「欧州チームは2日間、米国チームは4週間」

 これは、ライダーカップポイントランキングに基づいてチームメンバーが決まった後、キャプテン推薦による残りの数名が加わり、12名のメンバー全員が決定するまでに要する各チームの所要時間の違いだ。

 欧州チームは8月末のわずか2日間で12名が早々に確定した。だが、米国チームはプレーオフ第1戦のバークレイズ終了後にポイントランキング上位8名が決まった後、プレーオフ第3戦のBMW選手権終了後にキャプテンのデービス・ラブが3名を指名。そして、プレーオフ最終戦のツアー選手権終了後、最後の1人が指名され、4週間に及んだ入念な“メンバー選考会"はようやく完了した。

「最後の1人」の候補選手には、たくさんの名前が挙がっていた。もしかしたらタイガー・ウッズが指名されるのではないか。そんな噂も流れ、ラストワンの指名には大きな注目が注がれていた。

 元々、ポイントランキング9位で自力のチーム入りをぎりぎり逃したババ・ワトソンは、持ち前のパワーが距離的にタフなヘーゼルティンナショナルで大きな戦力になるという点で最有力候補だった。

 しかし、キャプテンのラブはランキングや飛距離より、チームメンバーとのペアリングやチームワークを重視する姿勢を見せており、そうなると自己主張が強いワトソンより、温和で底力はあるケビン・チャペル、ケビン・キスナー、ジャスティン・トーマス、ダニエル・バーガーといった若者たちの中から指名される可能性が高そうだと見られていた。

 だが、ラブが指名した「最後の1人」は、その誰でもなく、ツアー選手権でローリー・マキロイに最後の最後まで食い下がり、2位になったライアン・ムーアだった。

 33歳のムーアはアマチュア、大学時代から数々のタイトルを獲得し、今季はジョンディアクラシックで1勝を挙げた通算5勝の実力者。ライダーカップ出場への意欲を胸に秘め、今夏以降は60台のラウンドを幾度も重ね、ツアー選手権では惜敗したとはいえ、素晴らしい戦いぶりを披露した。

「ライアンはマッチプレーに強い。彼のガッツと決断力をイーストレイクの最終日に誰もが見たはず」。それが、ラブがムーアを指名した理由だった。

 興味深いのは「僕が推薦されず、チーム入りが叶わなかったら、副キャプテンとして参加させてほしい」と志願したワトソンの意向をラブが汲み取り、ワトソンはタイガー・ウッズ、スティーブ・ストリッカー、トム・レーマン、ジム・フューリックとともに副キャプテンとして現地入りが決まったことだ。

「ババの気持ちは米国チームのためを想う本物だ」

 かくしてラブが率いる米国チームは12名のメンバーと5名の副キャプテンがようやく確定した。

 ところで、今回のライダーカップを迎えるまでの間、米ゴルフ界では「タスクフォース」という言葉がしばしば使われてきた。これは2年前の前回大会で大敗を喫した直後から、フィル・ミケルソンらが中心になって立ち上げた特別対策チーム。いわば、アドバイザリー・コミッティーのような組織のことだ。

 2014年大会はキャプテンのトム・ワトソンの采配を巡って大会期間中にチームメンバーとの間に軋轢が生じてしまった。険悪な空気はキャプテンとメンバーたちとのコミュニケーション不足へ、パフォーマンスの悪化へと陥り、そんな負の連鎖が「16.5対11.5」という米国チームの大敗につながった。

 同じ失敗を繰り返さないためには、過去のキャプテンやベテラン選手たちをアドバイザリースタッフとして集め、米国を勝利へ導くための戦略や戦術を2年間かけて熟考し、それから実行に移すべきではないか。前回大会の最終日、ミケルソンの頭の中には、すでにそんな「タスクフォース」を創設するアイディアが浮かんでいたそうだ。

「ポール・エイジンガーがキャプテンを務め、米国が勝利した2008年大会のときのように、勝てるチーム作り、勝てるフォーミュラが僕たちには必要なんだ」

 キャプテンとしてのワトソンに対する不信感と米国チームが大敗した悔しさの中でミケルソンが描いた青写真。それを大会直後に具現化したものが「タスクフォース」になった。

 タスクフォースの構成メンバーは今大会のキャプテンを務めるデービス・ラブを筆頭に、過去のキャプテンを務めたレイ・フロイドとトム・レーマン、今大会の副キャプテンであるタイガー・ウッズやスティーブ・ストリッカー、ジム・フューリック。さらに、リッキー・ファウラーのような若手選手や大会を主催するPGAオブ・アメリカの関係者を加えた11名。

 実際にプレーする12名のチームメンバーとは無関係に「米国に勝利をもたらすための頭脳」として選出され、メンバーの選考が始まるまでの間、その頭脳をフル稼働させてきた。もっともタスクフォースはメンバー選考が開始されると同時に「ミッション・コンプリート」ということでその務めを終え、すでに解散されているが、ライダーカップポイントで8名、キャプテン推薦でまず3名、最後に1名を選ぶ2段階方式や、そのプロセスには4週間を費やして熟考するという新システムもタスクフォースによって考え出されたものだ。

 キャプテン1人だけにすべてを任せ、すべての責任を負わせるのではなく、みんなで考え出したシステムにのっとり、みんなで挑む強い絆の戦闘体制。

 ジャック・ニクラスは「ライダーカップは戦争ではない。勝敗より、すばらしいプレーとスポーツマンシップを披露することが大事。タスクフォースなんてものは、勝敗にこだわりすぎて度が過ぎている」とやや批判的だが、そんなニクラス自身、「私はもう引退した身。こんな老体のたわごとを聞く耳は持ってないだろうけどね」と苦笑し、静観するつもりでいる。

 タスクフォースが初めて構成され、タスクフォースが考案した初のシステムで選出されたチームメンバー12名が確定し、あとは開幕を待つばかり。

 果たして、“新生"米国チームは8年ぶりの勝利を収めることができるのか――。米国中がワクワクしている。

文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)