トヨタiQはマス広告離れを加速するのか?――それゆけ!カナモリさん
YouTubeにトヨタ自動車自らが動画をアップ、街頭でのパフォーマンスするなど、革新的なマーケティング手法を繰り広げた「iQ」。その狙いは何か。マス広告離れを“ますます”加速するのか。グロービス経営大学院客員准教授、金森努が読み解く。
発売前予約4000台。それに貢献したのは従来型のマス広告ではない。ネットプロモーションが中心だという。
iQはトヨタが技術の粋を凝らして開発した世界戦略車であり、低迷する国内販売状況を打開する起爆剤としても期待されている車種である。まずはその概要を、同社のホームページで見てみよう。
普通車1台のスペースに2台が駐車できるほどのコンパクトなボディー。全長が3メートル弱と軽自動車の規格より短いのに、大人が4人乗れる。それを実現するために投入された技術はイノベーションのカタマリである。
しかし、iQに驚かされるのは技術だけではない。マーケティング手法も従来とは全く異なる。その展開はashi.comの記事「トヨタ超小型車「iQ」 ネットPRで予約4千台超」で紹介されている。
YouTubeにトヨタ自らが動画をアップしたり、試乗会体験者のBlogに公式ページからリンクを張ったりと、かなり細かなネットプロモーションを展開した。記事によると、新車発表から発売まで1カ月以上あけ、通常は発売後に始める、ネットを窓口にした販売店紹介を事前に実施。事前注文だけで、月間販売目標(2500台)を大きく上回った、という。
自動車専門誌などでは取り上げられていたものの、発売2カ月前から試乗会まで開催しているのに、iQはなぜかマス広告にはほとんど登場していなかった。つまり、従来の車と全く異なる広告戦略を取っているのではないかと考えられるのだ。
ネットプロモーションだけではない、トヨタとしては異例ともいえるゲリラマーケティングも先月展開し、大きな話題を喚起した。もちろん、その様子もYouTubeにアップされている。
2008年10月20日〜26日に、東京銀座ソニービルで行われた驚愕の空中ダンスパフォーマンス。地上高30mの垂直のストリートを舞台に、人が歩く、踊る。
先鋭的なプロモーション展開。狙いは、「イノベータの取り込み」ではないだろうか。
米国の社会学者E・M・ロジャーズ、は、イノベーションがどのように社会や組織に普及するのか実証的研究を行い、採用時期によって採用者を5つのカテゴリに分類している。冒険的でリスクを好み、1番最初に採用するのがイノベータである。
iQが技術の粋を凝らした画期的なコンパクトカーであることは間違いない。しかし、その価格は140万円〜160万円と決して安くはない。単純にコンパクトな車を求めるのであれば、軽自動車や、通常の排気量1リッタークラスの小型車を選択するだろう。
しかし、価格を超えても、この車に新しい何かの価値を感じて購入するイノベータ層も確かに存在したのだ。それが事前予約4,000台という実績につながっている。ネットプロモーションにゲリラマーケティングという展開が奏功したのだ。
しかし、革新的な技術や製品の普及には、「イノベーター」に続く、「アーリーアダプタ」の取り込みが欠かせないと、ロジャースは言う。
iQの次なる課題もまさにそこにあるのだろう。
では、アーリーアダプタ層にiQを訴求していくとしたら、今度はマス広告を用いるのだろうか。 筆者はそうは思わない。アーリーアダプタはイノベータよりもその技術や製品の特性をじっくりと吟味、評価して採用に至るという特徴を持っている。ゆえに、現在の路線で、ネットを中心とした訴求やクチコミ促進でじっくりとiQの魅力を浸透させていく手段の方が有効ではないかと考えるからだ。
アーリーアダプタを取り込んだら、次の「アーリーマジョリティ」は比較的容易に獲得できるとされている。つまり、アーリーマジョリティーは、革新的な技術や製品をきちんと吟味、評価するアーリーアダプタの行動を見て、安心して採用に踏み切るのである。
そのあたりになると、マス広告での盛り上げも始まるであろうが、その段階では市場での評価がはっきりしているため、あまり大量の投下は必要ないはずだ。つまり、結果としてマス広告の総投下量は極めて小さくなると予測できるのである。
発売前に、車のシルエットを「チラ見せ」するティザー(じらし)広告を展開し、発売日から一気にマス広告の攻勢をかけ、さらに週末のディーラーでの試乗会告知も展開する。
そんな、旧来の広告手法をiQは過去のものにしてしまったのかもしれない。
時事通信の記事「トヨタ、マスメディア広告費3割カット=自動車業界、一段の経費圧縮」によれば、トヨタは今年の8月29日に、北米市場の低迷を受けてマス広告費の3割削減を発表している。
