今シーズンのブンデスリーガで最大のサプライズになっているのはRBライプツィヒだろう。第6節アウクスブルク戦に2-1で勝利し、ブンデス1部初挑戦のクラブとしては初となる開幕6戦無敗(3勝3分)という新記録を打ち立てた。欧州チャンピオンズリーグ参戦組であるドルトムント、ボルシアMGに加え、開幕から好調を維持するケルンとの試合を消化して無敗を維持している事実は特筆すべきことである。

激しいプレッシングと素早い切り替えで相手を陥れるスタイルとその躍進は、2008-09シーズンにブンデス1部初挑戦ながら前半戦を首位で折り返したホッフェンハイムを彷彿とさせる。

それもそのはず。現在ライプツィヒでスポーツディレクター(SD)を務めるのは、当時ホッフェンハイムを率いていたラルフ・ラングニック氏であり、彼が連れてきたのが同じスタイルを志向するラルフ・ハーゼンヒュットル監督なのだ。

ハーゼンヒュットル監督は昨シーズン、インゴルシュタットを率いてバイエルンと対戦した際、勇敢に前線からプレスを掛ける戦術を用いて王者を苦しめた。当時の指揮官ジョゼップ・グアルディオラ(現マンチェスター・シティ)に「すべてのチームがインゴルシュタットのように戦えば、ブンデスリーガはもっと魅力的なリーグになる」とさえ言わしめた手腕の持ち主だ。

ハーゼンヒュットル監督が就任してからわずか2か月ほどでライプツィヒは劇的に進歩した。前線から組織的にプレスを掛けて相手を追い込み、ボールを奪えば迷うことなくゴールに迫っていく。ブンデスで最も平均年齢の若いチームは疲れを知ることなく、終盤15分のゴールが最も多い。第2節ドルトムント戦でも終盤でペースが落ちるどころかギアを上げていき、終了間際に決勝点を奪ってみせた。

ユルゲン・クロップ時代のドルトムントに代表されるように、近年ドイツでトレンドとなっている戦術ではある。もっとも、ここまで完成度の高いチームはなかなかお目にかかれない。ライプツィヒは今後も注目を集めることになるだろう。

ただ、保守的なファンが多いドイツでは、大手飲料メーカーのマーケティング手段となっているライプツィヒが快く思われない傾向にある。実際、ライプツィヒがアウェー戦に赴くたびに反対運動が起こり、対戦相手のコアサポーターたちはライプツィヒへの遠征をボイコットしている。

ドイツでは大企業の援助を受けるクラブが「プラスチック・クラブ」と呼ばれている。「プラスチックのように人工的に作られたクラブ」という意味の皮肉である。ライプツィヒはその筆頭として、ドイツでいま最も嫌われているクラブになっているのだ。

もっとも、伝統的なクラブが幅を利かせるドイツでは、ライプツィヒのようなプラスチック・クラブがリーグに多様性をもたらしている。同じようなタイプのクラブばかりでは面白みがないし、古き良きを追求するだけでは革新は生まれない。近年、明白になったプレミアリーグとの資金差を埋めるためには、リーグに風穴を開けるような存在も必要だ。だからこそ、ライプツィヒを野心的なプロジェクトとさえ考える人も少なくない。

では一体、街の人々はクラブをどう見ているのだろうか?「クラブへの注目は高いわ、でも」――逆説の接続詞を強調しながら、街の広報誌でスポーツコラムを担当するシュレーハーンさんが教えてくれた。「街の中にもクラブに反対する人が多いのも事実よ。彼らは他の伝統的なクラブを応援しているの。明確にライプツィヒへの反対意思を表明する人もいるわ。スタジアムに来ているのは、そうでない人たちなの」

ライプツィヒは今季、旧東ドイツの地域で唯一1部で戦っているクラブだ。そもそも旧東ドイツのクラブが1部で戦うのは8シーズンぶりのこと。それまで、この地域の人々はブンデスリーガの試合を見るために150km離れたベルリンまで足を運ばなければならなかった。ただ、レベルの高い1部のサッカーが見たいファンにとって、クラブがどのように運営されているかなんてどうでもよいことだ。おらが街に1部に所属するクラブがあるなら、そちらを選ぶ。

そんな観客で埋め尽くされたスタジアムでは、程度の違いこそあれ、ドイツの他のスタジアムと同じようにプレーに声が上がり、審判にはブーイングを浴びせられる。ゴール裏にだってコアサポーターが陣取っている。

それでも何となく違和感が拭えないのは、急速にカテゴリーを上げてきたクラブのファン文化が発展段階にあるからだ。

「ゴール裏に陣取る彼らも『ウルトラス』とは呼べないわね。周囲から厳しい視線に晒されていることもあって、クラブはサポーターグループと綿密に話し合いを重ねてすべてをコントロールしようとしているの。掲げられるフラッグや横断幕もクラブから許可を得たものだけなのよ」

アウクスブルク戦の後半には、新スタジアムへの移転計画に反対するバナーがゴール裏から掲げられたが、これもクラブの許可を受けているという。クラブへの批判すら、クラブからのお墨付きなのだ。この他にも、ブンデスで唯一立見席がなく、他のスタジアムでは黙認されているアウェー席以外でのアウェーチームのユニフォーム着用が禁止されているのもレッドブル・アレーナの特徴だろう。これもクラブがスタジアムを「クリーン」に保つための努力だ。その甲斐あって、スタジアムは健全に保たれている。

ファン文化が熟成していないこともあって、観客の応援はどこかぎこちない。それがライプツィヒの独自性であり、魅力だからだ。ただ、贔屓チームの勝利に喜びを爆発させるその姿は変わらない。今後、クラブの躍進とともに、ファン文化がどのような発展を見せるか楽しみだ。

文=山口裕平