原口元気は欧州リーグでプレーする日本人選手の中で今、最もチームに貢献している。持ち前の機動力をベースとした攻守の活動量は安定して高く、日本代表のヴァイド・ハリルホジッチ監督が掲げる“デュエル”(1対1の強さ)もドイツ人選手に負けていない。90分間、落ちることのないハードワークと推進力の強いドリブル、激しくも粘り強い守備など、原口の存在なくしてヘルタ・ベルリンの好調は語り得ないと言えるほどだ。

開幕5試合で3勝1敗1分の好成績を挙げているヘルタ・ベルリンにあって、フル出場は中盤から前では原口とボランチのファビアン・ルステンベルガーのみ。その事実がヘルタ・ベルリンにおけるパル・ダルダイ監督の揺るぎない信頼を表している。両サイドハーフをこなす原口は主に左で起用され、攻守に渡る奮闘でチームを支えている。

ヘルタ・ベルリンの4−2−3−1においてサイドハーフは最もハードワークを強いられるポジションだ。高い位置からプレッシャーをかけ、相手の攻撃に応じて自陣まで下がり、事実上の4−4−2でライン際の守備を固める。同サイドのサイドバックやボランチとコンパクトな関係を作りながら、局面でタイトにボールホルダーを潰していく。味方がボールを持てばすぐに切り替え、時にドリブルで、時にはランニングで攻め上がる。もちろんチャンスと見ればダイアゴナルの飛び出しでゴールに絡む。

左サイドではボランチのルステンベルガーとSBのマルヴィン・プラッテンハルト、右ならペル・シェルブレットとSBのペテル・ペカリークとの三角形が攻守両面でカギを握る。原口が周囲に合わせるだけでなく、積極的な動き出しで引っ張る様に見えるのは、プレーの決断が素早く明確になってきているからだろう。原口の成長に加え、リーグ7位の昨シーズンから主力がほとんど変わっていない点も強みになっている。

主力に定着しながら2得点に終わった昨季からの成長の証として、開幕前から数字にこだわることを宣言していた原口。ここまで5試合で得点なし、アシストも第2節のインゴルシュタット戦で挙げた2つに止まっていることは納得がいかない結果だろう。第4節のバイエルン・ミュンヘン戦ではアウェーとはいえ、チームも原口個人も通用せず0−3で敗れ、王者との実力の違いを突き付けられた。

8月28日にヘルタ・ベルリンはブンデスリーガの開幕戦を迎え、昇格組のフライブルクに2−1で競り勝った。先発した原口は積極的なドリブルやシュートで攻撃に勢いをもたらし、FWヴェダド・イビセビッチへの効果的な縦パスで、ブラディミル・ダリダによる先制点の起点となった。さらに同点に追い付かれて迎えたアディショナルタイムに果敢なドリブルを仕掛けてバイタルエリアの打開を試み、ユリアン・シーバーの決勝点を呼び込んだ。

「元気はアグレッシブに攻守に渡って貢献できる選手」

9月6日に行われたロシア・ワールドカップ・アジア最終予選のタイ戦後、日本代表として共にスタメンでプレーした香川真司は原口をそう評価していた。代表に合流してわずか2日後の試合となった同1日のUAE戦ではラスト15分間の出場にとどまったが、タイ戦はチームが低調なパフォーマンスに終わった中で、原口の奮闘が際立った。プレーが全てにおいて正確なわけではないが、アグレッシブかつ精力的で、力強さがあった。またワイドなポジションをベースとしながらも、左サイドバックの酒井高徳を効果的に引き出すなど、戦術的なインテリジェンスも見られた。

「キヨくん(清武弘嗣)や(宇佐美)貴史とも特徴が違いますからね。僕は僕の良さを出そうと思ったけど、自分の良さだけ考えていても監督の求めているものとは違うので、何度も、何度も裏に走るということも、きついですけどなるべく心がけてやりましたので、バランス良くできたかなと思います」

