今シーズン、浅野拓磨はシュトゥットガルトでアタッカーとして上々のスタートを切ったが、ストライカーとしての課題に直面している。

プレミアリーグの名門アーセナルに加入したものの、労働ビザがおりず、経験豊富な日本人MFの細貝萌も所属するドイツ2部のシュトゥットガルトにレンタル移籍した。81分から途中出場でデビューした第4節ハイデンハイム戦の後で、ヨス・ルフカイ監督が辞任してしまう想定外の出来事もあった。しかし、アシスタントコーチから暫定的に昇格したオラフ・ヤンセンのもとで3試合連続のスタメン出場を果たしている。

その期待に応えるべく奮闘する浅野は第6節のブラウンシュバイク戦で勝負を決定付ける2得点目をアシストし、続くボーフム戦では先制ゴールの起点となるポストプレーを成功させた。4-4-2と4-1-4-1を使い分けるチームで2トップと左右のサイドハーフをこなす浅野はポジションに応じたプレーで多くのチャンスに絡んでいる。一方、最大の武器である裏への飛び出しは、今のところ不発気味といった状況にある。

■初先発で見せた存在感

新監督のもとで最初の試合となった第5節のカイザースラウテルン戦は長身FWのシモン・テロッデとともに4-4-2の2トップで先発出場。前線を精力的に動いて味方のパスを引き出すと、テロッデがポストで落としたボールにファーストタッチから加速して、右ワイドから惜しいシュートを放った。後半は左サイドハーフに移ると、自陣で守備に参加したところから同サイドで味方がボールを奪い、エミリアーノ・インスーアのクロスからテロッデが合わせる先制ゴールが生まれ、これが決勝点となった。

初先発としてはまずまずの存在感を見せたが、チームが22本のシュートを記録した中で浅野は2本のみ。得意の形からゴールを奪うことはできなかった。ブラウンシュバイク戦は4-1-4-1の右サイドハーフでスタートし、自陣から相手陣内の深くまでドリブルで持ち運ぶなど、サイドでの仕事が目立った。味方のMFベルカイ・エズカンが粘り強くつないだところから低い弾道のミドルシュートを放ったが、相手GKに難なくキャッチされた。

なかなかシュートチャンスを見出せなかった浅野だが、64分にリーグ初アシストを記録する。ドリブルで右サイドを快走すると、クロスは一度防がれるも、戻ってきたボールをさらに前へ持ち出し、エリア内のファーサイドでフリーになったグロスクロイツに向け、クロスというよりは“サイドからのラストパス”と表現できる見事なボールを送った。勝利へ大きく前進させるアシストを記録した浅野だが、この日も前記のシュート1本のみ。裏のスペースに抜け出してパスを引き出すことはできないまま、68分に前節と同じくイェーン・ツィンマーと交代した。

■2戦連続での右サイドハーフとライバルの2ゴール

第7節のボーフム戦は、アシストを記録した第6節のブラウンシュバイク戦に引き続き4-1-4-1の右サイドハーフで先発。右サイドのワンツーから反転で左足シュートに持ち込むと、さらに左からのクロスに飛び込んでいくなど、右サイドから果敢なプレーを見せた。そして2トップ気味の布陣に切り替わった後半には縦パスを2人のDFに寄せられながら右へ展開。右サイドバックのフロリアン・クライン、アレクサンドル・マクシムとつながり、最後はグラウンダークロスをクリスチャン・ゲントナーがダイレクトで捉え、ミドルシュートを突き刺した。

このボーフム戦でも68分にツィンマーとの交代で下がった浅野は5試合の出場(うち先発が4回)でシュートは6本、1アシスト、1つのゴールに起点として絡んだ。その後、インターナショナルマッチウィークに伴い、日本代表に合流。浅野が不在の中で開催された10月4日のグロイター・フュルト戦では、代役として4-1-4-1の右サイドで先発したカルロス・マネが2ゴールを決めるなど、シュトゥットガルトが4-0で勝利している。

日本代表に合流して3日後に迎えたイラク戦は75分に岡崎慎司に代わって出場。間もなくDFの吉田麻也が前線に上がるパワープレーとなった状況で、吉田の落としたボールに我先に飛び込んだが惜しくもゴールはならず。後半アディショナルタイムに山口蛍が鮮やかなミドルシュートを決め日本を救ったことは周知の通りだが、浅野は「自分はニアに走って、そのあとは見送るだけでした」と振り返る。

イラク戦の後も「クラブのことは気になっています。チームが勝利して、ライバル(マネ)が先発してゴールを決めたので」と語る浅野はドイツの新しい環境で複数のポジションを担いながら、積極的なプレーでチームに勢いをもたらしている。特にドリブルで仕掛ける意識はJリーグのときよりも高く、海外に出た中で見られた変化の一つと言って差し支えないだろう。

■課題は味方から“自分を活かすパス”をもらうこと

一方で課題となるのはゴールだ。得意の飛び出しからゴールに迫る形を出せていない。

「試合の中でボールを失う回数が多い。日本だったらいい質のパスが出るところでも、むこう(シュトゥットガルト)だといい質のパスが出るかどうかもあって。パスがつながらない中でもボールを保持することと、取られたあとの切り替えを上げていかないといけないと思っています」

浅野自身がそう語るように、持ち味を発揮するためには味方との連係が必要不可欠になってくる。自分の持ち味を生かすために、密にコミュニケーションを取り、パスを求めていくことがもっと必要なのだ。そのためにはゴールという結果を残し、チームメートたちから信頼を得る必要がある。だからこそ、今は多少強引な形からでも得点を狙っていく必要があるだろう。

もちろん、大きな目標は最終予選の突破に貢献し、ロシアW杯に出場すること、そして労働ビザの条件になる2年間で国際Aマッチ75%を満たし、アーセナルにレンタルバックすることだが、それまでにドイツでやるべきこと、学ぶべきことは多くありそうだ。

まずはドイツで初ゴールを決めること。そしてシュトゥットガルトのブンデスリーガ1部昇格に向け、しっかりと貢献していくこと。その積み重ねが成長につながっていくことは間違いない。

6日のイラク戦では75分からの途中出場となったが、11日のオーストラリア戦でも出場の可能性は高い。代表でゴールを決めて、その勢いをクラブに持ち帰ってほしいところだ。

■浅野拓磨 9/10-10/6

総合評価:7.0

インパクト:7.0

安定感:6.5

貢献度:7.0

文=河治良幸(サッカージャーナリスト)