MAGES.を代表する『科学アドベンチャーシリーズ』の『STEINS;GATE』の最新作『STEINS;GATE 0』が昨年末にリリースになり、約8ヶ月のインターバルを置いて遂に全曲収録のサントラがリリースされた。

『STEINS;GATE』の楽曲「GATE OF STEINER」のアレンジを始め、初代作の楽曲が新曲のメロディに絡んでくる仕掛け等、シリーズファンにとっては特には深みのあるサントラに仕上がっている。楽曲に仕掛けられた謎を少しでも解明すべく、作曲を担当した阿保剛のスペシャルインタビューをお届けしよう。


◆前作のメインテーマ「GATE OF STEINER」につなげることが『STEINS;GATE 0』の音楽のテーマだった


──サントラ発売おめでとうございます! 今回はゲーム発売から結構時間が経ってからのリリースになりましたね。

阿保:そうですね。ゲーム発売直後の2015年末のコミケで、CD1枚組の全曲収録ではないサントラ『STEINS;GATE 0 O.S.T 「GATE OF STEINER」』を出していたのと、今年3月には『The Sound of STEINS;GATE 魂』のリリースがあったので、間を置いてやっと今回全曲収録のコンプリートサントラがリリースになりました。僕としてはすぐにでも出したかったんですが(笑)

──まさに念願のリリースといった感じですね。2009年に1作目の『STEINS;GATE』がリリースされて、間にスピンオフやアニメ等様々な展開がありましたが、今回の『STEINS;GATE 0』は正当な続編ということで、楽曲制作をする際に最初に取り組んだことって覚えていますか?

阿保:一番最初は物語を読み込むところから始めました。原作は3部作の小説なんですけど、それを順番に読んでいきまして。もちろん元々読んではいましたが改めて読みながらメモをしていったという感じですね。

──どんなことをメモしていくんですか?

阿保:このシーンにはこんな感じの曲が合うな、っていうメモです。読みながらメモったシーンに近いシーンがあればそこでも同じ曲を使うとか、ここではコミカル系の曲を使おうとか、そういったことを読みながらメモっていき、曲リストを作っていきました。

──え、楽曲リストって阿保さん自ら作るんですか!? プロデューサーやディレクター側で必要な楽曲リストが降りてきてそれに沿って楽曲を作っていってるのだと思っていました。

阿保:他のゲームではそういったやり方が普通なんですが「科学アドベンチャーシリーズ」では僕が曲リストを作るという、特殊な作り方で進めているんです。

──では原作を読んでる時にはすでに頭の中でサウンドのイメージやメロディが鳴り始めてるんですね。

阿保:とは言ってもシリーズ作なので、過去作とサウンドのイメージは大きく変えられないですからね。なので『STEINS;GATE 0』の楽曲は過去作の延長上だったり派生的な感じで作っていっています。とは言え、意識したのはあくまで初代『STEINS;GATE』のみです。なのでアニメやゲームのスピンオフ『比翼恋理のだーりん』『変移空間のオクテット』『線形拘束のフェノグラム』の楽曲はないものとして、初代と新作のみの関係を考えて作っていますね。あと『STEINS;GATE 0』では初代に出てきたメロディをアレンジして入れようって思っていたので、新曲との2本柱というのも考えていました。

──どんな手法でアレンジ曲を入れていってるのでしょうか?

阿保:テーマ曲の「GATE OF STEINER」のメロディは何曲かでアレンジして使っていますが、他にも日常の曲をわからない程度にアレンジして入れたり、ベースラインだけ同じとか、新曲を作った上で旧作の曲のメロディを一部混ぜたりとか……。とにかく自分にしかわからないレベルのアレンジが色々入っています(笑)。プレイした方はほとんど気付いてない部分だと思うので、後々言うとおもしろいかなと思っていたんですよ。

──まさにこのインタビューの機会に隠しネタを披露してもらえれば(笑)。ちなみに全体的な楽曲制作のテーマってありましたか?

