今年2月に発売され、往年のRPGファンに高い評価を得た『いけにえと雪のセツナ』。BGMがほぼピアノのみで構成されていることが話題にもなり、それを受けて2016年10月4日に文京区はトッパンホールで待望のピアノコンサート“Winter's End 〜『いけにえと雪のセツナ』ピアノリサイタル〜”が実現した。

MCを『いけにえと雪のセツナ』でセツナ役を担当した加隈亜衣さんが務め、オーストラリアから来日したジェム・ハーディング氏(エミネンス交響楽団、エミネンス・アーティスツ所属)がピアノ演奏を担当。コンサートの合間には作曲の三好智己氏、サウンドディレクターの由良浩明氏、ディレクターの橋本厚志氏、海外版・PC版ディレクターの熊谷宇祐氏、シナリオライターの稲葉洋敬氏が登壇し、開発時のエピソード等が語られたこの日のコンサートの模様をレポートしよう。


◆コンサートホールに響き渡るジェム・ハーディングの美しいピアノ演奏

開演予定時間をほんの少し過ぎた頃、盛大な拍手に迎えられてジェム・ハーディングがステージに登場し、コンサートのオープニング曲「Eternal winter」の演奏が始まった。ゲームBGMの「Winter journey's tale」をアレンジした曲で、『いけにえと雪のセツナ』のメインテーマとも言える重要なこの曲が、ホール内のファンを『セツナ』の世界へと一瞬で誘った。

1曲目の演奏が終わるとMCを担当する加隈亜衣さんが登場。「クラシック形式のコンサートの司会は初めてでとても緊張しています」という話に始まり、ピアノ演奏を担当するジェム・ハーディングのプロフィール等が紹介された。

加隈さんのトークが終わるとコンサートは2曲目へと続き、ここではストーリー序盤の曲が披露された。ワールドマップの曲「Song in the wind」のキラキラとしたメロディがホール内に響き渡り、それを体で感じる瞬間は至福の時間という感じだ。落ち着いたメロディをじっくりと楽しめる村の曲「Old hearth」の優雅さを堪能した後、この日最初のゲストタイムへと突入した。

最初に登壇したのは三好氏と由良氏。『いけにえと雪のセツナ』の楽曲制作について聞かれ、由良氏は「お話を頂いた時から(BGMは)ピアノで貫き通すと決まっていました」と振り返り、三好氏は「最初は20曲くらいと言われていたのが、追加曲が50曲くらい来まして…」と語ると場内は驚きと笑いに包まれた。

楽曲制作のエピソードが語られた後、再びコンサートパートへ。ここではキャラクター達との出会いの音楽をメインに演奏された。自警団たちの村のテーマ「Like a boss!」では低音の目立つハードな演奏を、キールのテーマ「Little dancing light」ではキールの少年的なイメージに合う跳ねるようなリズムと無邪気さを感じるメロディが印象的だった。

続いてのゲストはシナリオライターの稲葉洋敬氏が登壇。「シナリオは苦しいとか辛いといったものをなるべく出さないでほしいというオーダーがあったので、これはもうセツナに賭けるしかないなと思い、セツナの人物像を徹底的に掘り下げるところから始めました」とシナリオ執筆の初期エピソードが語られた。また「セツナの旅をドキュメンタリー風に書いていったのでラストが決まってなく、セツナが最後まで辿り付けるかどうかドキドキしながら書いていました」という意外なエピソードにはファンからも驚きの声が上がった。

そしてコンサートは前半ラストの曲、ニレイの森のBGM「Waves of hope」のアレンジ曲「The warmth of Hope」へ。切なさと神秘さが入り混じった独特のメロディを響かせた。


◆セツナの冒険は後半に入り、いよいよ架橋へ様々なシーンを彩る楽曲が思い出のシーンを蘇らせる

15分の休憩を挟んでコンサートもいよいよ後半戦、北方辺境エリアのBGM「Distant islands」のアレンジ「Whisper to the heart」で再開。高音で展開されるメロディが印象的な明るい曲が、再び「セツナ」へとトリップさせてくれた。

ゲストは再び三好氏と由良氏が登場。コンサートを聴いた感想を問われ、三好氏は「ジェムとは仲良くさせてもらっているんですけど、素晴らしいピアニストなので光栄です」と語った。由良氏は「三好君が1人で1つのタイトルを担当するのは「セツナ」が初めてだったんですけど、最終的にこうしてお披露目ができて良かったと思います」と、無事この日を迎えられたことへの気持ちを語っていた。

ストーリーも終盤へと向かっていく中、次のコンサートパートは孤独な寂しさを感じさせるジュリオンのテーマ「Of noble blood」でスタート。続いて王家の谷BGM「The ancient bloodline」と城塞都市ウカテイナの街BGM「Safe haven」の3曲が立て続けに演奏された。

