ドルトムントの攻撃陣が絶好調だ。公式戦近4試合で20得点。ピエール・エメリク・オーバメヤンらを抱える攻撃陣の躍進はとどまるところを知らない。

しかし、その影に守護神の奮闘があることをご存知だろうか? 得点数に目がいきがちだが、この期間の失点数はわずかに「2」。守護神の奮闘無くして、大勝続きの日々は考えられなかった。

ブンデスリーガ第4節のヴォルフスブルク戦にしても、ロマン・ビュルキの活躍がなければ結果がどうなっていたか分からない。今回は『Goal』の現地記者がヴォルフスブルク戦を振り返り、ドルトムントを最後方から支える守護神の奮闘をお伝えする。

■大勝の影に守護神の奮闘あり

ドルトムントは敵地でヴォルフスブルクと対戦し、5-1の大勝を収めた。ハンス・ヨアヒム・ヴァツケCEO(最高経営責任者)は試合後、ビュルキの元へ向かい抱擁を交わすと耳元で何かを囁いた。

推測ではあるが、勝利の立役者となったビュルキに感謝の気持ちを伝えたのではないだろうか? この試合でビュルキは何度も好セーブを披露し、不安定なディフェンス陣をフォローしたのだから。

ビュルキが優れているのは反射神経の良さだ。ドルトムントでの初シーズンであった昨季は、失点に繋がるようなミスが多々見られた。単純なミスが多いことでロマン・ヴァイデンフェラーを守護神に推す声も少なくなかった。しかし今シーズンは抜群の安定感を見せ、相手チームを困らせている。

■ほとんどの枠内シュートをセーブ

ヴォルフスブルク戦ではドルトムントの“命綱”とも言うべき活躍を見せた。相手の猛攻が30分間ほど続いた時間帯もスーパーセーブの連続でチームを救ったのだ。

36分、ドラクスラーのスルーパスからマリオ・ゴメスが裏に抜け出し、ビュルキと1対1の場面を迎える。ゴメスの放ったシュートにビュルキは素早く反応して好セーブを見せる。その直後にはゴール正面20mからリカルド・ロドリゲスが鋭いFKを放つが、素早い反応から冷静に対処し難を逃れた。

44分、マキシミリアン・アーノルドが放った強烈なミドルシュートにも危なげなく対処。そして迎えた50分、右サイドからのグラウンダーのクロスがファーサイドでフリーのドラクスラーの足元へ入る。スタジアムの誰もがゴールを確信したが、ビュルキが奇跡的なセーブを披露。こぼれ球にもゴメスがつめてきたが、素早く反応した守護神がなんとかボールをかき出し、ゴールを死守した。

本人はドラクスラーのシュートを防いだシーンを「太ももに当たったんだ。運が良かった」と振り返ったが、好セーブを連発する要因を「運」に求めることなど、できるはずもない。試合中、ほとんど完璧だったビュルキが唯一犯したミスを指摘するとしたら、自己評価が低すぎるところだろう(もちろん、謙遜の意味もあっただろうが)。

■GKコーチと向き合い苦手なプレーを克服

彼は「昨シーズンよりも調子が良い。僕とGKコーチは長い間一緒に練習してきてお互いを理解できた。トレーニングでは、自分が苦手とするプレーを伝えて、そこを重点的に練習しているんだ」と明かしている。

ビュルキはヴォルフスブルク戦前の時点で75%の枠内シュートを止めていたが、この試合でも8本の枠内シュートをストップし、セーブ率は88.9%に上がった。

キャプテンのマルセル・シュメルツァーは「今日のビュルキは本当に素晴らしかった。ヴォルフスブルクのチャンスを何度も止めてくれたし、組み立ての部分でも良かった」とチームメートを称賛した。

もっとも、ビュルキ本人は冷静で「何度かチームに貢献できた」と話すにとどめている。

■コンパクトでなかったドルトムントと、チームを救った守護神

ドルトムントは早い段階で2-0とリードしてからの時間帯でコンパクトさを保てなかったことが、ビュルキがここまで活躍しなければならなかった最大の理由となった。

ドルトムントはその時間帯に主導権を握ることができず、イージーミスを繰り返したのだ。そして、ヴォルフスブルクに攻撃の糸口を与え、何度も危ないシーンを作られた。

中盤での安定性が欠けていた。ユリアン・ヴァイグルは20分〜50分の時間帯であまり良いパフォーマンスをみせられなかった。その結果、ヴォルフスブルクは簡単にドルトムントのゴール前でパスを繋ぎ、危ないシーンを何度も作り出した。

この点は長いシーズンを戦い抜く上で大きな課題となってきそうだ。

もっとも、トーマス・トゥヘル監督はしっかりと問題点を認識していて、「チャンスを与えすぎたため、失点は時間の問題だった。いくつかの課題が浮き彫りになった」と話している。克服へ向け、練習の時間を割いていくことだろう。

とにかく、攻撃陣がフォーカスされがちな現状ではあるが、守備面の課題は少なくない。だからこそ、ゴール前にビュルキという信頼を置ける守護神がいることが、好調の大きな要因の一つだと言うことができるわけだ。

文=Von Stefan Döring