アメリカの非営利団体TEDは「Ideas worth spreading」というスローガンに基づき、TED Conference(テッド・カンファレンス)など有識者たちの知見を共有するイベントを開催しています。

なかでもインターネットで無料視聴できる、パイオニア達のプレゼンテーション「TED Talks」の数々は、新たな知識の扉を開いてくれるアイデアの宝庫です。

そんなTEDトークのもう1つの魅力が、プレゼンテーション自体の完成度の高さ。話し手の個性を活かし、テーマに合った最適な伝え方を追求したプレゼンは「アイデアを人に伝える行為」の素晴らしい教材です。

今回はそのなかでも、聞き手の興味を強く惹き付ける「エンターテインメント」要素が効いたTEDトーク10本を集めました。「プレゼンテーション」という単語の固定観念をぶち破る刺激的なトークは、どれも楽しい時間を提供してくれると同時に、伝える技術向上のヒントを秘めています。


笑いの中に大切な問いかけが響く、何回も観たくなるプレゼン


ヘテン・パテル(アーティスト)
「自分は誰か、もう一度考えよう」TEDGlobal 2013(2013年6月)9分06秒


私達は、本当の想いを語る相手に対しては心を開き、耳を傾けようとします。

しかし、このTEDトークにおいてパテル氏は、自身の言葉ではほとんど語りません。他者の言葉を介しているにも関わらず、本人の素直な気持ちが感じられるのは何故なのでしょうか。

「私達を『私達』にしているのは何か」いう問いかけのもと活動してきた、パテル氏のプレゼン構成に伝達の秘訣があるのかもしれませんし、ただただパフォーマンスが楽しいものだからかもしれません。

思わず笑ってしまった時にはもう引き込まれている、一見の価値があるプレゼンです。


「大好き」を聞く面白さ


アダム・サヴェッジ(エンジニア、「怪しい伝説」司会者)
「コスプレへの愛」TED2016(2016年2月)13分07秒


大好きなものについて熱弁する人の話って、思わず聞き入ってしまいますよね。様々なコスチュームを作り続けてきたサヴェッジさんのTEDトークはそんな、愛が伝わる語りのお手本です。

軽快なトークと熱いコスプレ愛で観客を引きつけながら、コミュニケーションツールとしての服の機能と、物語を共有するコスプレという行為の面白さを伝えてくれます。


ダイナミックに空間を使う未来的プレゼン


ジョン・ボハノン(科学ジャーナリスト)
「ダンスか PowerPointか ― ささやかな提案」TEDxBrussels(2011年11月)11分17秒


「PowerPointに代わりにダンスを使おう」と言われても中々ピンと来ませんが、このTEDトークを観ると納得させられます。

ジョン・ボハノン氏が提案するのは科学者が、身体表現つまり人に伝えることのプロであるダンサーと仕事をする新しい世界です。

確かに、ツールに捉われないこの発表は不思議な魅力があります。デジタル技術を使用していないにも関わらず、とても未来的でSFなビジュアルのプレゼンテーションです。


面白くてためになる。データを使った、データの解説


セバスチャン・ワーニック(データサイエンティスト)
「データから人気テレビ番組を作るには」TEDxCambridge(2015年6月)12分25秒


便利で強力なツールである大量のデータに人間がどうやって向き合うべきか、AmazonやNetflixを例に解説するTEDトークです。具体的で興味深い事例から、より普遍的な結論へと展開していく構成で、非常に強い説得力を持っています。

聞き手を集中させる笑いの入れどころと、シリアスのバランスも絶妙で、「聞く甲斐がある」と感じさせるプレゼンにとても参考になります。


フラッシュモブのモチベーションを知る


チャーリー・トッド(Improv Everywhere創設者)
「バカバカしさの共有体験」TEDxBloomington(2011年5月)12分04秒


街中で突然通行人達がダンスなどのパフォーマンスを行なうフラッシュモブ。日本ではあまり一般的ではありませんが、楽しげな様子はYouTubeなどを通して話題になりました。

チャーリー・トッド氏のお話は「フラッシュモブって結局なんなんだろう」という私達の疑問に応えてくれるもの。発祥の地アメリカで、どんな考えで行なわれているのかを知ることができます。

