ホルヘ・サンパオリはリーガ・エスパニョーラの開幕から注目を集めている監督のひとりだ。ヨーロッパで指揮をする初めての経験に挑むこのアルゼンチン人監督は、スペイン国内で注目を持って観察されている。ウナイ・エメリ前監督がもたらした数々の勝利に酔いしれたセビージャをこれからも勝たせ続けるという任務を背負って、監督の仕事をこなしている。

サンパオリ監督はリーガ、チャンピオンズリーグ共に非常に幸先の良いスタートを切り、アンダルシアの州都セビージャにすぐにフィットした。ホームのラモン・サンチェス・ピスファンでは、ベティスとのアンダルシア・ダービーを含むすべての試合で勝利し、南米の情熱を胸に、セビージャのサポーターと良好な関係を築き始めている。

ただし、決して馴れ合いの関係になっているわけではない。指揮官は「サポーターが練習場から離れたところにいるべきだ」と考えている。その上でセビージャのトレーニング施設である“シウダー・デポルティーバ・セビージャ”を休むことなく稼働させ、ウナイ・エメリ監督とは異なるフィロソフィーを選手に浸透させようとしている。

フィロソフィーの浸透――。それを達成するため、このカシルダ出身の指揮官は、少々言い古された、とはいえ彼の日常の仕事にとってはひとつの現実であるひとつのテーマを引き合いに出す。

「ボールは偉大なる主役である」と。

セビージャのトレーニングはほぼ80%がピッチの上でボールを使って行われる。チームが超攻撃的かつピッチで支配者となることを目的に、メニューが組まれているのだ。

■チームスタッフとトレーニング、すべてはアイデアのために

サンパオリが信頼を置く部下は、彼と同じ名前を持ち、姓をデシオという。ホルヘ・デシオは、アラベスがUEFAカップで準優勝をした当時に所属していた偉大な選手(エルメス・デシオ)の兄弟であり、サンパオリとは20年以上も仕事を共にしている。彼に課された役割はフィジカルトレーナー。チームのアルゼンチン人選手から“プロフェ(先生)”と呼ばれ、いつもトレーニングセッションの最初の数分、ボールを使わないフィジカルに特化した練習を主導している。

とはいえ、すぐにボールが練習の主役となる。セビージャの選手たちはペアになってパス練習を行い、身体を温める。次に、狭いスペースでプレスをかけながらのポールポゼッションの練習に移る。そこではスティーヴン・エンゾンジやサミール・ナスリのようなチームのブレインとなる選手たちがあらゆるバリエーションのパスを見せ、輝きを放つ。

プレス、素早いボール奪取、そして高いボールポゼッション率というサンパオリの考えを、選手たちは少しずつだが習得してきていて、そのことはピッチやトレーニングで日に日に強く感じられる。

アシスタントを務めるイニゴ・ドミンゲスが主導するトレーニングで、選手たちがほんの数メートルのスペースでボール奪取とキープの練習をしていると、指揮官は何度も「ボールで楽しめ」と繰り返し選手たちに伝えている。

「公務員のような選手をチームが抱えることはできない。選手たちはトレーニングを楽しまなければいけないし、私たちはそのために必要な雰囲気を作り出す必要がある」

指揮官はクラブの公式メディアのインタビューでそう説明する。

チームスタッフは選手たちがどうすればゴールを奪えるかについて常に考えていて、練習は選手たちが実際の攻撃のシチュエーションを作り出しながら行なわれる。そうすることで、ピッチでの守備の動きも同時に確認ができるようになっている。

サンパオリと親交が深く、「選手にはならなかった者同士」のフアンマ・リージョは、チームの第2の監督だ。このバスク人は、スペインの様々なチームで残した悪い結果ばかりが注目されるが、選手一人ひとりとの仕事については特筆すべきものがある。リージョは各練習を観察しながら選手のミスを修正し、勇気づける。また、身体を痛めた選手がいれば、トレーニングが終わるまで常に痛み具合を気にかけている。アシスタントのマティアス・マンナ、マルティン・トカリも選手のひとつひとつの動きを見流すことはなく、ヘスス・オリベイラは高いところから練習を撮影する役割を負っている。

ハビ・ガルシアは、ウナイ・エメリ時代からチームに残る数少ないスタッフのひとりだ。このポルトガル人ゴールキーパーコーチはサンパオリ監督とも仕事を継続していて、そのダイナミズムは変わることはなかった。セルヒオ・リコとダビド・ソリアの両選手、そしてサルヴァトーレ・シリグの才能を開花させるためにコーチを務めていて、あらゆる事態を想定した練習を行う。エメリ時代にも足元の練習は行っていたものの、今の新しいシステムではよりボールに絡む練習を多く課している。

■カンテラチームとのスパーリング

ホルヘ・サンパオリは、カンテラの選手たちを起用する意思もすでに見せている。カルロス・フェルナンデスは彼の起用のもとリーガデビューを果たしてゴールも決めてみせたし、フアン・ソリアーノやディエゴ・ゴンサレスも練習ではすでに見慣れた顔となった。また、素晴らしいテクニックを持つミッドフィルダーのボルハ・ラッソはチャンピオンズリーグの出場選手として登録されている。

監督は、トップチームの近くで練習をさせながらカンテラの選手たちも同時にチェックするという、革新的な方法を取っている。「サンパオリは、カンテラをチームのスパーリングの相手として活用しているんだ。でもどんなチームでもよいというわけではないよ。セビージャの将来のプロジェクトでより重要になる選手を呼ぶことで、監督は彼らのプレーをより詳しく知ることができるし、カンテラの選手たちもチームのプレースタイルを学ぶことができるんだ。そういった意味で革新的なんだよ」と、モンチSD(スポーツディレクター)は話す。事実、トップチームがセビージャ・アトレティコやCチームと対戦をしない週は、もはや珍しくなっている。

このように、ホルヘ・サンパオリは様々な手法をカクテルのように織り混ぜながら新天地セビージャの強化を図っている。チームの勝利という絶対的な目標を忘れることなく、ヨーロッパ初挑戦の環境で選手とファンに刺激を与えているのだ。

文=フランシスコ・リコ/Francisco Rico