先制点は、ボールを奪った山口蛍のパスから右サイドバックの酒井宏樹がクロスを上げ、ゴール前でフリーになった原口が見事なヘッドを叩き込んだ。なかなか追加点が入らないまま、カウンターからGK西川周作が1対1で防ぐシーンもあるなど、ややリスキーな展開の中で浅野拓磨のゴールが決まり、2−0で勝利。MOM級の働きを見せた原口だが「僕自身、2点目、3点目を取れるチャンスはあった。もっと強い相手になった時にああいうところで決めていかないと苦しい試合もあると思います」と戒めた。

そうした強い意識がドイツでも表れたのか、第2節のインゴルシュタット戦は1試合2アシストを記録しただけでなく、攻守両面でハイパフォーマンスを発揮した。1点目は相手のサイドチェンジを味方が引っ掛けたこぼれ球から、素早く正確なスルーパスでイビセビッチの抜け出しからのシュートを演出した。そして終盤には右サイドから一気に左のスペースへ流れて味方のパスを引き出し、右足の落ち着いたクロスを2戦連続で途中出場のシーバーに合わせた。

2つのアシストもさることながら、スペースを見つけて使う動きが速く、原口だけが動いていると錯覚しそうなシーンもある。それは周囲の選手が止まっているのではなく、時に原口だけが別の方向へ素早く移動しているためだ。その時にどこへ動いて、どのタイミングでボールを引き出せば効果的なドリブルやチャンスの起点になるパスにつなげることができるのかを意図した動き。それは精力的であってもがむしゃらではないということだ。

開幕戦に続き、このインゴルシュタット戦でもブンデスリーガ公式サイトのマン・オブ・ザ・マッチに選出された原口についてダルダイ監督は「元気が再びピッチ上で一番のパフォーマンスを見せた。彼は良い働きを見せてくれたし、特に2点目のアシストは素晴らしかった」と称賛の声を発している。ダルダイ監督としては原口の才能を認めながら、時に厳しく熱い指導をしてきた様だが、まさしくその成果が表れた試合だったと言える。

第3節のシャルケ戦もハードワークとタイトな守備は欠かさず2−0の勝利に貢献したことは間違いないが、原口本人は満足が行かなかった様だ。その理由が得点に絡むことができなかったからだという。取材に対し、「今年はプラスアルファで数字を出したい。1試合1試合出していかなければ」と語った原口。彼にとって攻守の献身的なハードワークでチームに貢献するのは当然のノルマであり、そこにゴールやアシストという明確な数字をいかに加えられるかが大きなテーマなのだ。

全勝同士で相見えた第4節のバイエルン・ミュンヘン戦はヘルタ・ベルリンにとっても原口にとっても、厳しい現実を突き付けられた。中盤でなかなかボールが奪えないばかりか、この試合で任された右サイドもフランク・リベリーやダビド・アラバといった選手たちに蹂躙された。ボールを持って仕掛ける位置が低く、前に運んでもチャンスまで持ち込むことができなかった。

ブンデスリーガ公式サイトでは「前半は手も足も出なかった。後半はもう相手が緩めたというか、前半しか本気を出していないのは感じました」という原口のコメントが伝えられている。第5節のフランクフルト戦も左サイドハーフでフル出場を果たしたが、3−3の引き分け。機を見てチャンスに絡む形を狙っていたが、右サイドからの攻撃が多くなり消化不良だった。

欧州でプレーする日本代表クラスの選手が序盤戦でなかなか出場チャンスを得られない状況で、ここまで最も起用され、最も強いインパクトも残している。だからこそ、チームを直接的に勝利に導くアシストやゴールに絡むプレーや、苦しい時間帯にチャンスを生み出す打開力、自分のサイドにボールを集めるパーソナリティーなど、さらにステップアップするための課題も感じられる。原口本人がしっかり自覚して前を見つめていることは非常に頼もしい。

今シーズンを通して原口がどういう結果を残し、成長するのか。幼少時から“天才”と評された男は明確な“目標”と“努力”でさらなる推進力を見せてくれそうだ。

■原口元気 開幕戦8/28〜第5節9/24

総合評価:7.0
インパクト:7.0
安定感:6/5
貢献度:7.0

文=河治良幸(サッカージャーナリスト)