札幌市厚別区青葉町の元高校教諭新西(しんざい)良子さん(84)は、源氏物語を原文で読む読書会を18年半にわたって続けている。千年以上前に書かれた源氏物語は、平安時代の宮廷の人間模様をつづった壮大な長編小説で、54巻まである。会では月2回のペースで読み進め、残るは最終巻「夢浮橋(ゆめのうきはし)」のみ。会員たちは10月6日の完読を目標に、原文に挑んでいる。

 「日、暮らしたまひし。これは、『一日中お暮らしになりました』です」。新西さん宅で講義を受ける女性たちの表情は真剣そのもの。うなずきながらテキストに訳を書き込む姿は、女学生のようだ。

 源氏物語は、平安中期の11世紀初頭に紫式部が10年余りを費やして完成させた。光源氏を中心に、華麗な恋愛遍歴や因果応報による苦悩など、人間の心理を描いている。北海商科大で日本文学が専門の保坂智講師(42)は「800首近い和歌も登場するため、理解には幅広い知識が必要」と話す。

 読書会は1998年3月に発足した。空知管内の妹背牛、深川西、美唄東の各校で国語を教えてきた新西さんが退職後、「源氏物語を原文で読みたい」と友人に話したことがきっかけだった。

 新西さんが小学3年の時に太平洋戦争が開戦。戦時色の強い味気ない授業が増える中、穏やかで美しい言葉でつづられた源氏物語が心に残っていた。「私も読みたい」という大正、昭和生まれの友人ら女性8人が集まり読書会は始まった。現在は、当初からの会員4人を含む60〜80代の女性17人が通っている。

 戦時中に軍需工場に動員されていた会員の80代女性は「戦争の記憶が忘れられない私にとって、平和で優雅な源氏物語の世界に触れることは夢を見ているよう」と振り返る。「恋愛の場面になると、つんと切なくなる」「原文を読めたことが一番の宝」―。日常生活を離れ、物語に浸る時間は会員の生きがいになっている。

 残る読書会は9月22日と10月6日で、午後1時から2時間。1回500円で先着5人まで参加可能だ。

 源氏物語を読破した後は平安時代後期の歴史物語「大鏡」を読む予定。新西さんは「読書会は生活の一部。これからも続けたい」と話している。問い合わせは新西さん(電)895・3845へ。(田口谷優子)