エレクトロバンのイメージ

エレクトロバンのイメージ


「エレクトロバン」という名前だった

半世紀前の1966年、水素燃料電池を動力源とする試験車両「Electrovan(エレクトロバン)」が登場した。世界初の試みだったという。開発したのは米国のGeneral Motors(GM)だ。

この年、ソ連の無人探査機「ルナ9号」が初の月面軟着陸に成功。英国の人気ロックバンド「ビートルズ」が来日し、トヨタ自動車はのちの人気モデルとなる「カローラ」を発売した。

米国では「バットマン」と「スタートレック」のテレビシリーズ放映が始まるなか、より目立たない話題として、GMが燃料電池車を開発していた。

発端は、ジョン・F・ケネディ大統領が米国航空宇宙局(NASA)に指示した、人類による月面到達計画。その過程で燃料電池技術が生まれ、民間へ転用する試みも進んでいた。

GMは総勢約200人で3交代制のチームを組み、1966年1月に着手。10月には「Progress of Power(力の進化)」を主題に記者発表会を開催し、1台のデモンストレーション車両を用意した。

エレクトロバンは水素がクルマを動かせるかどうかを探る研究だった。燃料電池の耐久性を試験セル内で数か月間にわたって実証し、走行加速と最高速度試験はシャシーダイナモメーター上で行ったという。

だがくだんの燃料電池車は以降、忘却の霧にまぎれ、2001年に再発見するまで31年間、ミシガン州ポンティアックの倉庫に格納したままになっていたという。今日ではミュージアムなどで燃料電池の展示に使っており、それ以外のときはGMの「ヘリテージセンター」に収蔵している。