国内リーグで低迷する強豪がチャンピオンズリーグなどで格上の相手と戦うことによって覚醒するというシナリオがある。同じことが、日本代表にも起こったようだ。

ボール保持率では前後半ともオーストラリアが上回ったが、日本はセットプレー以外では危ない場面をほとんど作らせなかった。中盤の守備がよく機能したからだ。失点もPKによるものだ。

イラク戦はまさにピンチの連続。勝利を収めたものの内容は負けゲームだった。日本代表は、そのイラク戦から見違えるような試合をした。選手も並びも変わったが、重要なのはプレースタイルの変化だ。

イラク戦は選手と選手の距離が離れてしまい、ロングレンジのパスが行き交う展開となってしまった。そのため、ボールを受けた日本選手は孤立して1対1の戦いを強いられたのだ。

「デュエルが弱い」のはハリルホジッチ監督に指摘されるまでもなく日本の弱点である。だからこそ、これまでの日本代表は選手と選手の距離を近くして数的優位を作ろうとしてきたのだ。そういう集団的な戦い方が、「速い攻め」を掲げるハリルホジッチ体制ですっかり失われてしまい、イラク戦はその最悪のケースとなってしまったのだ。

オーストラリア戦では、それが改善された。

イラク戦では、攻撃の場面では最終ラインからトップまで40〜50メートルもの距離があり、中盤に大きなスペースができていたが、オーストラリア戦では最終ラインからトップまでの距離は30メートルほどに縮まった。そして、守備の局面では最終ラインの4人とMF4人(香川も戻った場面では5人)の距離が10メートルほどのスモールフィールドを作ることができたのだ。オーストラリアの攻撃は、この中盤のスモールフィールドに引っかかって、ボールを戻さざるをえない場面が何度もあった。そのため攻撃に時間がかかり、日本のDFは相手FWをしっかりと捕まえることができた。そして、山口が激しく体を寄せてボールを奪った。

攻撃面でも数的優位を作れた。とくに中央で本田と香川が近い位置で絡みながらパスをつなげたのが効果的だった。ここでボールをつないでボールを出すことでサイド攻撃が活性化。原口や酒井高のクロスがもう少し正確だったら、2点目も期待できただろう。

日本代表はこのところマンネリに陥っていた。2010年に岡田元監督によって抜擢された本田、長谷部、長友、内田が中心となり、そこに香川や吉田が加わって2011年アジアカップで優勝した時のメンバーがアンタッチャブルな存在となってしまったのだ。歴代外国人監督は海外組中心の「序列」を崩すことができず、メンバーが固定されてしまった。

だが、ここに来て様々な原因でこれまでの中心選手の地位が揺らぎ始め、清武、原口、山口といったロンドン五輪世代の選手が台頭。世代交代が進みそうな様相を呈しているのだ。

また、このところ「奪って速く攻める」という監督が掲げるコンセプトに縛られて攻め急ぎが目立っていたが、オーストラリア戦では慌てずにしっかりとつなぐ日本代表の本来目指すべき戦い方ができていた。選手たちが監督の掲げるコンセプトから解放されたのだろう。

今後、世代間の競争が激化すると同時に監督と選手たちの間の緊張感も強まることだろう。下手をすればチームが崩壊する危険も孕む。だが、同時にこの流れをうまく収斂させていけば、新しいダイナミズムが生まれる可能性もある。

そう、ちょうど2010年の南アフリカ・ワールドカップ直前と同じような状況なのだ。

(文:後藤健生)