「その場にいる皆で、楽しい時間を過ごす遊び」という考え方を知ったことで、フラッシュモブの動画を見るときや、自分でやってみようと思ったときの取り組み方が変わる気がします。


TED公認、抱腹絶倒TEDパロディ


ウィル・スティーブン(ライター、役者)
「TEDxで賢そうにプレゼンする秘訣」TEDxNewYork(2014年11月)5分55秒


TEDトークや新しいスマートフォンの発表など、格好良いプレゼンテーションと言われて、誰もがなんとなく思い浮かべる共通のイメージがあります。

ウィル・スティーブンはそんなプレゼンあるある“だけ”を取り出したTEDトークを、TEDのステージ上で行ない会場を笑いに包みました。

これらの小技を自分のプレゼンに取り入れるのもありですし、ただ楽しむのもありなTED好き必見の一作です。


巧くやらなくても、良いプレゼンはできる


ジョー・コーワン(ミュージシャン)
「舞台恐怖症を克服する方法」TED@State Street Boston(2013年11月)8分03秒


格好付けず、素直に気持ちを伝えることで共感されるタイプのTEDトークです。自分が極度の舞台恐怖症を克服して、ステージで歌えるようになるまでの過去を話すコーワンさん。彼の言葉が響くのは、ミュージシャンとしての経験の中で自分なりの伝え方に辿り着いたからかもしれません。

自分に合ったプレゼンスタイルを見つけることの大切さを感じます。


生伴奏に乗せた、VRの有用性のプレゼン


クリス・ミルク(Within社CEO)
「芸術として生まれ変わったバーチャルリアリティー(VR)」TED2016(2016年2月)17分34秒


VR技術の有用性について解説するのは、映像作家としてミュージックビデオなどを作ってきたクリス・ミルク氏。VRを強烈な感情を生み出すツールとして注目し研究してきた彼が、これまでに実感し、理解した事実を伝えてくれます。

話の内容やデモの様子自体もとても面白いのですが、チェロとピアノの生伴奏をBGMに使うプレゼン方法も特徴的。音楽によってジョークはよりシュールに、クライマックスはより感動的になっています。

2015年のTEDトークでは、彼がVR技術を中心に活動するようになった経緯と、これからの展望を聞くことができます。


一言も喋らない美しいTEDトーク


カキ・キング(ギタリスト)
「音楽の力で光と色の世界へ」TEDWomen 2015(2015年5月)11分31秒


まず言えることは、これが見て損のない美しい演奏だということです。その後に何を感じ、どんな意味を汲み取るかは人それぞれかもしれません。

アイデアや情報を相手に伝えようとする行為をプレゼンテーションと呼ぶとすれば、言葉を使わないという選択肢もあるのかもしれない……。プロジェクションマッピングによって美しく輝くギターの演奏を眺めながら、改めてプレゼンについて想う11分間でした。


プレゼンのなかで全てが繋がる爽快感


ジェーン・マゴニガル(ゲーム・デザイナー)
「ゲームで10年長生きしましょう」TEDGlobal 2012(2012年6月)


ジェーン・マゴニガルさんによる「ゲームデザイナーならではの発想で、より良い人生を送る方法を発見した」というTEDトーク。

ラストで伏線が回収された際など非常に盛り上がる、素晴らしい構成のプレゼンです。しかもなんと、観るだけで7分も寿命が延びるんです。(何故伸びるかは観てからのお楽しみ)

科学的な根拠を良いタイミングで示すので説得力もありますし、自分のアイデアを伝達し人々を巻き込む力がとても強い傑作プレゼンテーションです。


原稿を読むだけではない、パフォーマンスとして完成されたプレゼンテーションからはどれも強い説得力が感じられました。自分の考えを本気で人に伝えようとするとき、制限なんてどこにも無いのだと改めて教えられたようです。

これらのTEDトークは全て無料公開されているほか、10月22日に日本で開催される、TEDxTokyo 2016の様子もライブ配信される予定です。

© TED Conferences, LLC


image by TED Talks
source: TED, TED Talks 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, TEDxTokyo, YouTube

(勝山ケイ素)