9月中旬に幕張メッセで開催された国内最大級のゲームイベント「東京ゲームショウ 2016」。インサイドはその会期中、現代の「ゲーム音楽」「リズムゲーム」、そして「クラブミュージック」に名を残す三人に、「ゲーム」と「クラブミュージック」の密接な関わりについて熱い対談を行ってもらいました。

今回対談に参加していただいたのは、ゲーム界の歴史に残る人気リズムゲームの楽曲を手掛けた前田尚紀氏、有名ホラーゲームやスポーツゲームの楽曲を手掛け、世界を股に掛けた音楽活動で知られる山岡晃氏、そして日本最大級のダンスミュージック・フェスティバル「ULTRA JAPAN 2016」をはじめ、世界の大型フェスに出演し、名立たる有名DJと共演を果たしたDJ/プロデューサーのKSUKEの3名。本記事では、そんな彼らの間で交わされた最新のクラブミュージックと「音ゲー」「ゲーム音楽」を巡る濃厚なトークの様子をお伝えします。

■「シンセサイザー世代」と「ソフトウェア世代」のジェネレーションギャップ

――皆さんはこれまでゲーム音楽を含めてどんな音楽に影響を受けてきたのでしょうか?



山岡晃氏(以下、山岡): 僕は前田尚紀と同じ世代で、若い頃にニューウェーブに凄く影響を受けましたね。いわゆるシンセサイザーが使われている音楽が大好きでした。

KSUKE: 僕は音楽を自分から聴こうと思ったきっかけがダンスゲームだったんです。当時はそれがダンスミュージックだとか電子音だとかシンセサイザーの音とかって認識は無かったんですけど、ゲームの登場曲を気に入って常に聴いていたので、そこから強い影響を受けていますね。高校に入ってからはバンドでベースを弾いて、大学に入ってからDJを始め、今はトラックメイクをやるようになりましたが、今クラブミュージックをやっているのは100%音楽ゲームの影響だと思います。

前田尚紀氏(以下、前田): 僕は思春期にニューロマンティックブームにハマってしまった理由ですね。デュラン・デュランのニック・ローズにインスパイアされてJUPITER-8の廉価版的なシンセ「JX-8P」を買って、彼らのモノマネをしたいと思ったのが、ポピュラー音楽に入るきっかけでした。音楽で飯を食っていきたいと思っていたので元々ゲームには興味なかったんですが、とあるきっかけでこの業界に入りまして。最初の頃は正直言って肌に合わなかったんですよ。でも数年後にダンスゲームの音楽を制作することになり、そこから色々とストーリーが始まったという感じですね。

――KSUKEさんは先ほどの山岡さんと前田さんのアナログシンセサイザーとの出会いの話を聞いて、世代的にピンときましたか?



KSUKE: 今の楽曲制作はほぼ100%ソフトシンセなので、アナログシンセの音は分かるんですけど、それに影響されるって感覚は正直分からなかったです。凄く新鮮に感じます。

――いわゆるアナログ等のシンセサイザーからではなく、ソフトウェアから音楽を作り始めた世代というのは、前田さん、山岡さんのお二人にとってどう映りますか?

山岡: 凄く斬新ですね。「アナログシンセのほうが良い」とかじゃなく、ソフトウェアから影響を受けるっていうのは新しい感覚で。自分でも想像したんですけど、僕らが音を作る発想とはまた違う何かがあるんだろうなと思って逆に羨ましいです。

前田: ソフトウェア上でシステマティックに制御できることによって、音楽の表現が多彩になったと言うか、音楽を作る感性にプラスしてソフトウェアを操るスキルっていうものが要求される気がするんですよね。最近の音楽を作るスタイルって。

KSUKE: 僕も最初は無料のソフトウェアに始まって、「Sylenth1」等の安いソフトから買って作っていった感じなので、ハードはミニコントローラーくらいしか触ったことがないんです。PC1台で完結できる環境から始めたので、トラック制作などの専門雑誌を読んでハードウェアを見ても「これ何に使うんだろう……」っていうのが正直な感想なんです。



前田: 逆に僕らの世代っていうのは、ハードウェアを机の上にブワーッと並べるのがステータスに感じてたところがあったんですよ。アーティストとしての世界観を構築するにおいては非常に重要な環境だったと、僕は感じています(笑)。

