2017.1.13「その音とは、樹上から発するキツツキの木霊(こだま)であった。その瞬間、少年は警告するキツツキに自己をなぞらえ、詩『啄木鳥』を編み出す。詩人啄木の誕生である」▼元国際啄木学会会長の遊座昭吾さんが6日、死去した。あらためて著書「啄木と賢治」(2004年)を読む。盛岡大教授当時、有無を言わせぬ迫力に満ちた啄木や賢治文学の講義が思い起こされる▼「いわてお宝拝見」という連載の取材で、自宅に伺った際のこと。机に広げたお宝は、賢治の「イーハトヴ童話『注文の多い料理店』」広告ちらし。刊行当時は黙殺されたが、後に評価された賢治作品の魅力を語り始めた▼止まらない。「いいものは必ず評価される時代が来るのだ。それが歴史だ。人類の英知だ。初めに言葉ありきだ。言葉は宝だ。賢治の言葉は人類の宝だ…」。尽きぬ情熱。遊座さんという個性もお宝と実感した▼その数ある啄木と賢治論で「垂直と水平」の対比は鮮やかだ。樹上の動物が下の人間に警告を投げつける啄木の「垂直の意想」。一方の賢治には、セロ弾きのゴーシュと動物の交感に見られるような、共生の原理とも言うべき「水平の意想」▼閉塞(へいそく)感が強まる現代。分断を超えて、共生をいかに見いだすか。啄木の警鐘が、遊座さんの語りが、天上からこだましている。「岩手の地から意想せよ」と。