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世界最大の広告・コミュニケーションの祭典、「カンヌ・クリエイティビティ・フェスティバル」。「Cannes Lions 2016」では2016年の受賞作の中から、新たなアクションを考える刺激になるような、ソーシャルグッドな広告を連載で紹介していきます。今回ご紹介するのは、中国からの事例です。

位置情報を使ったゲームがブレイクしたことで「ながらスマホ」の危険性に注目が高まっていますね。ながらスマホで特に危ないのが車の運転中。よそ見をしたり注意力が散漫になったりすることで、自分はもちろん、他人も巻き込む事故を招くおそれがあります。

日本よりもスマートフォンが普及する中国でも、ながらスマホによる事故が大きな社会問題になっており、車の運転中にメッセージのやりとりをすることで起きる死亡事故が後を絶ちません。その頻度は、8分ごとに中国国内で発生していると言われるほど。あまりにも日常的なことになっているので、その危険性を認識していない人が多いことがその原因でした。

何気なくしていることが、いかに重大な結果を招くか。ただ注意を促すだけでは伝わらないメッセージを届けるために、交通安全に取り組む団体「GLOBAL ROAD SAFETY PERTNERSHIP」は、現実を突きつけるあるイベントを実施しました。

まず、運転中のメッセージのやり取りで事故を起こし、亡くなってしまった350人が実際に使っていたスマートフォンを回収。事故を起こした瞬間まで交わしていたメッセージを、壊れたスマートフォンの画面に表示されているような形にし、交通安全の日に「SMS LAST WORDS(最後のショートメッセージ)」というイベントを開き、一挙に展示したのです。
 
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ひとつひとつのスマートフォンには亡くなった人の名前と日付、そして死因が書かれたタグがぶら下げられ、墓石に見立てた黒い壁に掲げられました。
 
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「もうすぐだよ!家に帰る途中! 」
「わかった、ゆっくり運転しなさいよ」

「心配しないで。すぐに家に帰るよ」
「オッケー、待ってるね」

壊れた画面に映るそんな何気ないやりとりからは、このあとの一瞬で失われた命と、ささやかな幸せを想像させられ、胸が詰まります。

この展示会プロジェクトのメッセージは新聞やラジオによる報道、ブログやSNSで広まり、4,000万人以上のドライバーたちに「今後、運転中にメッセージのやりとりをしない」と約束させることに成功し、第一四半期においてSMSが原因の交通事故は48%も減少する結果に。
 

頭ではわかっていても、なかなかやめられない。そんな習慣をストップさせるために機能したのが、想像し、共感する力、つまり心に働きかけることでした。

社会的なメッセージを伝えようとするとき、ともすると説明的になってしまいがちですが、伝えるためにこそ、もっと感じさせることが大切なのかもしれませんね。

(翻訳アシスタント: 松沢美月)