アーセン・ヴェンゲルは20年に渡り、アーセナルで長期政権を築いてきた。いろいろな意見があるにせよ、彼がクラブに多くの成功をもたらしたことは確かだ。2003−04シーズンの無敗優勝を含む3度のリーグ制覇、カップ戦での栄光、チャンピオンズリーグでは優勝こそないものの、チームをファイナル進出に導いた。

しかし、今シーズン限りで両者の契約は切れる。契約更新の可能性は残されているが、ヴェンゲルが違う道を歩むことを決断すれば、それは同時にアーセナルが20年ぶりに新しい監督を連れてこなければいけないということを意味する。

今のところ自身の進退について、チームの成績によって5月頃に決定が下されるだろうと語っているが、契約更新に必要な成績の最低ラインがチャンピオンズリーグ出場権なのか、国内タイトルなのかは不透明なところだ。

最後に契約が更新されたのは2014年、9年ぶりに好成績を残したあとに結ばれた。契約が切れるちょうど1カ月前に更新されたものだった。来年、同じことが起こる可能性は低くない。

ただし、いつまでもヴェンゲルの時代が続くわけではない。ガナーズファンなら、“その時”が来る日に備えて心の準備をしておく必要はあるだろう。

■後任候補はボーンマスのハウ?

繰り返しになるが、ムッシュは在任期間中にプレミアリーグ優勝3回、FAカップ優勝6回、チャンピオンズリーグ決勝進出1回(決勝で敗れたため思い出したくないファンもいるかもしれないが)、そしてエミレーツスタジアムへの移転に大きく携わるなど、様々なことを成し遂げてきた。多くの財産をクラブに残してきた。特に一貫した哲学のもとで選手をマネージメントしていた点は称賛に値する。

ただし、20年という年月を考えれば、もっと多くのタイトルを取らなければいけなかったかもしれない。そういった声があるのは事実だし、確かに一理ある。

だからこそ、ノースロンドンの赤いクラブは“ヴェンゲルのいないアーセナル”を作る準備をすでに進めている。チーフエグゼクティブのイヴァン・カジディスのもと、数か月前から準備に入っている。

すでに報じられているように、後任候補として名前が挙がっているのがボーンマスのエディー・ハウ監督だ。攻撃的なフットボールを信条とするイギリス人指揮官は、ヴェンゲルの正当な後継者になるかもしれない。

■ヴェンゲルがアーセナルにもたらした魅力

タイトルの数は成功の指標であるとともに、サポーターを満足させられたかどうかの基準となる。プレミアリーグのチケットを買っているサポーターたちは、トロフィーを得られずに満足していられるほどお人好しではない。特にアーセナルはリーグ屈指……つまり世界で有数の高額なチケットを販売しているクラブである。

シーズン終了までの7カ月の間に、我々はアーセナルがタイトルを獲得できるのか、あるいは善戦しながら何も得られずに終わるのか、知ることになる。

仮に栄光をつかめなかった場合、ヴェンゲルがエミレーツ・スタジアムから去る未来が現実味を帯びてくる。

しかし、ここまでオフィサーがクラブを去る未来について書いてきて大変恐縮だが、そうなってほしくない、という思いもあるのは隠しようのない事実だ。

現在、セオ・ウォルコットやアレクシス・サンチェス、サンティ・カソルラのパフォーマンスは素晴らしい。アレックス・アイウォビ、ヘクトル・ベジェリンなどの若手もしっかりとヴェンゲルの信頼に応えるパフォーマンスを披露している。この状態を継続できればあるいは……という思いは毎年してきたわけだが、それでも周囲にそんな期待を抱かせてしまうのがアーセナルの持つ魅力である。

ヴェンゲルは一貫して己の信念とフットボールの哲学を貫いてきた。1996年にイングランドに来たときは「Who is Wenger?」と言われた男が、今では(少なくともフットボールファンの間では)知らない人がいないほど、イングリッシュフットボールの世界の一部となっている。

66歳にして“老将”というフレーズは似合わない。ヴェンゲルは今も世界中のクラブから求められる指揮官だ。イングランド代表、パリ・サンジェルマン、アーセナルを率いる前に数年を過ごした日本からも晩年を過ごしてほしいという声が挙がっていると聞く。

しかしながら、それでももし今シーズン、タイトルを取ることができたとしたら、アーセナルはヴェンゲルともう一度契約を交わすために、あらゆる努力をするべきだろう。

サー・アレックス・ファーガソン監督は71歳までユナイテッドを率いた。66歳は、まだ老け込む年齢ではない。

原案=クリス・ウィートリー 編集=Goal編集部