歌舞伎俳優の中村勘九郎(34)が主演する映画「真田十勇士」(堤幸彦監督)が22日、公開された。2014年に上演された同名舞台の映画化で、今月9日からは東京・新国立劇場で舞台が再演されている。主演映画と舞台の同時公開という画期的な試みに挑んでいる勘九郎は、映画の撮影を「死と隣り合わせの現場でした」と振り返り、上演中の舞台との違いなども聞いた。

 「真田十勇士」の舞台上演後に行ったインタビュー。毎回欠かさず受けている約30分のマッサージでは、4、5分に一度、苦痛に顔をゆがめた。休憩も含めると3時間半にわたって舞台を縦横無尽に走り回り、激しい殺陣の連続。上演中に体の一部がしびれることもあるという。まさに満身創痍(そうい)で演じているが、昨年12月から2か月半にわたった映画の撮影も、負けず劣らずハードな現場だったという。

 「映画は演出でかなりCGを使っているんですけど、俳優のアクションに関しては一切CGはなし。立ち回りもスタントなしで、全部自分たちでやっているんです。さらに映画では、大坂冬の陣の(出城の)真田丸を実際に建てて撮影していて、夏の陣では広大な敷地で爆破ありのロケ。それに(撮影場所の)和歌山は雪が降るほど寒くて。舞台とは違った臨場感というか、まさに死と隣り合わせの現場。本当に大変でした」

 14年に上映された舞台の映画化。名将として知られる真田幸村(加藤雅也)が実は平凡な人物で、勘九郎演じる猿飛佐助ら十勇士が幸村を本物の英雄にするため画策するという突拍子もない設定だ。

 「最初にマキノノゾミさんの脚本を読んだ時は、こうくるか、と驚きました。幸村が永遠のヒーローというのは揺るがない、変えられないと思っていたけど、そこから変えてきた。その時代に生きているわけではないので、本物の幸村は知らない。だからロマンは広がりますよね。佐助のキャラクターは軽妙というか、本能で生きてるので考えすぎず、神経質にならないように気を付けました」

 映画版と舞台版、物語の基本設定は同じだが、それぞれに違った魅力も実感しているという。

 「映画の良さはカット割りの工夫だったり、映像の寄り引きがあるところ。舞台ではアップで見たい顔もアップでは見られないですから。でも、舞台は全体を見られる良さがあって、生ならではの空気感も楽しめる。両方やって、心から映画にしてよかった、舞台にしてよかったと思える作品。ともに見応えはあると思います」

 8月には歌舞伎座で笑福亭鶴瓶の落語を題材にした新作「廓噺(さとのうわさ)山名屋浦里」に挑戦。上演中に今作の舞台稽古を行うなど、本人も「いっぱいいっぱい」の忙しさ。それでも、今後の映画出演にも積極的だ。

 「ワンカットずつ、スタッフもキャストも最高の絵をつくるために一生懸命。職人が集まっている現場って、映画でも舞台でも居心地がいいんです。舞台との違いはやはり瞬発力。『用意、スタート』の声に合わせてテンションを持って行って、一瞬を作る作業は魅力的。ただ、歌舞伎役者が映画に出られたりするのは縁と運。早くスケジュールが決まってしまうので、早くお話を頂いて、その月が空いていないと出られない。縁と運がピッタリ重なった時は、これからもどんどんやらせていただきたい」

 長男・七緒八君(5)、次男・哲之君(3)もすでに試写を見たという。

 「喜んでました。(最初の)アニメーションから急に実写の名乗りに変わる場面では、次男が『格好いい〜』と叫んでました(笑い)。子供にも分かってもらえる作品なんじゃないかな」

 その2人の子供は、来年2月に初舞台を控えている。

 「子供のためにも、父親自身がひとかどの役者というか、輝いてないといけないな、とは思いますね。子は親の背中を見て育つので。これからもいい仕事をしてやらなければいけないな、と思っています」

 ◆中村 勘九郎(なかむら・かんくろう)本名・波野雅行。1981年10月31日、東京都生まれ。34歳。18代目中村勘三郎の長男。86年1月、歌舞伎座「盛綱陣屋」小三郎役で初御目見得。87年1月、「門出二人桃太郎」桃太郎役で2代目勘太郎を名乗り初舞台。12年2月、新橋演舞場の「春興鏡獅子」小姓弥生後に獅子の精などで6代目勘九郎襲名。09年10月に女優の前田愛と結婚。11年2月に長男・七緒八君、13年5月に次男・哲之君が誕生。

 ◆映画「真田十勇士」 関ケ原の戦い(1600年)から14年。和歌山の九度山に追放されていた真田幸村は村を襲った盗賊・猿飛佐助と出会う。「天下に並ぶ物なし」と尊敬を集めていた幸村だが、実は男前な容貌と幸運の連続で名将にされただけの腰抜け男だった。佐助は驚きながらも「では本物の天下一に仕立て上げようじゃないか!」と同じ“抜け忍”の霧隠才蔵(松坂桃李)ら10人の男を集め、真田十勇士を誕生させる。出演はほかに大島優子ら。