父は人間国宝だった5代目中村富十郎さん(11年死去、享年81)。中村鷹之資は、七回忌追善狂言「越後獅子」で大きな成長ぶりを印象づけている。

 軽快な踊りの中に旅芸人の哀愁をのぞかせるこの演目は父の当たり役。「連日、緊張感との闘いです。歌舞伎座で一人で踊らせていただけるワクワクした喜びも感じます。この1か月間に学ぶことがいっぱいあります」

 鷹之資が誕生したのは、富十郎さんが69歳の時。父が逝ったのは11歳、小5の時だった。「まわりの方々から、いまも父の話を聞くので、まだ亡くなった感覚は薄くて。でも父を失って、僕の役者人生は始まりました」といい、「でもいなくなったからこそ、理解できて分かることもある。これも運命なのかな、と捉えています」温厚、にこやかに話す中に、秘めた決意が伝わってくる。

 花道から登場する鷹之資を、観客は割れんばかりの拍手で迎える。在りし日の富十郎さんと、ダブらせ、涙ぐみながら見入っている人もいた。「父は新しい歌舞伎座に立つことがかないませんでした。もし今も元気なら、聞きたいことは多い。でもどんな時も“心の持ちよう”と。一番大事なことを教えてくれたのかな、と思います」。「初代、鷹之資」いまこの名がゆっくり、確実に大きくなろうとしている。(内野 小百美)

 ◆中村 鷹之資(なかむら・たかのすけ)本名・渡邊大。1999年4月11日、東京都生まれ。17歳。5代目中村富十郎の長男。2001年初舞台。05年「鞍馬山誉鷹(ほまれのわかたか)」の牛若丸で初代鷹之資を披露。座右の銘は「一生懸命」。03年8月生まれの妹(愛子さん)がいる。映画「家族はつらいよ」にも出演。屋号は天王寺屋。