リーマンショック以前の決定なので、さらに削減幅は増えるかもしれない。そして、それをiQの成功がさらに加速させることは間違いないと思われるのだ。
発売前予約4000台。それに貢献したのは従来型のマス広告ではない。ネットプロモーションが中心だという。
iQはトヨタが技術の粋を凝らして開発した世界戦略車であり、低迷する国内販売状況を打開する起爆剤としても期待されている車種である。まずはその概要を、同社のホームページで見てみよう。
普通車1台のスペースに2台が駐車できるほどのコンパクトなボディー。全長が3メートル弱と軽自動車の規格より短いのに、大人が4人乗れる。それを実現するために投入された技術はイノベーションのカタマリである。
しかし、iQに驚かされるのは技術だけではない。マーケティング手法も従来とは全く異なる。その展開はashi.comの記事「トヨタ超小型車「iQ」 ネットPRで予約4千台超」で紹介されている。
YouTubeにトヨタ自らが動画をアップしたり、試乗会体験者のBlogに公式ページからリンクを張ったりと、かなり細かなネットプロモーションを展開した。記事によると、新車発表から発売まで1カ月以上あけ、通常は発売後に始める、ネットを窓口にした販売店紹介を事前に実施。事前注文だけで、月間販売目標(2500台)を大きく上回った、という。
自動車専門誌などでは取り上げられていたものの、発売2カ月前から試乗会まで開催しているのに、iQはなぜかマス広告にはほとんど登場していなかった。つまり、従来の車と全く異なる広告戦略を取っているのではないかと考えられるのだ。
ネットプロモーションだけではない、トヨタとしては異例ともいえるゲリラマーケティングも先月展開し、大きな話題を喚起した。もちろん、その様子もYouTubeにアップされている。
2008年10月20日〜26日に、東京銀座ソニービルで行われた驚愕の空中ダンスパフォーマンス。地上高30mの垂直のストリートを舞台に、人が歩く、踊る。
先鋭的なプロモーション展開。狙いは、「イノベータの取り込み」ではないだろうか。
米国の社会学者E・M・ロジャーズ、は、イノベーションがどのように社会や組織に普及するのか実証的研究を行い、採用時期によって採用者を5つのカテゴリに分類している。冒険的でリスクを好み、1番最初に採用するのがイノベータである。
iQが技術の粋を凝らした画期的なコンパクトカーであることは間違いない。しかし、その価格は140万円〜160万円と決して安くはない。単純にコンパクトな車を求めるのであれば、軽自動車や、通常の排気量1リッタークラスの小型車を選択するだろう。
しかし、価格を超えても、この車に新しい何かの価値を感じて購入するイノベータ層も確かに存在したのだ。それが事前予約4,000台という実績につながっている。ネットプロモーションにゲリラマーケティングという展開が奏功したのだ。
しかし、革新的な技術や製品の普及には、「イノベーター」に続く、「アーリーアダプタ」の取り込みが欠かせないと、ロジャースは言う。
iQの次なる課題もまさにそこにあるのだろう。
では、アーリーアダプタ層にiQを訴求していくとしたら、今度はマス広告を用いるのだろうか。 筆者はそうは思わない。アーリーアダプタはイノベータよりもその技術や製品の特性をじっくりと吟味、評価して採用に至るという特徴を持っている。ゆえに、現在の路線で、ネットを中心とした訴求やクチコミ促進でじっくりとiQの魅力を浸透させていく手段の方が有効ではないかと考えるからだ。
アーリーアダプタを取り込んだら、次の「アーリーマジョリティ」は比較的容易に獲得できるとされている。つまり、アーリーマジョリティーは、革新的な技術や製品をきちんと吟味、評価するアーリーアダプタの行動を見て、安心して採用に踏み切るのである。
そのあたりになると、マス広告での盛り上げも始まるであろうが、その段階では市場での評価がはっきりしているため、あまり大量の投下は必要ないはずだ。つまり、結果としてマス広告の総投下量は極めて小さくなると予測できるのである。
発売前に、車のシルエットを「チラ見せ」するティザー(じらし)広告を展開し、発売日から一気にマス広告の攻勢をかけ、さらに週末のディーラーでの試乗会告知も展開する。
そんな、旧来の広告手法をiQは過去のものにしてしまったのかもしれない。
時事通信の記事「トヨタ、マスメディア広告費3割カット=自動車業界、一段の経費圧縮」によれば、トヨタは今年の8月29日に、北米市場の低迷を受けてマス広告費の3割削減を発表している。
リーマンショック以前の決定なので、さらに削減幅は増えるかもしれない。そして、それをiQの成功がさらに加速させることは間違いないと思われるのだ。
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