ライダーカップ開幕を明日に控え、米欧両チームのメンバーも関係者もボルテージが上がりっぱなしの様子だ。

今年のライダーカップは41回目の開催になる。過去40回では米国が25勝を挙げているが、米国チームが圧倒的な強さを誇っていたのは、米欧対抗戦になる以前の米英対抗戦時代のこと。対戦相手が英国から欧州全域へ拡大されてからは欧州チームの強さが光り、ここ10大会は欧州8勝、米国2勝。直近の3大会は2010年、2012年、2014年とすべて欧州が勝利した。

そんな中、2014年大会で欧州16.5、米国11.5の大差で敗北した米国側が、その直後から「タスクフォース」を結成し、万全を期して今大会に臨もうとしていることは前回のこの欄で触れた通りだ。

しかし、開幕が近づいた今、燃え上がる激しい戦意はときに大人たちの理性を超えてしまうようで、ヘーゼルティンナショナル内外では、あれやこれやの舌戦や騒動が起こっている。

米国でゴルフアナリストを務めるジョニー・ミラーは、近年の大会で圧倒的な強さを誇ってきた欧州チームが「今年は史上最悪のメンバーだ」と、ついつい言ってしまった。

それを聞いて応戦したのは、つい先日、ツアー選手権を制し、米ツアーの総合優勝に輝いたばかりのローリー・マキロイだった。

「ジョニー・ミラーの言葉は僕たち欧州チームのメンバーを燃え上がらせる最高のモチベーションになる。とはいえ、そもそも僕ら欧州チームは史上最高のメンバー揃いなんだけどね」

こんなやり取りは、ライダーカップにおいては、さほど珍しくないのだが、今年のマスターズを制したダニー・ウイレットの兄でゴルフライダーのPJ・ウイレットがウエブ上にアップした記事は、少々度を越してしまったようで米国側の関係者を激怒させた。

ウイレットの兄が今年のマスターズの際に次々に綴った弟に関する秀逸な記事は、母国の英国のみならず、欧州ゴルフ界、米ゴルフ界でも高く評価されていた。だが、今回はアウエイで戦う欧州チームの勝利を望むあまり、米国のファンのマナーや姿勢、ひいては米国選手や米国チーム全体を侮辱する内容の記事を書いてしまい、ヘーゼルティンナショナルに激しい火花を散らしてしまった。

米国側の激しい怒りを知り、ウイレットが兄に代わって米国キャプテンのデービス・ラブに謝罪した。欧州キャプテンのダレン・クラークも「ああいう記事が出たのは残念なこと。あの記事の内容は欧州チームの本意とは無関係」と言明した。記事を書いた本人も「欧州の勝利を願うあまり、ついつい書いてしまった。騒ぎを起こして申し訳ない」。

そんな「ついつい」の言動が大人たちの間のあちらこちらで見られることは、もちろん大っぴらに褒められたことではないが、ライダーカップならではの現象ではある。

一方、米国側では、欧州に対してではなく“身内"において、こんな騒動があった。

今回でライダーカップ出場が11回目になる大ベテラン選手のフィル・ミケルソンは、前回大会でキャプテンのトム・ワトソンの采配に疑問を抱き、新システム「タスクフォース」を考案して今大会の最強の体制作りに貢献した立役者でもある。

だが、キャプテンが勝敗に与える影響の大きさを会見で問われたミケルソンは、ついつい妙なことを口走ってしまった。2004年大会の米国キャプテン、ハル・サットンを引き合いに出し、自分とタイガー・ウッズをペアにしたことが敗北につながったと語ったのだ。

「タイガーとペアになることを知らされたのは、わずか2日前だった。当時、タイガーのボールより僕のボールはスピン量が少なかった。違うボールでプレーするとなれば、とりわけフォーサムマッチは大変なことになる。僕はメジャーのようなビッグ大会のたったの2日前に新しいボールを試して出たなんてことは、それまで一度もなかったからね」

実際、ミケルソン&ウッズ組は金曜午前のフォーボールのトップスタートで出てコリン・モンゴメリー&パドレイグ・ハリントン組に2&1で敗れ、午後のフォーサムではダレン・クラーク&リー・ウエストウッド組に1アップとされて、またしても敗北。

翌日からはミケルソン&ウッズのペアは解消され、ウッズはクリス・ライリーと、ミケルソンはデビッド・トムズとペアを組んだが、この大会は欧州18.5、米国9.5で米国の大敗となった。

「あの大会こそは、キャプテンによってチームが敗北へ導かれてしまった典型例だった」
そんなミケルソンの言葉が物議を醸したことは言うまでもない。騒動になったことを知り、ミケルソンは慌ててサットンに謝罪した。

「ハルを批判するつもりなんて全然無かったんだ。僕はただキャプテンの役割や采配がどれほど大きいかを伝えたい一心で言っただけだったんだけど、、、、」

当事者たちは、自分たちの国や大陸の名誉と勝利を願うあまり、必死ゆえに「ついつい」の言動を取っては騒動を引き起こす。

米国でも欧州でもない第3者の立場から距離を置いて眺めれば、両者の言動や騒動は子供のケンカのようにさえ感じられてしまうのだが、広く温かい心で受け止めながら、どちらにも声援を送ろうではないか。

それが、ライダーカップ――そう思えば、高みの見物であっても、どんどん興味が沸いてくる。

米国時間の29日午後には開会式が華やかに行なわれ、明日の初日午前のフォーサム5マッチのペアリングが両キャプテンから早々に発表された。キックオフ戦となる初日の第1組は、米国チームがジョーダン・スピース&パトリック・リードの若手トップスター組。対する欧州チームはジャスティン・ローズ&ヘンリック・ステンソンのリオ五輪金銀メダル組。

どちらも出だしから全力投球の構えだ。そんな両チームの力の入れようを感じ取れば、眺めるほうも「ついつい」力が入ってくる。

文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)