フィリピンの首都マニラで演説するロドリゴ・ドゥテルテ大統領(2016年10月4日撮影)〔AFPBB News〕

 「治安の改善」を選挙公約の1つに掲げて当選したロドリゴ・ドゥテルテ氏のフィリピン大統領就任は、超法規的殺人を問題視する米欧、国連、人権団体から批判を浴びることになった。

 そうした中で、米国のバラク・オバマ大統領を名指しで愚弄し悪態をついたこともあり、首脳会談が流れ、米比関係が著しく悪化している。南シナ海などで航行の自由を掲げて米国と共同歩調をとってきた日本としても他人事では済まされない。

 ドゥテルテ氏はミンダナオ島のダバオ市長として麻薬と犯罪撲滅に尽力し、22年間在任した。そうした手腕が高く国民に評価され、国家の再生を担って6月末に大統領に就任した。

 「ドゥテルテの超法規的な犯罪取り締まり政策は、法律的に間違っているかもしれないが、人々に支持され『民主的』であり、政治的には正しい」(「田中宇の国際ニュース」2016年10月5日)

 国際社会はフィリピンの人権無視のみを強調するが、治安維持は国家の存続に関わることであり、二者択一といったように簡単ではない。特に開発途上国などでは、人権よりも治安が優先されることもしばしばである。

 国連は人権を天下の宝刀のように振りかざし、慰安婦問題や南京事件などでは日本政府の意見を聞くこともなく、反日的立場の「人権無視」という提言のみを取り上げて糾弾するが、不公平さだけが目立つ。

国家主権を問いかける大統領

 ドゥテルテ氏が市長であったときはほとんど国際問題化することもなかったが、大統領となって以降は「人権」問題が正面に押し出され、批判の対象になってきた。

 特にオバマ大統領が表立って批判してきたが、ドゥテルテ大統領は、米国が比国を占領していた時には人権無視も甚だしく、虐殺をやってきたではないかと反論する。

 欧州列強の植民地経営時代は、植民地の人権が蔑ろにされたわけで、先進国の勝手な、今日的基準ばかりでの人権批判は通用しないということでもあろう。今日でも人権軽視の常任理事国がある。

 フィリピンでは麻薬犯罪が横行し、また麻薬を資金源とした反政府系組織による暴動も起き、国を建て直そうにも、生ぬるい手法では上手くいかなかった。

 ドゥテルテ氏はダバオ市長時代に麻薬撲滅と真剣に向き合ったから、住民から信頼され長く市長を続けられたという自負がある。そして、その麻薬撲滅の手法も超法規的ではあるが、国内では信任されて大統領にも選ばれたのだ。

 フィリピンをかつて統治し、今日も治安等で一部関わっている米国であるならば、もっとフィリピンの実情を理解してもいいのではないかという思いもドゥテルテ大統領にはあるのであろう。