◆大相撲 初場所6日目 ○日馬富士(寄り倒し)玉鷲●(13日・両国国技館)

 西横綱・日馬富士が気迫の相撲で新関脇・玉鷲の挑戦を退けた。5日目の隠岐の海戦で右太もも裏を負傷したが強行出場。土俵際で1回転しても右下手を離さない執念で4勝目を挙げた。全勝を守った東横綱・白鵬は横綱出場回数が818回となり歴代1位の北の湖と並んだ。今場所自己最高位の西前頭2枚目・荒鷲は東横綱・鶴竜を破り初金星。6日目を終えて全勝は白鵬と東大関・稀勢の里の2人だけとなった。

 横綱・日馬富士の使命感だ。右手でつかんだまわしに、命を懸けた。玉鷲の突き落としを受け土俵際で前方宙返りのように1回転しながらも、勝利への命綱は離さなかった。右太ももには何重にも巻かれたテーピング。だが土俵上で痛むしぐさは見せなかった。「土俵に上がったら、言い訳するのはおかしい。命を懸けて一番取るだけ」。言葉通りの相撲で白星をつかみ取った。

 前日の結びの一番で豪快な下手投げを決めた際、右太もも裏を痛めた。「肉離れかもしれない」。緊急事態の可能性を苦笑いで隠したが、場所後は治療院に直行。一夜明けたこの日午前、都内の病院で診断を受けた。診断内容は明らかにしなかったが「痛み止めをもらった。出ます」。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)も「診断の報告は聞いている。出る」。師弟そろって出陣を宣言した。

 横綱だから、苦しいときも耐えられる。同部屋の大関・照ノ富士が十両に昇進を決めた13年名古屋場所後。祝福のためまだ若い照ノ富士らを食事に誘った。「おまえの目標はどこだ」と聞くと、照ノ富士は「横綱です!」ときっぱり。自信あふれるその目を見たとき「すごいな。俺は大関しか見てなかった。運が良くて横綱になれた」とこぼした。体重137キロと力士としては細い体で横綱に上り詰められたのは膨大な稽古量。苦しい中でつかんだ憧れの地位で中途半端な姿は見せられない。「痛々しいテーピングをして取るのはお客さんには申し訳ない。一日一番、一生懸命取ることだけ」と使命を全うするつもりだ。

 歴代8位タイ31個の金星を配給するが、勝負どころの強さは健在。八角理事長(元横綱・北勝海)は「気迫のある相撲だった。これだけの相撲を見せるのだからね」と称賛した。帰りの車に乗り込む際、関係者に取組以外のことを聞かれると「まだ場所が終わってない。今は勝負をしている最中だから」と一蹴。残り9日間、手負いの横綱が意地を見せられるか。(秦 雄太郎)