山岡: ソフトじゃなくハードウェアだから……まぁ絶対ないと思うんだけど、「空気を伝わって電気が入ってきてってなると音質が違うんじゃない?」みたいな神格化した変な感覚を勝手に感じてたりしましたね(笑)。


■ゲーム音楽とダンスミュージックの意外な共通点

――昨今ではゲームミュージックとダンスミュージックがジャンル的にも接近しつつありますが、そのきっかけはいったいどのような点にあるとお考えですか。

山岡: ダブステップをゲームのバトルシーンに使ったりしますし、両者の雰囲気が比較的近いところにあると思うので、ゲーム音楽をやっている上ではたまに感じることはありますね。全員がそうじゃないとは思うんですけど……。

KSUKE: 僕がそれを感じたのはやはり音ゲーです。音ゲーってゲーム画面で楽曲のジャンルが出るんですけど、そこで「ダブステップ」って入っているのを見たときですよね。そのときに初めて「ゲーム音楽がクラブミュージックに近づいているな」と思いました。



前田: ダンスミュージックとゲームを一つの言葉で要約すると、「デジタル」だと思うんです。そのデジタルっていう部分が融合しやすい上に親和性があると思っていて。例えばゲームでの判定はプログラミングで制御していて、音楽もシステマティックに作られている。そういうところに親和性があるように思えるんです。だからバンドサウンドっていうのはゲーム音楽においては苦手なジャンル。打ち込みではない音楽はゲームにしづらいし、コンピューターで制御していくのが凄く難しいなと。

――確かに「デジタル」という共通点は親和性がありますね。そしてKSUKEさんの話に出た音楽ゲームなどは、逆にゲーム音楽からダンスミュージックに影響を与えてきたようにも感じられます。

KSUKE: 今DJやプロデューサーとして活躍してる人達は、ちょうど僕と同じ世代が多いので、ほとんどが音ゲーや、他のゲームをやってる人達なんですよね。もしくはアニメに影響されているかのどちらか。音楽制作ってひきこもってないとできないので、「インプットの根源はゲームから」ということが多いと思います。僕も日本人として、世界に向けてダンスミュージックを作っているんですけど、世界の最前線でやっている人たちは意外と日本の文化から影響を受けているように感じるので、僕も自信を持ってやりたいなと。



山岡: 個人的な話なんですが、フライング・ロータス(米国のヒップホップ系DJ/プロデューサー)と友達なんですよ。僕は有名ホラーゲームの音楽を作っていたんですが、彼もゲームが好きで、「山岡さんが作った音源をサンプリングしてていいですか?」って頼んできたりとかね。で、先ほどKSUKEさんが言っていたように、ゲームを遊んだ人が音楽を作るようになり、僕のように音楽が好きでゲームに入っていって、またそれが戻ってくるってケースもあって、ぐるぐる回ってるなと。自分としては嬉しいし、さらに違う音楽を取り入れたいなと感じますね。

前田: 僕は今、いろいろなミュージシャン等へのオファーをしていくオーガナイザーという役割をしているんですが、その中でKSUKEさんみたいな感覚を持たれた方が非常に多いなって感じてるんです。昔だったらまず背景を説明をしてなんとか参加してもらっていたんですが、今は逆に「あの作品に影響を受けました!」とか「音ゲーやってました!」とか「アニメが好きです!」って言われますからね。あと、そういう方たちってだいたい音楽ゲームやアニメに影響されたりするので、同人界隈の話もされるんです。で、「一度コミケ行ってみてください!」って言われたので、実際に行ったんですよ。そうしたら自分という存在が良くも悪くも神聖化されているという、想定外な世界があって(笑)。そこで思ったのは、これって“クールジャパン”だなということ。まさにこれが今の日本のエンターテイメント文化の原点、コアなところ、そういう要素がキテるのかなと感じました。

──音楽ゲームに触れてきた世代が、様々なシーンで若い世代に影響を与えてると実感できる場が、やはりあるんですね。ちなみにKSUKEさんのようにゲーム音楽と出会って育ち、その流れで世界で活躍している方がいるということについてはどう思われますか?