阿保:『STEINS;GATE 0』は『STEINS;GATE』よりも前のストーリーになるので、いかに『STEINS;GATE』のテーマ曲である「GATE OF STEINER」につなげるかっていうテーマに対して試行錯誤がありましたね。

──「Re-awake」がまさに2作をつなぐ役割を果たしていますね。『STEINS;GATE』の「GATE OF STEINER」と『STEINS;GATE 0』の「Messenger」のメロディがつながっていくところなんか特に。

阿保:「Re-awake」はまさにそうですね。この曲以外にも「Messenger from zero」の途中から「GATE OF STEINER」のメロディが出てきたりしますし、「Messenger -main theme-」も最後に「GATE OF STEINER」が流れて終わります。4回くらい調を変えて色々な調の「GATE OF STEINER」が流れて終わるという。今回はいかに「GATE OF STEINER」につなげるかっていうのがテーマだったので。

──ということはもしかして他にも隠し味的な楽曲が?

阿保:もちろん他にもあります(笑)「Her community」は前作の曲「Human community」のフレーズが途中から入ってきます。実は最初からそのフレーズが入ってはいるんですけどほとんど聴こえないようになっているんです。1ループ目は音色が特殊でベルの音がキンキン鳴っていてメロディがよくわからない状態なんです。でも2ループ目からベルの音色が別の音色に変わることで「Human community」のメロディだってわかるという。曲名自体に関連性を持たせているのでそこに気付いた方はいたかもしれませんが、メロディに気付いた方はあまりいなかったかもしれませんね。

──そういう仕掛けの話を聴くと改めてサントラを聴く楽しさが広がりますね。

阿保:あと、「First leap」っていう緊迫したシーンの曲では4小節だけベースラインが前作の「Crossroads」って曲になっていたりとか。でもこの曲は結構わかりやすくて、それまで通常の音量でシンセベースが鳴っていたのに、この4小説だけガッと前に出てきて刺々しいベース音に変わってるんです(笑)。なので気付いた方もいるかもしれませんね。


◆偶然ハマったことで完成した、前作と新作のメインテーマのメロディが入っている「Re-awake」

──楽曲リストは全て阿保さんで作って進めらたってはなしがありましたが、逆に開発チームからの要望は何かありましたか?

阿保:Vita版の追加曲は開発側から依頼がありましたね。他はモーツァルトの曲をアレンジしてほしいっていうことくらいでした。クラシック曲って完成されているのでアレンジするのが難しいんです。でも色々な人が聴いた事のある曲なので馴染みやすいのと、失敗しにくいっていうのはありますね。あと、ピアノソロ曲なのでクラシック曲に関しては『STEINS;GATE』の要素は考えずに独立した曲ということで仕上げています。

──メインテーマの「Messenger」について聞きたいのですが、この曲は『STEINS;GATE 0』の中で一番重要な曲になっていますね。

阿保:そうですね。やっぱりメインテーマということで作っては寝かせて直し、また寝かせて直して……を繰り返して完成させました。後々重要な曲になっていくことはわかっていましたし、このメインテーマを絡めた曲も必要になってくるので、どうしても先に作らないといけなかったんですよね。なのでかなり初期の頃に作っています。順番で言うと3曲目くらいに完成しました。

──「Re-awake」のような曲を作るには最初にメインテーマを完成させておかないといけないですもんね。

阿保:「Messenger」は「GATE OF STEINER」に繋げるってことも考えていたので、調を合わせてはいたんですが、「Re-awake」でこの2曲を合体させられたのは実は偶然だったんですよ。特に考えないで「Re-awake」を作っていた時に、試しに仮で副旋律に「GATE OF STEINER」を入れてみようって入れてみたらピッタリはまったんです。それで「これで行こう!」ってなりまして(笑)

──メインテーマ同士が偶然つながるって凄いですよね。事前段階でつなげるっていう意識が伏線にあったからかもしれないですね。ちなみに他の楽曲ではどういった曲が気に入っていますか?

