フランスの有望な若手に過ぎなかったウスマン・デンベレは今季、綺羅星の如くドイツに現れ、ドルトムントで重要な選手になりつつある。

デンベレは今夏、フランスのレンヌからドルトムントへ1500万ユーロ(約18億円)という移籍金で加入。初年度からサイドの仕掛け人として存在感を示している。

9月27日に行われたレアル・マドリー戦後、デンベレがすでにチームに溶けこんでいることがよくわかるシーンがあった。デンベレは広告ボードの後ろからいたずらっ子のように顔を出して、新たな「親友」であるピエール=エメリク・オーバメヤンをからかった。世界屈指のスピードを誇るオーバメヤンに向かって、「早くおしゃべりは終わりにしろよ」と何度もフランス語で叫んだ。というのも、2−2で幕を閉じたレアル戦の後、あまり注目を浴びなかったデンベレと違い、1ゴールを挙げたオーバメヤンはメディアによるインタビューで引っ張りだこになったため、小柄なフランス人は待っているしかなかったのだ。

デンベレは試合を終えて両親の迎えを待つ小さな子供のように、半ズボン姿でそこに立っていた。永遠にも思える長い時間が経ってオーバメヤンが歩き出し、二人は一緒に立ち去った。

しかしピッチ上では、デンベレは誰のことも待つ必要がない。相手が誰であろうと同じことで、ドリブルを仕掛ける姿に不安は全く見られなかった。たとえ対戦相手がすでに世界的なセンターバックとして地位を確立しているラファエル・ヴァランやセルヒオ・ラモスのような選手だったとしてもだ。そして、レアルのディフェンスは幾度となく仕掛けてくるデンベレに翻弄され続けた。

■改善点は「判断」

一方で、10月1日に行われたレヴァークーゼン戦の敗北はデンベレに直接の責任があったと言わざるを得ない。天才的なドリブルを見せながら、パスに安定性を欠くデンベレに改善すべき点は多い。それは相手MFのラース・ベンダーに繰り返しボールを奪われたことからも見て取ることができる。判断を学ぶ必要があるのは明らかだ。

デンベレは自分一人でゴールへの道を探ろうとすることが非常に増えてきている。もっとも、必ずしも好ましいことではない。シーズンの初めにはチームメートに任せる選択をしていたが、今ではコンスタントに自分で決着をつけようとしている。それが必ずしもうまくいくわけではないことを、デンベレはレアル戦とレヴァークーゼン戦で学ぶ必要があった。「僕はいつだって状況に応じて判断するんだ。ほかのプレーヤーの方がいい位置にいると思えば、パスを出す。もちろん、ときには自分でもシュートしようとする。だけど、いつだってその瞬間に判断する必要があるんだ」と語るが、まだまだ改善の余地はあるだろう。

当然のことながら、19歳という年齢ですぐに身につくようなものではない。この数週間、1500万ユーロ(約18億円)で獲得された若手ドリブラーのプレーには光と影が交錯している。あるときは息を飲むような素晴らしいドリブルを見せ、あるときは型破りな動きやミスパスで観客にため息をつかせた。

それでも、簡単にとんでもない芸当をやってのけるフランス人ホープにトーマス・トゥヘル監督はすっかり魅了されている。「デンベレのドリブルやスピードは予測不能だ。彼は我々にとって、とてもとても重要な存在なんだ」と話し、信頼を示した。

トゥヘルは期待をかけるのと同時に、成長に関して人一倍注意を払っている。1試合の間に指揮官はデンベレを何度もピッチサイドに呼んで、集中的に指示を出す。「まだ互いに互いを知り合う段階」と理由を説明するトゥヘルだが、彼の一番の武器を奪うつもりは毛頭ない。デンベレには「自由にやらせるべきだ、1対1の戦いにおける彼の創造性と強さを十分に生かすべきだ」と監督は考えている。

たとえ厳しい試合日程に直面しようとも、トゥヘルはデンベレとともに歩みを続けることだろう。監督は「デンベレが多用するドリブルをチームの中に落とし込む」という計画を開始するつもりだ。「デンベレの若さ、恐れを知らない心、これらはそれだけで価値あるものだ。我々はそれをうまく使いたいと思う」とバランスを取る必要性を語った。

■素晴らしい仲間が成長の後押しに

とはいえ、デンベレが新たなチームに急速に馴染んでいることも事実だ。ブンデスリーガで1ゴール2アシスト、チャンピオンズリーグで2つのゴールにつながるプレー、と数字も示している。チームに溶けこむにあたって彼の助けになったのは「素晴らしい仲間」がいるということだ。デンベレは「僕たち全員がお互いによく理解し合ってるんだ。サッカーがとても楽しい。試合も楽しんでできている。僕らのプレーにもよく現れているんじゃないかな」と語り、チームメートへの感謝を惜しまない。

今のところデンベレは、スピードを武器とする二人、オーバメヤンおよびエムレ・モルとよく理解し合っているが、ラファエル・ゲレイロも、同じようにフランス語を話すため重要な仲間となっていることは見逃せない。

先輩ストライカーについてデンベレは「何か聞きたいことがある時は、いつだってオーバが教えてくれる。彼はものすごく親切だね」と大きな信頼を語った。また、ゴールハンターのオーバメヤンも、矢のように素早い後輩MFを可愛がり、「僕にとって弟のようなものだ」と話している。

■欧州屈指のメガクラブではなくドルトムントを選んだ選択は成功

“黄色い壁”を形成する人々は、デンベレがドルトムントへの入団を決めたことを誇りに思っている。「ヨーロッパの大きなクラブのほとんどが彼の加入を望んでいた」とハンス・ヨアヒム・ヴァツケCEOも誇らしげに語る。

「我々は、ウスマンが次世代における欧州最大の注目株の一人であると信じているよ。彼の中には巨大なポテンシャルがある」

実際、バルセロナやパリ・サンジェルマンよりドルトムントを好んだフランス人の選択は正しかった。ドルトムントで安心して自分の才能を伸ばし、弱点に取り組むことができているのだから。繰り返しになるがデンベレはまだ“待たされる側”の人間だ。しかし、彼が徹底してそれをやり遂げれることができれば、まもなく彼はインタビュアーに囲まれることになり、他のプレーヤーを“待たせる側”になっていくはずだ。

文=シュテファン・デーリング/Von Stefan Döring