山岡: 「ゲーム音楽からでいいんですか?」って感じですよね(笑)。申し訳ないと思いつつも嬉しいです。僕らも海外と同じ土俵でゲーム作りをやってきていますし、そうした中でKSUKEさんのような存在が出てくるというのは、自信がつくし嬉しい話ですよね。



前田:例えばJ-POPというのは日本語の壁があって、世界に羽ばたけないという点があったと思うんですよ。でもゲームを介して海外の方に音楽が届くことで、すごく支持されていることがわかるんです。でも、それってなんかおかしいんじゃない?って疑問も持ちつつあって。とは言え、時間が経ってKSUKEさんのようなニュージェネレーションの方々が出てきて、世界で活躍されてるのを見て、うらやましいなと思いますね。僕らがやれてなかったことをニュージェネレーションの方々がやっていくのかな、っていうね。

──日本の音楽ゲームの曲やダンスミュージックは、世界にも影響を与えていますからね。

山岡: そんなに影響を与えていたのかなってことを逆に今実感していますね(笑)。クラブシーンだけじゃなくて、映画とかアニメとか海外作品等に影響を与えていたんだなっていう実感をしていますね。

前田: 別に人に影響を与えたいってことでやっていたわけではないんですが、影響を与えていたんだってことでやってきたことを再確認する、みたいなのはありますよね。

山岡: そう!「えー!」っていうね。

前田: いちクリエイターとして表現したいことに対して必死だったっていうか。あと、僕が好きだったマドンナとかの洋楽アーティストのPVに僕が参加したダンスゲームが登場していたことがあって。僕、洋楽オタクだったんで、見た途端に子供みたいに嬉しくなっちゃったんですよ。でも当時は、その瞬間を次に活かして何かをしようってところまでは繋げていけなかったんです。そういったところを、ニュージェネレーションの方がなんらかの形で進めていけるのではって気はしますね。



KSUKE: 僕は影響を受けまくっているので(笑)。逆に僕は世界でやりたいっていう意識のもとで動いてる部分があるからそれが仇になっているかもしれないんですが、僕が憧れた人たちがやれなかったことを、僕の世代がやれたらいいなとは思っていますね。で、世界的に有名になったときに「日本のゲーム音楽に影響を受けたんだよ」って言えたらカッコイイかなと。


■人の感情をコントロールする部分ではゲーム音楽もダンスミュージックも同じ

──ゲーム音楽とダンスミュージックの共通点はどのような部分にあると思いますか?または、両者の親和性はどこにあると思いますか?

山岡: ゲーム音楽はプレイヤーにゲームをどう楽しんでもらうか、ホラーであってもコメディーであっても「プレイヤーの感情をどう動かすか」という役割があると思います。ダンスミュージックは、人間が原始から持っている「リズムに乗って楽しむ」という部分を揺さぶる、みたいな。人の感情をコントロールする部分では同じなのかなって思いますね。それをできる人とできない人ってやっぱりいて、KSUKEさんみたいなクリエイターはそれができる人だから、ゲーム音楽にある感覚値みたいなものがクラブシーン等でも反映されているのかなって気がしますね。



KSUKE: 確かにDJは「その場の空気を読んでオーディエンスを楽しませる」というのが重要で、プラスアルファで自分の曲もプレイして、よりオリジナリティを出して盛り上げるっていうのが仕事なんですけど、ゲーム音楽を作っているクリエイターの方からそのような話を伺えるのはとても面白いです。

前田: 人間には心臓の鼓動があって、ビートのように一定のリズムが流れてますよね。ダンスミュージックで刻まれる一定のリズムと、体が元々持っている一定のリズムがシンクロして、ゲームの中でどのようにアドレナリンを感じさせるか、ということが大事なんです。その高揚感を高めるためにトラックを作っていくと、必然的にBPMが上がっていくんです。僕らが作り始めたころは130〜140、最高難易度でも180くらい。これが時間の流れとともに、どんどん高速化していったんですよ。今のスタンダードは150〜160くらい。体にある鼓動が120くらいなんでダンスミュージックのBPMとは繋がらないんですが、「時代が急いでいる」からそうなってるんじゃないかなと思ってます(笑)。

KSUKE: 音楽ゲーム主体のイベントであれば、BPM300〜400とかの曲を流してもいいと思うんですが、逆にハウスのイベントでそれをやってしまったらダメなんですよ。もちろんお互いが影響を受けている部分はあると思うんですけど、ダンスミュージックで言えばBPMっていう考え方ではなく、音楽が心地良いかどうか、楽しくお酒が飲めるかっていうエンターテイメントにつながるようなところも重要なポイントですね。。

