米ワシントン州モーゼスレイク上空を飛行する小型ジェット旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)1号機。三菱航空機と三菱重工が公開した(2016年9月28日撮影)。(c)AFP/Mitsubishi Aircraft Corporation〔AFPBB News〕

「国家と共に」という理念を掲げ、日本のもの作りを支えてきた三菱重工が、同社の顔ともいえる事業で苦戦続きとなっている。

 祖業でもある造船事業において巨額損失を計上したことに加え、初の国産ジェット旅客機MRJは5度目の納入延期が検討されており、後がない状況に追い込まれた。同社の兄弟会社で、燃費改ざん問題を起こした三菱自動車は日産の傘下に入った今も、三菱重工の足を引っ張っている。客船事業の損失については、火災事故も併発していたことから、技術力の低下を懸念する声も上がる。

 しかし、同社の事業全体を見渡してみると、問題となっている事業を除けば、思いのほか好調である。皮肉なことに「国家」という看板を下ろせば、同社の経営はかなりラクになるというのが現実だ。

MRJは5度目の延期でもう後がない

 三菱重工の子会社で航空機の製造を担当する三菱航空機は、同社が開発中のジェット旅客機MRJについて、5度目となる納入延期の検討に入った。三菱航空機はこれまで4度、納入時期を延期しており、9月にはようやく試験拠点である米国の空港への移送に成功していた。しかし、量産にあたって設計の見直しが必要なことが明らかとなり、関係者には納入延期を通知したという。

 MRJは三菱重工グループが総力をあげて開発を行っている日本初の国産ジェット旅客機である。よく知られているように、日本は太平洋戦争の敗北によって、しばらくの間、航空機分野の研究・開発が禁止されていた。その後、政府主導で国産旅客機YS-11が開発され、約180機が生産されたが、残念ながらYS-11は事業としては成立しなかった。YS-11以降、日本の航空機産業は停滞したままの状態が続いてきたのである。