「王家の谷までの冒険が終わり、コンサートもいよいよ架橋に入ってきました」と加隈亜衣さんの説明を挟み、ゲストのコーナーへ。ここではディレクターの橋本厚志氏、海外版ディレクターの熊谷宇祐氏の2人が登壇した。

橋本氏は「想像していた以上に色々な方に愛されているなと感じました」と語り、熊谷氏は「(海外でも)思っていた以上に嬉しい反応が多く、日本人にしか作れないRPGという感じで受け止められているなと思います」と、国内、海外それぞれリリース後の手応えについて語られた。また橋本氏は「ピアノだけの楽曲制作を打診しても断られるだろうと思ったんですが、引き受けて頂いた上に高いクォリティで仕上げて頂いて、ありがたかったです。良い曲なので曲を聴くとゲームのシーンを思い出してもらえると思うのでアレンジCDをぜひ買ってください(笑)」と、最後にはしっかりこの日発売になったアレンジアルバムの紹介も。

続いてコンサートはいよいよ終盤へと突入。切ないメロディが展開するフィデスのテーマ曲「Dark anomaly」に始まり、絶海群島のBGM「Frozen highland」から過去のモル島BGMの「Stories of old」と、まさに終盤のストーリー展開とリンクするかのように楽曲が進行。セツナと続けてきた旅も終わりが近いことを感じさせるのが寂しい。

最後のゲストは三好氏と稲葉氏が登壇。この日リリースとなった『いけにえと雪のセツナ』のアレンジアルバム『Winter's End - 『いけにえと雪のセツナ』 Original Soundtrack Collection』について聞かれ、「サントラの曲から27曲を選び、1分くらいの長さだった原曲を3分以上にアレンジし、ファンの方にも演奏をして頂きたいというのがコンセプトでした。なのでアルバムにはデータで楽譜も収録しているんです」とアレンジアルバムへ込められた思いが三好氏から語られた。稲葉氏は「たくさん曲が上がってくる中で、すごく雪をわかってる人だなってのを思いましたね」と、北海道出身者として雪へのこだわりを語っていた。ちなみにこの日楽屋裏で2人で話した際にお互いに雪やクリスマスシーズンが好きだということがわかって盛り上がったそうだ。

最後のゲストトークが終わるといよいよコンサートは最後の曲へ。ステージにはゲストトークをした三好氏が残り、そこにバイオリンを持った由良氏が登場。なんと最後の曲の演奏は三好氏のピアノと由良氏のバイオリンによるアンサンブルで「Staff roll」のアレンジ「The Journey's End」が披露された。ジェムとはまた違った雰囲気でピアノ演奏を聴かせてくれる三好氏と、そこに情緒さや温かみを加える由良氏の素晴らしいバイオリン演奏が重なり、この日のコンサートのエンディングを見事に飾った。

そういえば幸運にもアレンジアルバムのレコーディングに立ち合わせてもらった僕だが、その時に「三好さんもコンサートでピアノを弾いてみては?」と軽く話しをしてみたことがあった。しかし「僕は作曲家であって演奏家ではないのでピアノ演奏についてはあまり自信がないんです」と、返事は遠慮がちだった。でもこの日、三好氏は堂々としたピアノ演奏を披露してくれたことに素直に感動してしまった。

最後の演奏が終わり、この日の演奏者と登壇者がステージに揃って再登場して、ファンに向けて一礼。1人づつステージから去ってゆく中、それでも鳴り止まない拍手が場内を支配し続け、それに応えるように三好氏が一人でステージに再登場。アンコール演奏として三好氏一人による「Eternal winter」が演奏され、再び「セツナ」を象徴するメロディがホールに響き渡った。

雪に象徴されるゲームの持つ独特な雰囲気を、ピアノコンサートという形で見事に再現してくれた。この日集まった「セツナ」ファンの方それぞれがしてきたセツナとの旅の思い出を振り返ることができたのではないだろうか。

【SET LIST】
[SET LIST]
01.Eternal winter
02.Town by the sea
03.Song in the wind
04.Old hearth
05.Redemption and forgiveness
06.Like a boss!
07.The forest of light
08.Little dancing light
09.The warmth of Hope
10.Whisper to the heart
11.Of noble blood
12.The ancient bloodline
13.Safe haven
14.Dark anomaly
15.Frozen highland
16.Stories of old
17.The Journey's End

-encore-
01.Eternal winter

●『Winter's End - 『いけにえと雪のセツナ』 Original Soundtrack Collection』
■Creative Intelligence Arts
■発売日:2016年10月5日(水)
■価格:2500円(税別)
■CD2枚+DVD1枚
(C)2016 Tokyo RPG Factory Co., Ltd.All rights Reserved.
http://www.wintersend-album.com/

《風のイオナ(シティコネクション) 撮影:中村ユタカ》