阿保:基本的には全曲気に入っています。個人的に環境曲が好みなので、そういった曲は特にお気に入りですね。具体的には「Amadeus」「Logical theme」「Future of spirit」「Reading steiner」「Tactics in confusion」等です。

──環境曲が好きっていう理由は何かきっかけがあるんですか?

阿保:やっぱりゲームや映画等のサウンドトラックが好きでよく聴いていましたから、その影響ですよね。そういう曲を自分も作りたいってところから始まっているので。


◆X68000音源でアレンジされたボーナストラック曲は阿保氏の人生を感じさせる1曲!

──今回サントラがハイレゾ配信盤とCD版がリリースされましたが、まずはハイレゾ版について聞かせてください。

阿保:今回は開発中からハイレゾ音源を前提に作っていたので、ハイレゾ版のサントラはスムーズに用意できました。ちなみに生音をあまり使ってなく、シンセサイザーのサウンドがメインなので、ハイレゾ版ではかなり上の周波数まで出てるので、ゲームのプレイ中にで聴いていた時とはかなり印象が違うと思いますよ。個人的にはゲームにハイレゾ音源を入れたいくらいなんですが、さすがにそれはデータ容量が大きすぎるので不可能なんですが(笑)

──そのあたりが将来実現できたら楽しみですね。そしてCD版にはボーナストラックで「Messenger -main theme- OPM arrange」が収録されています。

阿保:これはX68000を想定した音源で作ったバージョンなんです。ゲームが完成した時に個人で記念に作ったバージョンで、このサントラCDでしか聴けない曲です。僕がX68好きってこともあるんですが、もしX68で『STEINS;GATE』が出たらこんな感じのサウンドになるだろうなっていうテーマで作ったバージョンです。

──僕も当時からのX68ユーザーなのでこういうボーナストラックは嬉しいです!

阿保:本当はソースコード付きで載せたかったくらいなんです(笑)。PC版でリリースした8bit版『STEINS;GATE 変移空間のオクテット』の時は全部MMLで書いてるので、その時はソースコードも付けたんですよ。

──8bit版『STEINS;GATE 変移空間のオクテット』を作ったことが今回のX68版の仮想BGMというアイデアに繋がったんですね(笑)

阿保:もちろんそれもありますね。8bit版8bit版『STEINS;GATE 変移空間のオクテット』のBGMを作ってた時は、本当に目を輝かせながら作っていたと思います(笑)。あと個人的にX68が大好きで、当時グラフィックもプログラムも音楽も全部1人でやってX68のゲームを完成させて、それをパソコンメーカーに持ち込んで雇ってもらったくらいなんです。なので、ボーナストラックの曲は自分が1人でゲームを作っていた頃のスタンスで作った感じですね。できるなら全曲X68版を作りたいくらいです(笑)

──ボーナストラック曲は阿保さんの人生を感じる1曲になっていますね。では遂にリリースになった『STEINS;GATE 0』の全曲が収録されたサントラ、ずっと待ってた方に最後に一言おねがいします!

阿保:『STEINS;GATE 0』から入った方がいると思いますが、そういう方にはぜひ2作続けて遊んでもらいたいですね。サントラも純粋に曲の雰囲気を楽しんでもらいながら、その上でどういう想いで曲を作ったのかを意識して聴いてもらいたいです。それで曲に込めたイメージや想いが伝わったら凄く嬉しいですね。

──このインタビューを読んでもらえたらサントラも興味深く聴いてもらえそうですよね! 今日はありがとうございました!

『STEINS;GATE 0 SOUND TRACKS -完全版-』
■5pb. Records
■発売日:2016年8月24日(水)
■価格:3500円(税別)
■CD2枚
http://5pb.jp/records/sg0/

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