──海外のフェス等で有名DJがゲーム音楽をプレイし、「日本のゲーム音楽が元ネタを知られないまま海外に届く」ような現象も起きています。そこから元ネタを探って日本産ゲームに辿り着くこともあるかと思いますが、そのように拡大化する「ゲーム音楽」の影響を感じたことはありますか。



前田:リズムゲームで「音楽がゲームのコアになった」とき、音楽の力ってすごいなって思いました。音楽がどんどん前面に出てゲームを食っていって、気付けばゲーム音楽がスピンオフし始めるんです。例えば、サントラCDを出しましょう、ということになったりとか。そのときにリズムゲームに参加頂いていた方たちがなんらかの音楽的な活動を始めたりして、ゲームの中に入っている音楽が認められるっていう可能性を感じましたね。その可能性を最大にすることが課題でしたが未だに成せてないって部分はありますね。

山岡: 音楽として影響を受けるっていうのは、何かしらの体験が重なりますよね。映画で聴いたとかどこかに行った時に聴いたとか。ゲームもひとつの体験であり、その中で音楽を聴くことで、いろんな新しい音楽も好きになっていくと。ゲームっていう体験を通しての音楽の価値っていうのは、音楽ゲームの良さだなと思いましたね。

KSUKE: 確かにリズムゲームのサントラって「ただ聴いている」っていう感覚ではないですね。友達と一緒に遊んだりスコアを競ったりしたわけですし、何よりも、音楽ゲームって普通のゲームと違って何回も同じ曲をプレイするじゃないですか。それが体に刷り込まれて蓄積されている、という体験は大きいポイントですね。それに僕らって、音楽ゲームのサントラを「ゲームの音楽」としてではなく「音楽」として聴いていたので、いつも次のサントラが楽しみだったんですよ。

前田: 音楽ゲームのいいところは、「プレイしてクリアする」必要があるという点ですよね。だから、音楽アーティストが精魂込めて作った曲を何回も聴いてくれる。で、勘のいい方だったらクリエイターの意志や意図を感じ取ってくれることもあるんです。これは作り手冥利に尽きる部分だなと。

KSUKE: 音楽ゲームってフルコンボなどを達成して「いかに曲の一覧を光らせるか」っていう目標があると思うんですよ。自分の好きじゃないタイプの曲でも何回もプレイするし、好きな曲だったらフリープレイで開いてまずプレイしたり。あと、譜面が良いとか自分と相性が良い曲だったりとかも繰り返しやっていましたね。中高生の青春時代を共に過ごしたのが音楽ゲームなので、今でも当時の曲を聴くと懐かしいってなりますね。「ゲーム音楽」の枠に収まらない、「青春音楽」になっていますね。


■ダンスミュージックを中心としたゲーム音楽シーンの未来とは?

──今後ダンスミュージックを中心としたゲーム音楽シーンは、どう動いていくと思いますか?



山岡: 僕らがやってきたゲーム音楽とは別の形、例えばKSUKE氏のようにゲーム音楽やダンスミュージックを解釈した人が、この後ゲームに入ってきてゲームの音作りに関わってもらってきて、次の新しいダンスミュージックやビデオゲームの音楽を作っていってくれるといいなと思います。

KSUKE: 僕に子供ができたら、その子は僕の音楽を聴くことになると思うんですけど、その子たちの世代も新しい映画や舞台、そのとき流行ってるものに影響を受けると思うので、そんな時代が来た頃に自分が何をしていくのか、それが楽しみです。

前田: 世界が滅びない限り進化していくし、昔に比べてこの先はもっともっと情報が氾濫していくと思うんです。広義になってしまうんですけど、ゲームだけじゃ足りないなって思います。当然僕は「ゲームのプロ」として皆さんを楽しませることが大前提としてあるんですけど、音楽も映像もその他の色々なエンタメの世界にも言えることで、フュージョンしていかないとダメだなって思っています。次世代のアーティストが音楽というセグメントで、どういう風にこの先のデジタルエンタテインメントを司取っていくのかなっていうのを見てみたいですね。その中の答えの一つとして、ダンスミュージックがあるんだと思います。

──進化していった未来のダンスミュージック、そしてゲーム音楽を想像すると楽しみしかないですね。本日はありがとうございました!