ドのつくサッカー素人がお送りする「ゆるふわ」なコラム、4回目はもちろん昨夜というか今朝の、日本勝利についてです。日本のサッカーが新次元に進化したあの勝利。サッカーにとどまらず、日本人の活躍を世界の色々な人たちが手放しで賞賛してくれるのが、そうめったにあることではないだけに、なんだかもう嬉しくて仕方がありません。(gooニュース 加藤祐子)

○眠くなんかない

いかに嬉しかったか、いかに眠くなんかないやいだったか、ことさらに書く必要もありますまい。私個人の事情を申し上げれば、前日にイングランドが何とか次に進めてヤレヤレと安堵したと思いきや、24日夜には「えええアズーリがああああ」とイタリア敗退に呆然。つまり仮眠をとる間もなく25日未明の試合観戦になだれこんだわけです。おなじみTwitterとBBCの実況ブログを眺めながらの観戦でした。

英語メディアに岡田監督の「ベスト4」発言を失笑されてから約1年。「日本はアジアの外でW杯本大会に勝ったことがない。おやまあ」と呆れられ、「岡田監督は『ベスト4まで行ける』などと言うが、私としては日本語の漢字を使って丁寧に『まあねえ』と答えたい」などと皮肉を浴びせられていたのが、14日のカメルーン戦の直前。それから比べると、情勢は全く嘘のように変わっています。フランスとイタリアがすでに敗退しているという、これまでのサッカー世界地図からは考えられない状態で始まったデンマーク戦。それだけに、Twitter上でも色々な国の人の見る目はおなじみの「日本? どうせ負けるよ」ではなく、「日本? もしかするんじゃない?」でした。そしてサッカー素人の私でも(直前までイタリアの敗戦ぶりを観ていただけに)、「この日本ならあの試合前半のイタリアに勝てる」と思ったほど、岡田ジャパンは開始直後から動きが良かった。

前半17分で本田圭佑がフリーキックを決めるや、BBCの実況ブログは「クリスティアーノ・ロナウド、どうだ見たか! 素晴らしい!」「日本はスロースタートだったかもしれないが、完全にこの試合の主導権を握っているし、一次リーグ突破に向けても完全に主導権を握ってる。ちなみに日本、本田圭佑が得点した5試合は全て勝ってる」と早くも日本勝利を予想。大会前はまるで考えられなかったことです。開始30分に、また本田で来ると予想していたデンマークの裏をかいて、遠藤保仁がフリーキックを決めると、「(本田のとは違い)今度はもっと伝統的なストライクだ。右足からカーブして壁を回ってコーナーに入った。シンプルだ」と。

続く日本の猛攻には「日本が敵陣に入るたび、何かやらかしそうに見える。デンマークはぼろぼろだ。デンマークにとって何かが、しかもすぐに変わらないとダメだが、この様子では日本はベスト16に向かって邁進している」と。

そしてハーフタイム前にこのBBC実況ブログに寄せられた(日本人ではない)Twitterユーザからのツイートは、「日本は、新しいブラジルだ!」と。すごい……。

さらに後半が始まると「ジブラルタルのバーにいる」という匿名読者が「日本は、アルゼンチンを除くどのチームより上手に見えるじゃないか! ワールドカップで何ていう目立ち方だ。このチームの大勢を、来年の欧州で観ることになるんだろう」と、日本選手が次々と欧州のクラブチームに移籍するだろうと予測しています。

○なんて嬉しい、誇らしい

そして後半42分。BBC実況担当のサム・シェリンガム記者は「デンマーク・ファンの皆さんには警告しておいた通りだ。この試合を動かしているのは、MF本田圭佑だ。本田はデンマークのペナルティ・エリアまで踊るように入りこんでから、利己的なところはまるでなく、交代出場の岡崎慎司にボールを譲った」と。本田は「ゲームメーカー」で、かつ「unselfish(利己的でない、自己中心的でない)」だと。思うのですがこれって、イギリス人がサッカー選手に(さらにはチーム・プレイヤー全般に、あるいは社会で生きる人間全てに)与えうる最大級の賛辞のひとつなのではないかと思います。

シェリンガム記者は試合終了と共に「見事だ、日本は実に見事だった。ステキな戦いぶりの勢いに乗って、第二ラウンドへ進む。パラグアイは、この調子の日本を迎えるのはイヤだと思ってるはずだ」と締め。さらに試合後の戦評記事で、「どこからともなくいきなり現れた日本は、自信たっぷりに堂々と戦った。岡田武史率いるチームは過去6試合中5試合を落とし、ワールドカップでの12試合で9得点しかしていないのに」と、驚きをこめて日本代表を評価しています。

