「課題は多かった。でも、それを笑って反省できるようなシチュエーションに(山口)蛍がしてくれたということで、前向きに受け止めたいと思います」

決勝点が生まれたアディショナルタイム、本田圭佑の姿はピッチ内になかった。日本代表は山口の劇的な決勝ゴールにより勝ち点3を得たが、一歩間違えればワールドカップ出場へ向けて黄色信号が灯る展開だった。自分がピッチ内にいるうちに試合を決められなかったこと、試合内容や相手チームの姿勢に本田はいらだちを隠せなかった。

相手が自信を持ってプレーしている、という指摘に対し、背番号4番は強い口調で語り出す。

「本当はそれをこっちがやりたいんですよ。本当はこっちが向こうをバカにしたいんです」

ボールを回してポゼッションを高め、相手を揺さぶる――。これまでの日本代表がアジアで用いてきたオーソドックスな戦い方だ。その必要性を、本田は訴える。

ただし、「(今は)戦術的に求めていない」と語るように、ヴァイド・ハリルホジッチ監督はいわゆる“遅攻”に重きを置いていない。世界で勝つために“デュエル”や“フィジカル”、“スピード”といった単語を頻繁に用いる指揮官は、アジアにおける戦いでも世界を意識した戦術を用いる。しかし、ことアジアに限ればもっと有効な戦い方があるという。

「スピーディーさが欠けるとか色々な意見があるでしょうけど、アジアレベルで言えば(パスを回して)徹底的に相手をバカにするようなプレーを得意としている」と指摘し、「僕やヤットさん(遠藤保仁)が得意とするところ」と、かつてはそういった戦術でアジアを勝ち抜いていたと主張する。

「本来はイラクみたいな、僕らを必要以上にリスペクトしていないというのは腹立たしいこと。本当は向こうがうざいって思うくらいに回さないといけないなっていうのは感じています」

ただし、「今、それは求められていない」という現実も理解している。「怖い攻撃をもっとたくさん増やしていこうということが今の代表のテーマなので、前向きにチャレンジの気持ちで取り組んでいる。今までの自分になかったところに挑戦できているし、やりがいを感じているので(現代表のやり方を)否定するわけではないです」と前を向く発言も見られた。もっとも、言葉の節々には理想と現実の間を行き来するような葛藤が見え隠れする。

「やりたいことは伝えながら、監督がやりたいことは貫く。ちょっとずつ変わっていくと思います」

日本代表は本田不在のピッチで劇的な勝ち越し弾を決めた。果たして、本田はどのように現実を受け止め、日本代表はどのように変化していくのか。「もっと厳しい戦いになる」というオーストラリアとのアウェー戦は11日。限られた時間の中で、変わりゆくチームへの適応が求められる。