午前と午後で流れが一変。負ければ負けるほど熱くなるのがライダーカップ(舩越園子の2016ライダーカップレポート)

「僕たちは、今まで以上に勝利に飢えているライダーカッパーなんだ」

 ライダーカップ初日。先陣を切って戦うジョーダン・スピースが口にしたこのフレーズが米国チームの心情を如実に物語っていた。

 前回大会では大敗し、ここ3大会は3連敗。ここ10大会でわずか2勝しか挙げていない米国チームにとって、今大会の勝利は悲願だ。

 1番ティには今月25日にこの世を去ったアーノルド・パーマーの名前が入ったゴルフバッグが置かれている。このヘーゼルティンナショナルで1991年の全米オープンを制した故ペイン・スチュワートの魂も、きっと母国の勝利を天国で祈っていることだろう。

 だからこそ、今回こそは絶対に勝ってみせる。そんな激しい戦意が米国チームに溢れ、その戦意が午前のフォーサムマッチの全勝につながったのだと思う。

「4対0」と圧勝し、勢いづいた米国チーム。その勢いのまま、午後のフォーボールマッチも突っ走りたいところだった。だが、勢いや必死の想いだけでは勝てない。それがゴルフであり、ライダーカップだ。

 「必死」と言えば、米国チームは前回大会で大敗を喫してから今大会を迎えるまでの2年間、「タスクフォース」を結成して必死の準備と努力を重ねてきたが、それさえも「逆効果になる」と指摘したのは欧州チームのリー・ウエストウッドだ。

「アメリカはシリアスになりすぎだ。タスクフォースなんてものまで作って挑んでいることは、逆に彼ら自身にセルフプレッシャーを与えることになる。もう、逃げ場も行き場もない。そんな瀬戸際の苦しみを彼らは自身にもたらしている」

 それは、近年のライダーカップでずっと優勢に立ってきた欧州チームのメンバーだからこそ言える余裕のセリフだったが、午前の4マッチで全敗を喫してからの欧州チームからは余裕の色は消えていた。

 午後のマッチの第1組としてティオフしようとしていたジャスティン・ローズとヘンリック・ステンソンが、普段とは異なる不敵な笑みをたたえていたことが気になった。

 すると、午後の4マッチは彼らの笑みがすべてを物語っていたかのように、欧州が3勝と圧勝し、米国はわずか1勝。午前にできた4ポイントの差は、あっという間に2ポイント差へ縮まった。

 午前は米国が圧勝。午後は欧州が圧勝。なぜ、これほど流れが一変したのか。
午前のフォーサムでは「3&2」でジョーダン・スピース&パトリック・リード組に敗れたが、午後のフォーボールでは「5&4」で圧勝したローズは「午前中はグリーンに苦しんだけど、午後はグリーンが読めてパットが入った」と温厚な人柄ゆえに当たり障りのない返答をした。

 けれど、ステンソンは鋭い視線を向け、ストレートに、こう言った。

「午前中の僕らの負け方はひどすぎた。午前の全敗が僕らを燃え上がらせ、午後は絶対に巻き返してやろうと必死になった」

 米国はホーム、欧州はアウェイ。観衆の声援は当然ながら米国贔屓だが、欧州のダニー・ウイレットに対する激しい野次や妨害の雑音は少々度が過ぎていた。開幕前、ゴルフライターをしているウイレットの兄が米国ギャラリーを侮辱する内容の記事を書いたことがその原因。「覚悟はしていた」とはいえ、構えようとするたびに浴びせられる野次や雑音の嵐はひどすぎた。

 いやいや、ウイレットのみならず、午前も午後も、パットを外せば拍手、池に落とせば拍手喝采や万歳を浴びせられた欧州チームの選手たち、とりわけローリー。・マキロイは「それが何よりのモチベーションになった」と言い切った。

 大観衆を敵に回し、午前のマッチで全敗したこと。それが欧州チームを「勝利に飢えたライダーカッパー」に変えたのだろう。

 どちらのチームにとっても、最大のモチベーションになるものは敗北の悔しさだ。負けるたびに奮起し、負ければ負けるほど、一層勝利に飢えて燃え上がる。まるで、ゾンビか、ターミネーターの様相だ。

 過去に敗北を重ねてきた米国チームだからこそ、出だしから燃え上がり、初日の午前を「4−0」と圧勝した。そして、午前に全敗を喫した欧州チームだからこそ、午後は燃え上がり、「1−3」と巻き返した。

「米国5−欧州3」で迎える明日以降、どちらのチームも、勝てば勝つほど相手を燃え上がらせ、勝利に貪欲にさせていく。相手を負かせば負かすほど、その敗北を糧に相手が強くなって巻き返してくる。

 そんな緊迫した状況だからこそ、何ポイントの差もまったく安心はできない。米国チームは初日とほぼ同じペアリングで2日目に挑むが、初出場の選手を6人も擁する欧州チームは、初日に1度も出番が無かった2人の新人、マット・フィッツパトリックとクリス・ウッドを明日はデビューさせる。

 だが、ひとたび戦いが始まった今、初出場者の人数が多いか少ないか、ホームかアウェイか、何が有利で何が不利かを問うことに、もはや大きな意味はないだろう。

 勝てば勝ったで、いやいや負ければ負けるほど、どちらも熱くなっていく。ヘーゼルティンナショナルは明日もそんな両者の戦いで燃え上がるはずだ。

文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)