ドイツのフランクフルトで3シーズン目を迎える長谷部誠は厳しいスタメン争いの中で奮闘し、確かな存在感を示している。日本代表のキャプテンをつとめる長谷部はオーストラリア戦でアジア予選の出場記録を33に更新したが、高い向上心を維持して挑戦を続けている。

9月17日の第3節レバークーゼン戦から10月15日の第7節バイエルン・ミュンヘン戦までの5試合で先発フル出場が2試合と途中出場が1試合。出場した試合は1勝1敗1分だった。ここまでアシストやゴールを記録しているわけではないが、中盤で攻守をオーガナイズしながら、気の利いたパスやサポートでチャンスに関わるなど、リンクマンとして存在感を示している。

特に10月15日のバイエルン戦は途中出場ながら同点弾の起点になるなどドイツ王者を苦しめる活躍を見せた。ここまで昨季の途中から加入した左利きのサボルチ・フスティがボランチの主軸を担い、もう1つの枠を長谷部と23歳のスペイン人MFオマール・マスカレルが争う状況だが、向上心の高い代表キャプテンにはそれも良い刺激になっているはずだ。

▽9月17日(土)ブンデスリーガ第3節バイヤー・レバークーゼン戦

出場時間:90分(先発フル出場) 評価:6.5

4-2-3-1のボランチで前節のダルムシュタット戦に続き先発した長谷部はリーグ屈指の強豪を相手に確かな存在感を示して2-1の勝利に貢献。特に相手のキーマンであるチリ代表MFチャルレス・アランギスに良い状態でボールを持たせなかった。

公式データでは「競り合い」の勝利数もチーム最高に並ぶ12回を記録。仕掛けの起点になるパスにミスが目立ち、前に出て崩しに絡むシーンが限られたものの、約11kmの走行距離を効果的に使ってバランスワークした点はボランチのポジションながらチャンスメーカーのフスティとはまた違った評価を得られただろう。

▽9月20日(火)ブンデスリーガ第4節FCインゴルシュタット戦

出場せず 評価:無し

▽9月24日(土)ブンデスリーガ第5節ヘルタ・ベルリン戦

出場せず 評価:無し

▽10月1日(土)ブンデスリーガ第6節SCフライブルク戦

出場時間:90分(先発フル出場) 評価:5.5

昇格クラブのアウェーに乗り込んだフランクフルトは立ち上がりにショートカウンターから失点し、守備を固める相手をこじ開けられないまま1−0で敗れた。長谷部は代表に合流する直前の試合は3試合ぶりに先発フル出場を果たした。

4-3-1-2のアンカーを担った長谷部の個人としてのパフォーマンスはそれほど悪くなかった。運動量があり、長短のパスを正確に捌けていたし、中盤の底でカウンターの芽も摘めていたからだ。欲を言えば機を見た効果的な攻め上がりができれば良かったが、チームとして悪い展開を挽回できなかった。

▽10月6日(木) W杯アジア最終予選 イラク戦

出場時間:90分(先発フル出場) 評価:5.0

「後半の終盤になると多少ルーズになるので、最後に仕留められる」という長谷部の言葉がそのまま予言として的中したが、山口蛍の劇的なゴールが決まるまでイラクに苦しめられた。

チーム全体に比例する様に、長谷部も流れに乗れなかった。イラクのアタッカーに対して的確なポジションは取るものの、柏木と相手を囲んでも効果的にボールを奪うことができず、DFラインが跳ね返したセカンドボールも相手に奪われた。

1−1とされた後半途中から積極的なパスで相手ディフェンスを脅かすシーンもあったが、終盤はDFの吉田麻也が前線に上がる“パワープレー"を取るなど、難しい試合展開の中で何とか勝利を拾った形だ。

▽10月11日(木) W杯アジア最終予選オーストラリア戦

出場時間:90分(先発フル出場) 評価:6.0

原口元気のカットしたボールを拾い、タイミング良く前を走る本田に通した縦パスは秀逸で、高めの位置と低めの位置に応じた山口とのバランスも前半はほぼ完璧だった。

ただ、原口がPKを与えたシーンにいたる流れは山口とポジションが入れ替わっていた局面でプレスの背後を突かれ、右サイドバックの酒井高徳に1対2の対応を強いる要因を生んでしまった。

1−1となってからは相手の攻撃的な選手交代もあり、自陣に押し込まれる展開となったが、バランスを失うことなく最後までしのぎ切った貢献度は高い。

ただ、メンバー交代の助けなどがない状況でも、最終ラインと協力してもう少しラインを上げていきたかった。アジア王者に日本代表のベースは示したが、そこからどう引き上げ、バージョンアップしていけるかは長谷部キャプテンの役割も大きいはず。

▽10月15日(土)ブンデスリーガ第7節バイエルン・ミュンヘン戦

出場時間:33分(後半22分から) 評価:7.0

代表から復帰して直後、「まだ疲労が残っている」と語るニコ・コバチ監督の判断でベンチスタートとなったが、本人は最初から出たい意識を持っていた様子。

得点経過は1−2、フスティが相手選手への暴言により2枚目の警告で退場して10人となった状態で投入された長谷部だが、浮き足立つことなく中盤に構え、強豪バイエルンの攻撃にストレスをかけさせた。

そして投入から11分後の78分に速い縦パスをFWのブラニミール・フルゴタに通したところから、ティモシー・チャンドラーのクロスにつながり、マルコ・ファビアンの同点ゴールが生まれた。

その後の長谷部は“獅子奮迅"の働きで自陣のバイタルエリアを消し、同点のまま試合を終わらせた。短いプレー時間ではあるが、"影のMOM“と評価できるパフォーマンスだった。

■主軸となるために必要なチャンスメイク

ライバルとの競争もあり、中盤の主軸とまで呼べる状況ではないが、ニコ・コバチ監督としては非常に信頼できる戦術のキーパーソンであり、今後も出場機会は十分に得られるはず。

長谷部の良さは監督の要求を高いアベレージでこなせる戦術理解力とオーガナイズ力、つまり周囲との関係や、対戦相手、状況に応じたプレー選択にある。

ミドルレンジのボールを速く正確に蹴ることができるため、タイミングが合えばバイエルン戦の様なゴールの起点になるプレーもできる。ただし、生粋のプレーメーカーではないため、仲間とイメージを共有して攻守に関われるかがポイントになる。

フランクフルトにはフスティという攻撃センスの高い“相棒"がいる一方、代表では縦志向の強い攻撃における連携の改善が求められる。個人としては1対1でボールを奪い切り、カウンターからチャンスの起点になる回数や正確性を加えたいところだ。

32歳だが、若手との競争の中で向上心を高める代表キャプテンの目はしっかり前を向いている。

文=河治良幸(サッカージャーナリスト)