本田のフリーキックは「クリスティアーノ・ロナウドを彷彿とさせるスタイルで」と形容し、続く遠藤のフリーキックには「exquisite(絶妙な、卓越した、魅惑的な、洗練された、美しい)」という素晴らしい形容詞がつきました。さらに、「日本のストライクは正確かつ精緻で、なにかと評判の悪いジャブラニ・ボールの扱いに苦しんできたほかの選手たちはまるで立場がない」とまで(Jリーグの公式球なので日本代表は慣れているんだと、後述の英ガーディアン紙は指摘。やはり後述の英サン紙は「日本はジャブラニが大好きだ」とまで)。

BBCラジオのキャスターも、「日本代表は経験豊かなチームだ。チームとしてたくさんの試合を共にしているし、自分たちが何をすべきか分かってる。タフな対戦相手だ」と。うわー。これって本当に、日本代表に与えられている評価なのか、自分のどこかをつねりたくなります。大会開始前まではこんな賞賛、考えられなかったです。

日本人が(これまでそんなに得意と思われていなかった分野で)世界注視の前でこれだけ活躍し、特に親日派でもない世界各地の人からこれだけ高く評価される。なんて嬉しい、誇らしいことでしょうか。

特に親日派でもない英大衆紙「サン」のこちらの記事でも、「鮮やかなフリーキックがまるで出ていなかった今大会だが、日出ずる国の連中がものすごい2本を決めてくれたおかげで、一気に明るくなった」と。「連中」と訳した言葉は「lads」。「lad」は直訳すれば「少年」とか「坊や」。南アフリカチームの愛称「bafanabafana」の「bafana」と一緒ですね。ぴたりとくる訳語が見つからないのですが、「あいつら」とか「奴ら」とか「連中」とか「あの子たち」とか、つまり親しみを込めた呼び方です。イギリス人は、イングランド代表でもビートルズでも、「the boys」とか「those lads」とか呼ぶのが好きなのです。

もうひとつイギリス・メディアから(なぜかというと私がデンマーク語がわからないからです)。やはり試合をサイト上で実況していたガーディアン紙は試合後の戦評で、サン紙と同様、「いかにもありがちだ。このワールドカップで凄まじいフリーキックが出るのを延々待たされたかと思うと、ほとんど同時に2本も決まるんだから」と、「フリーキック欠乏⇒お腹いっぱい」の喜びを、「Typical(ありがちだ)」というこれまたイギリス人お得意のシレッとした物言いで表しています。

英語うんちくに話がずれますが、英語では「it never rains but it pours (雨が降るときは決まって土砂降り)」「it's either feast or famine(大ごちそうか飢えるかどちらかしかない)」という慣用句がよく皮肉な感じで使われますし、特にイギリスでは「バスは来ない。来るとしたら3台一度にやってくる」という「経験則」のようなものもあります。なので「いいフリーキックがまったく出ないと思ったら、立て続けに2本も出たよ」とイギリス・メディアが口々に言うのは、こういうメンタリティーも背景にあるのかもしれません。


さて、次はパラグアイです! ですが私的にはその前に、イングランド対ドイツ! サッカー的にも歴史的にも因縁がありすぎるカードなので、私がドキドキしても仕方がないのですが、ドキドキドキドキ……。

ところで、いつまでも「サッカーわかりません、何それおいしい?」とか言い続けるのも情けないので、サッカーの見方の解説本とかサッカー論の本とかを少しずつ読んでいます。そのなかでも、フィナンシャル・タイムズのサイモン・クーパー記者の「サッカーの敵」をいま読んでいまして、これは面白い! サッカーにまつわる人たちの思い、そして世界の歴史や政治や経済や因縁がどうサッカーに絡まって「世界で最も愛されているスポーツ」を形作っているのかが、丁寧に描かれてます。おすすめです(近著の「『ジャパン』はなぜ負けるのか─経済学が解明するサッカーの不条理」も入手済み。はやく読みたい!)。

(余談です。いまちょうどCNNを観ていたら、アメリカではアルジェリア戦のゴールの瞬間、大騒ぎだったようです。そしてそのゴールの瞬間のファン大騒ぎの様子が、次々とYouTubeに投稿されているとか。アメリカ人がワールドカップでこんなに大騒ぎするとは。これからアメリカはどんどん強くなりますね、確実に。どうしようその内にアメリカでさえ、「football」がサッカーを意味する言葉になったら)