展開が早くて没入感が高いので、ゲームを始めた途端に吐き気に襲われたほどです。



ソニーの開発したゲームは本当に面白いのですが、深みのあるコンテンツを求めている人は最初はガッカリするかも知れません。ストーリー性のあるものは数少なく、バットマンを除くと「Wayward Sky」くらいしか、キャラクターに感情移入できたものがありませんでした。これは非常にキュートなポイント・アンド・クリック式のアドベンチャーゲームで、紅の豚やラピュタなどの宮崎駿映画的な空気があり、終わった後に考えさせられたのはこのゲームだけでした。


PS VRのこれから


人々が遊びたくなるようなゲームとともにVRを売り込むのに苦労しているのは、PS VRだけではなくVR業界全体です。どうしても、コンセプトそのものに一過性の空気が漂っているのです。ゲームはどれも短くて、長期的に楽しむというよりはテックデモのように感じてしまいます。しっかりとしたオンライン対戦モードがある「Battlezone」や、ジャンルの性質上何度も遊べるパズル系のタイトルを除くと、長く遊べるタイトルが全くありません。短いゲームに20ドル〜50ドルの値札はかなり高く感じます。

「ウィッチャー3 ワイルドハント」や「オーバーウォッチ」のように何度でも遊びたくなるようなゲームは、どのVRシステムにも現時点ではなく、大手開発者からのサポートもいまだにまばらです。彼らがやっているのは、今まで消費者がやってきた駆け引きと同じです。つまり、大枚をはたいて飛び込む前に、技術がどれだけ流行るかを様子見しているということです。



しかし、今開発者たちを焚きつけることができるとしたら、それはソニーです。歴史的に見ても、新しいプラットフォームに開発車たちを誘い込むのを得意としているからです。PS VRがVRブームに便乗しただけの存在ではないと彼らに納得させ、消費者に400ドルのヘッドセット、60ドルのコントローラー2台、そして60ドルのカメラが悪い投資ではないと納得させることができたなら、PS VRはVR業界を変えることができるかもしれません。

Google CardboardやGear VRなど、スマートフォンを使ったもの以上のVRを体験したいなら、お金を貯めたほうがいいでしょう。PS VRは、VRへの次なるステップを目指す人たちのためのVRヘッドセットなのです。


images: Alex Cranz/Gizmodo

Alex Cranz - Gizmodo US[原文]
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